熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

企業の巨大化と中小企業

2008年11月02日 | 中小企業と経営
   パナソニックが三洋電機を買収して11兆円企業になって、日立を抜いてトップに躍り出ると言う。
   銀行も百貨店も、昔の懐かしい名前は殆ど消えてしまって、どこの業界も、メガ何とかになりカタカナやローマ字社名になってしまって、どんな会社だったか、何がなんだか分からなくなり、大きいことは良いことだと言う時代が変質し始めている。
   GMにとって良いことはアメリカにとって良いことだと当時の社長が豪語したのはほんの半世紀ほど前のこと、そのビッグスリーも余命いくばくもなく風前の灯火となってしまい、完全に、20世紀は遠き昔になりにけりである。
   ICTを席巻したデジタル革命とグローバリゼーションの破壊力は、それほど強烈だったのである。

   ところで、巨大企業は、益々巨大になる、巨大に成らなければ駆逐されてしまい巨大化を目指さざるを得ない、と言う厳粛なる運動法則は、ウイナー・テイクス・オール、すなわち、NO.1企業だけが利益を総ざらえして行くと言う弱肉強食のマーケット・メカニズムが働く限り抗しようの競争原理である。
   その競争も、ソニーやキヤノンの競争相手が、ヤマダ電機や価格コムであり、メガバンクの競争相手が、政府系ファンドなどと言ったように内田早大教授の言う異業種格闘の様相を呈して来ると益々熾烈さを極めて来る。

   私は、パナソニックが三洋電機を買収して巨大化することは悪いことだとは思わないが、家のことならトータルで「もの・サービス」を提供できると言う総花的なゼネラル・総合メーカー戦略には、疑問を感じている。
   三洋を買収して、将来大きな市場を期待できる太陽電池やリチウムイオン電池などを強化することは良いことだと思うが、経営資源が限られているのであるから、停滞気味のシロモノ家電を切るとか、ジャック・ウェルチがGEでやったように、集中と選択を行わない限り、業績の向上は有り得ないと思っている。

   インテルが頭打ちになっていることを考えても、デジタル革命とグローバリゼーションの進展により、益々、コモディティ化して行く物の生産、すなわち、製造業には、永遠に、陳腐化と価格競争の追い討ちがかかり、いくら高度で最先端の技術を開発しブラックボックスで囲い込んでも、たちどころにキャッチアップされて、創業者利潤など瞬時に吹っ飛んでしまう。
   国際製品、グローバル製品になればなるほど、ものである限り、どんな高級技術でも、熾烈なグローバル競争によりコモディティ化して行くのは必然である。
   以前に、シャープのブラックボックス化戦略や、液晶や太陽電池で技術の優位による集中戦略に疑問を呈したが、これなど瞬時の栄華であり、経営の新機軸を目指さない限り足をすくわれてしまう。
   コモディティの最たる半導体に入れ込んで巨大な設備投資をしている電機メーカーがあるが、これなど最も危うい戦略で、製造業の場合には、巨大な製造拠点、時には途轍もない21世紀型コンビナートを建設したりしているが、地球温暖化で、宇宙船地球号がもつかもたないかと言われている今日、10年先に、同じ製品がそのまま製造されていると言う保証は全くない筈である。

   書いている間に、話の方向がずれてしまったが、今回、言いたかったのは、中小企業の窮状をいかに救うかと言うことであった。
   結論から言うと、中小企業が、大企業の下請けと言う位置づけである限り、問題の解決は非常に難しいと言うことで、この下請けから脱却への道を政府が積極的に支援することである。

   根底にある問題が、製造業の場合、元請の大企業自身が、激烈な競争に晒されている為にあまりにも利益率が低く、下請けである中小企業には、殆どコスト削減要求を突きつけて締め上げる以外に道がないと言うことである。
   それに、不況になれば、情け容赦なく発注を切る。
   日本が経済復興期にあった頃や、ジャパン・アズ・NO1と言って成長期にあった頃にも、大企業と中小企業の経済の二重構造が問題となっていたが、あの頃は、多少の景気循環はあっても経済が成長していて、大企業も中小企業の面倒を見る余裕があり、少しづつ成長して豊かになっていたので問題が隠れていたが、
   今日のように、大企業がもろに経営危機に直面しているような経済環境の中では、極めて脆弱で経営資源の限られている中小企業には、大企業に抗する能力も力も限られており、不況の波を被れば一たまりもない。
   
   グローバリゼーションの時代においては、要素価格平準化原則が働いて、賃金も製品の価格も、リービッヒの樽の法則で、世界で一番価格の低い水準になってしまうので、後進国や新興国の同業者の賃金や製品価格と競争せざるを得なくなるのだが、自由貿易を旨としている以上避け得ない。
   結局、中小企業と言えども、競争相手と違った価値を生み出すなり、ニッチ市場を目指すなり、或いは、誰もやっていないようなブルーオーシャン製品やサービスを開発するなど、差別化戦略を遂行して、少しでも競争優位を獲得して付加価値を高める以外に生きる道はない。

   中小企業が、小さなイノベーション、適切な方向転換であるリノベーション、或いは、隙間・ニッチの製品やサービスを探し出したり出来るような仕組みを政府が積極的に構築してサポート出来ないであろうか。
   QBハウスが、1000円散髪屋を始めて成功しているが、これなどは、欧米で、元々、散髪は、頭をカットしていくら、髭を剃っていくら、頭を洗っていくらetc.段階的に価格を決めて客に選択させていたのを、カットだけ切り離して商売にしただけだが、立派にイノベーションだ、ブルーオーシャンの典型だと騒がれている。
   私など、40年近く前から、アメリカでQBハウス・システムで散髪しており、このようなイノベーションなり、リノベーション、ブルーオーシャンは、いくらでも探せるし、身の軽い中小企業だから、どんどん、対応できる筈である。
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