熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

フィルターバブル (filter bubble)の危険

2021年10月17日 | 政治・経済・社会
   マット・リドレーの「人類とイノベーション」を読んでいて、「通信とコンピュータのイノベーション」の項で、十分に気づいていたものの、改めて恐ろしいと思ったのは、「フィルターバブル (filter bubble)」という現象である。
   デジタル大辞泉を引用させて貰うと、
   フィルター‐バブル【filter bubble】とは、
インターネットで、利用者が好ましいと思う情報ばかりが選択的に提示されることにより、思想的に社会から孤立するさまを表す語。サーチエンジンなどの学習機能によって、利用者の望む情報が優先され、望まない情報から遠ざけられる様子を、泡の膜に包まれている状態にたとえたもの。米国の活動家イーライ=パリサーが自著で用いた造語。
   インターネットで、検索などで日々打ち込んだキーワードがフィルターのように働いて、個々の利用者向けに最適化された情報(パーソナライズされた情報)ばかりが表示されて、その個人が好まないと思われる情報や多様な情報などの自身と相容れない意見などに触れる機会が失われている状態を言うのだという。

   パルサーが、著書「フィルターバブル」の中で、例示しているのは、メキシコ湾での原油流出事件が問題になっていたときに、BPと言う言葉で検索したら、ひとりは環境に纏わるニュースで、もうひとりは投資アドバイスのニュースを取得したという。
   パーソナライズするために個人のデータや好みを取り込むことで、これだけ違った検索結果が出るのである。

   さらに、パルサーが予言したように、「パーソナライゼーションのフィルターは目に見えない自動プロパガンダ装置のようなものだ。これを放任すると、我々は自らの考えで自分を洗脳し、馴染みのあるものばかりを欲しがるようになる。暗い未知の領域にひそむ危険のことなど忘れてしまう。」
   フィルターバブルとケーブルテレビが、世界中の政治的二極化の原因であることには疑いがないとして、反対の政治的イデオロギーのメッセージを伝えるウェブポットを1ヶ月フォローする実験を行ったら、共和党員はより保守的に、民主党員は少し進歩主義に傾いたという。

   アマゾンのページを頻繁に開いて、本を検索すると、その本などの紹介に添付して、次のような項目が出て、多くの関連商品が紹介される。
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   さて、パルサーの指摘する「パーソナライゼーションのフィルターは目に見えない自動プロパガンダ装置のようなもので、我々は自らの考えで自分を洗脳し、馴染みのあるものばかりを欲しがり、暗い未知の領域にひそむ危険のことなど忘れてしまう」という危険については、非常に危惧している。
   しかし、現実には、私は、フェイスブックやツイッター、LINEなどのSNSとは縁がないので、このフィルターバブルの影響は、パソコンのインターネットくらいであり、直接的には、影響は少ないであろうと感じている。

   もう、20年近く前の話だが、東大安田講堂でのセミナーで、阪大総長が、グーグルの検索において、結構直接関係のないデータが出てくるのだが、この一見無関係だと思われる情報が新しい発想のきっかけになり役立つことがあると言っていたが、要するに無駄や遊びが必要なのであり、役に立つシステムばかりでは人生が無味乾燥となって面白くないこともある。と書いたことがある。
   グーグルの検索エンジンが、未開発であった時には、牧歌的でどこか惚けた味があって、人生が豊かになっていたが、今や、自らを洗脳する自動プロパガンダ装置と成り下がって、危険装置以外の何ものでもなくなってしまった、と言うことであろうか。
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