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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

英「HMV」が経営破綻”デジタル革命に対応できず”

2013年01月16日 | 経営・ビジネス
   今朝のNHK BS1のワールドWaveで、世界的なレコード販売チェーンの「HMV」が、インターネットの音楽配信の隆盛に押されて、CDが売れなくなって経営が悪化し、破綻したと報じていた。
   管財人が経営を引き継いで、買収会社を見つけて、小規模化して、経営の再建を図るようだが、デジタル革命に対応できなくなったビジネスの、期せずして訪れた運命であろうか。

   私は、イギリス在住時には、良く、ピカデリーサーカスのHMVの店舗に、オペラやクラシックのCDを探すのを楽しみにして通っていて、何百枚もある音楽CDの大半は、この店で買ったものである。
   欧米ではそうだが、新しくレリースされたCDは、販促のために、確か20%くらいのディスカウント価格で売られていたし、オペラやクラシック音楽の全集物など、枚数が嵩むと、バーゲンセールの時に、一挙に買い込むと言った買い方であった。
   別に、ラベルや説明書、リブレットなどが英文であっても構わないので、日本で、同じものを買うよりはるかに安かったように思う。

   帰国してからは、あまり、音楽を聞かなくなったし、それに、映像がある方が良いので、最初は、ビデオなりレーザーディスクを買い込み、その後は、DVDに移り、今では、買うのは、総て、ブルーレイのDVDになっている。
   もっと重宝しているのは、HNKのBSでは、METのライブビューイングやスカラ座など名だたるオペラハウスでのオペラやコンサートホールでのクラシック演奏などの録画を放映してくれており、WOWWOWでも、METライブビューイングを何度も放映してくれているので、これらを、ハイビジョン方式でブルーレイに録画すれば、市販のDVDより、はるかに上等なDVDのコレクションが出来上がる。

   時々、ツタヤに出かけると、老若男女、色々な人が、映画を見るのであろうか、DVDを抱え込んで借りて行くのに出くわすが、私などは、どちらかと言えば、最新の話題の映画やドラマ放送には興味がないし、沢山の名画や話題作を放映してくれているNHK BSプライムとWOWWOWの映画放送をブルーレイ録画すれば十分なので、この人たちの気がしれないと思っている。
   NHKでも、オンディマンド・サービスをやっているし、もう少し、オンディマンド方式が普及すれば、殆ど、ツタヤなどには行く必要がなくなり、ツタヤも、先のHMVと同じ運命に遭遇するのでは、なかろうかと思っているのだが、
   しかし、結構、私のように録画して自分自身で要求を満たすなどと言うのは煩わしいと思う人も多いようで、年寄りなどは、ITディバイドで、デジタル革命においそれと乗れないらしくて、従来型の店舗も必要だと言うことであろう。
   
   映画はともかく、音楽に関しては、スティーブ・ジョブズが、iTuneとiPodシステムを確立してからは、音楽の主流が、インターネット経由の楽曲配信に変わってしまったのだから、この潮流には、逆らえる筈がない。
   BBCの放送では、
   Music & Film Salesが、
   2002年 6.5% Online
   2012年 73.4% Online
   と言うことで、今や、売り上げの70%以上がインターネット経由だと言うから、CDなど売れる筈がないのである。

   さて、映画や芝居などの映像ものについては、音楽と違って、オンディマンドの需要も増えているものの、まだ、かなり、DVDが主流のようである。
   先日、ブックレビューした「ザ・ディマンド」で、スライウォツキーは、DVDの配送レンタルで成功しているネットフリックスの創業者リード・ヘイスティングの逸話から書き出しており、その事業展開の推移について語っている。
   かっては、ビデオレンタル店に行っても、見たいビデオやDVDがなくて諦めることが多かったのだが、その客の失望とハッスルをなくして、瞬時に、顧客に、見たいものを提供することが、如何に難しい事なのか、何回も頭を打って試行錯誤を試みて、今日を築き上げたと言う。

   問題は、注文してから何日も経たないとDVDが届かない客は、あまり興味を感じないのだが、翌日配達して貰える顧客は、その便利さと効率に感激して、見終わった映画を郵便受けに入れた瞬間から次の映画が来るのが待ち遠しくなり、その上に、ネットフリックスの驚異的な速さと信頼性を友人や家族やお隣さんに自慢するのだと言う。
   ところが、インターネットとDVDと言う最先端のIT技術を使い、優秀なプログラマーが開発したソフトウェアではあったが、如何せん、配送は2世紀前に生まれたローテクの郵便制度US MAILに頼っているから、翌日配送などは、夢のまた夢であった。
   そのために、今では、配送センターの数を増やすと、新しい配送センターが開設された地域では、一気に加入率が倍増しており、やっと、大多数のアメリカ人の手元に翌日にDVDが届く体制が整ったのだと言うことである。

   この膨大な投資をして、全米に翌日配送するシステムを確立すると言うことこそが、イノベーションのイノベーションたる所以であり、大変ことではあったが、結局は、将来、オンディマンド・システムに座を明け渡さなければならないであろうと思っている。
   日本でも、同類のサービスをしている会社があるようだが、宅配会社を使って配達に何日もかかっているようでは、見込み薄であり、ツタヤなど返却のみ郵送と言うことであり、ネットフレックスの足元にも及ばないし、近い将来、急速に、ビジネス・モデルを大きく変革せざるを得なくなるのは必然であろうと思う。

   アマゾンは、自社の配送センターから直接配送するケースが多いので、非常に早く配送されて来ており、更に、お急ぎ便で注文すると殆ど翌日配送に近い。
   楽天が、出店店舗を指導して、翌日配送に向けてシステムを構築するようだが、やはり、ネット・ビジネスは、スピードの商売なのであろう。

   ところで、前述の映画や芝居などの映像ものだが、要するに、DVDを媒介にしなくても、e-book デジタル・ブックと同じで、有効なオンディマンド・システムを確立すれば、瞬時に、顧客の手元に届く。
   コレクションが趣味だと言うのなら別だが、出来るだけ、中間に介在する人やものをカットして、ダイレクト・サービスに切り替えて、別なところで利便性と付加価値を高めた方が良いことは言うまでもなかろう。

   顧客は、見たいと思う映画を、即刻、安く、簡単に見られることを求めているのであって、それを阻害しているハッスルを取り除いて、速さと利便性を顧客に届けて、顧客の満足を得る。
   そのために、どのようなビジネス・モデルを作り上げるか、それしかないのである。
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