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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:ALWAYS続・三丁目の夕日

2007年11月26日 | 映画
   アカデミー賞を取った前編の「ALWAYS三丁目の夕日」を見ていないので後先が分からないが、あんな良き時代があったのだなあとしみじみと懐かしさと感動を噛み締めながら見ていた。
   昭和34年頃の、東京タワーの足元の三丁目の庶民の生活を舞台にした映画だが、まだ、高速道路が建設されていなかった頃の実に明るくてオープンな日本橋の風景が感動的である。
   3DCGの素晴らしさは映画の随所に展開されていて、当時の風景と錯覚するほどリアルな羽田空港や東京駅の風景、それに懐かしい走り始めたばかりの流線型の特急こだまとその車窓を流れる当時の東京の街工場の家並みなど、当時の日本を知っている私には、正に感激の連続であった。

   34年は、私がまだ高校生の頃であったが、皇太子殿下のご成婚で美智子さまにあやかって結婚ブーム、ブルーバードが発売されて自動車時代が到来、お手軽住宅のプレハブ登場、等々日本経済が成長に向かって始動し始めた時期であった。
   石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」に列を成し、ドラムのリズムに合わせて熱狂する観客の様子などがこの映画にも出てくるが、あの当時の劇場街風景の一端は、今でも少しだけ浅草ロックに残っているような気がする。

   渥美清に薫陶を受けた吉岡秀隆が、ボーっとした寅さんの面影をどこか色濃く残した浮世離れした小説家茶川竜之介を実に感動的に演じていて、それに、寄り添うようにくっ付いて離れない須賀健太の古行淳之介、それに茶川を思い続ける踊り子石崎ヒロミの小雪が何とも言えない味を出していて泣かせる。
   踊り子の身を恥じて金持ちの後家さんになろうと決心してこだまで大阪に向かうのだが、芥川賞の候補に上った茶川の作品を読んで、落選して悲嘆にくれる茶川の前に帰ってくる。茶川の小説のタイトルが「踊り子」。万感の思いを込めて愛するヒロミを思って書いた小説、「読んでしまったら何処へも行けない」と言って茶川に抱きつく小雪のいじらしい姿がたまらない。
   私が小雪を映像で見たのは、日経新聞のコマーシャルで、素晴らしい女優がいるなあと思ったのが最初で、その後映画やTVでちょくちょく見ることになり、現在は、松下のビエラのイメージが強烈であるが、あの自分を押し出さない控え目な女性らしさが、今回の映画でもそうだが、何とも言えない小雪の魅力である。

   副主人公の鈴木オートの小学生鈴木一平(小清水一揮)の一家、父則文(堤真一)と母トモエ(薬師丸ひろ子)、はとこの美香(小池彩夢)、住み込み・星野六子(堀北真希)が、正にあの頃の典型的な町工場の住人達であったのであろうか、とにかく、温かくて優しくてほのぼのとした家族的な雰囲気が何とも言えない。
   男気があり気風の良い江戸の職人風の主人を堤が好演しており、それに、薬師丸も実に素晴らしいお母さんになったもので滋味溢れた優しさと温かさが良い。戦争の悪戯で分かれた昔の恋人山本信夫(上川隆也)との偶然の日本橋上での再会が爽やかな挿話で雰囲気があって面白い。
   奇麗事だと言えばすべてそれまでだが、やはり、あの当時はこれが本当だったと思うし、今の時代のように、親が子を殺し、子が親を殺めるような殺伐とした家族関係などは殆ど考えられない時代であったと思う。

   悪い男が、芥川賞選考人だと偽って気の良い三丁目の住人達を騙して、芥川賞をとる為に賄賂を贈る必要があると言って、茶川や住人達からなけなしの金を巻き上げたり、ニセモノの万年筆をパーカーだと偽って露天で売るなど一寸した暗いシーンもあるが、全編善意と愛情に彩られた古き良き時代の物語で終始する感動的な映画である。
   私は、寅さん映画と同じで、人畜無害のこのような善意の人物が主人公の映画が好きである。

   最近は、この映画は漫画のようだが、昨夏見た「HERO」はテレビドラマで、漫画やテレビで人気の出たストーリーを映画にすることが多くなっているようだが、やはり、昔のように文学作品や戯曲が映画になることが少なくなってきたのは時代の趨勢なのであろうか。
   やはり、前奏曲が流れ、途中にインターミッションが入るような大作映画が出なくなってしまったには寂しい感じがしている。
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