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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

新興国の消費者は最先端技術製品に飛びつく

2013年01月03日 | 政治・経済・社会
   ”日本製デジカメやゲーム機が苦境に!?中国の「スマホ集約化」は日本以上”は、ダイアモンド電子版の山谷剛史氏の記事のタイトルである。
   この記事で、私が実感したのは、正に、新興国なり発展途上国においては、人々は、最先端の技術なり製品に一直線にキャッチアップしてしまうと言う事実である。
   これは、私などが大学時代に、経済学なり経営学を習っていた時とは、今昔の感と言うべき大変化である。

   例えば、当時の定説では、国家の経済は、既定の路線を踏襲しながら発展して行くと考えられていた。
   ロストウ(W.W.Rostow)の経済発展理論などはその典型で、
   農業生産中心の伝統社会、
   経済の成長局面・好循環局面に移る離陸のための離陸先行期、
   貯蓄率と投資率が急速に高まり、1人当りGNPは持続的な上昇を開始する離陸(テイクオフ)、
   近代的産業技術が全分野に広がり主導産業構造が第2次産業に特化する成熟期、
   耐久消費財やサ-ビスに対する需要が爆発的に増大する高度大量消費
   と言った5段階を経て、経済が発展すると説かれていて、どこの経済がテイクオフしたか、あるいは、テイクオフするためには、どのような経済政策を取るべきかなどが議論されていた。

   しかし、20世紀の後半に入って、科学技術の急速な発展とICT革命とグローバリゼーションの進展によって、一挙に、政治経済社会がフラット化して、資源や人口、キャパシティなどに恵まれた新興国は勿論のこと、いくら遅れた発展途上国であっても、成長余力と成長意欲さえあれば、世界中の資金が上陸し、最先端の科学技術や経営資源を活用して、瞬く間にテイクオフのみならず、先進経済へのキャッチアップを図れるようになってしまった。

   インドなどは、農業や工業においては、極めて低水準にありながら、経済発展の成長過程をバイパス・スキップして、一挙に、ICT大国として高度なサービス産業を開花させるに至っている。
   また、この記事の中国の消費者は、既に、パソコンやテレビ、デジカメなどには興味を失ってしまっていて、一台で殆ど総ての機能を果たす「スマホ集約化」が進んでいるので、日本の家電やデジカメが売れないのは、反日デモ以上にスマートフォンの影響が大きいと言うのであるが、先進国の消費者が歩んできた道とは全く違った消費行動を取ると言うことを示している。
   勿論、夫々の家電やデジカメなどの方が質ははるかに高いのだが、日本の消費者のように質や技術の深堀など製品のクオリティ志向と言うよりも、安さと利便性・様々な体験ができること(エクスペリエンス)のほうが大切だと言うのである。
   地元業者などが、このような消費者の動向をキャッチして、ローカルニーズに合ったハイエンドの製品を格安で製造して販促するのであるから、日本の会社が追いつける筈がないと言うことであろう。

   この動向は、正に、新興国や発展登場国の消費者が、クリステンセンの説く破壊的イノベーションに、真っ先に乗ると言うことで、過去のしがらみや慣習に影響されないだけでも、はるかに、キャッチアップが早いと言うことである。
   それは、ソニーが、トランジスター技術を駆使して、真空管技術で繁栄を謳歌していたGEなど大手電機メーカーを、一気に凌駕したように、最初は、未熟で不完全であっても、斬新で革新的な破壊的イノベーション製品やサービスは、消費者のニーズとウオントを一気にキャッチして、瞬く間に、グローバル市場のディファクト・スタンダードに躍り出る筈である。

   殆ど有効な金融システムが未発達のケニアにおいて、出稼ぎ労働者の地方送金を瞬時に実施するM-PESAと言う英国Vodafoneとケニア携帯電話大手Safaricomがタイアップして開始した送金サービスなどと言うのは、一挙に最先端技術を駆使して築きあげたBOP(経済ピラミッドの最貧層40億人)ビジネスの典型であろう。
   このような先進的な製品やサービスについては、新興国のBOPビジネスやリバース・イノベーションが無数にあり、今後、新興国から先進国への経済や経営の逆上陸傾向を、益々、進行させるのではなかろうかと思っている。

   ここで、再強調しておきたいのは、過去の遺産や柵に雁字搦めに縛られている先進国と違って、何もなくて、何の束縛も過去からの抵抗もない新興国や発展途上国ほど、経済社会の発展のためには、最先端の科学技術を駆使して、一挙に、高度化へのキャッチアップが可能だと言うことを、先進国の企業が認識しておかないと臍を噛むことになると言うことである。
   何十年も前、私がウォートン・スクールの学生であった頃には、遅れているメキシコには、使い古したアメリカの設備機械を持ち込んで、対価として資金を回収して、生産を開始すれば丁度良いと、インターナショナル・ビジネスの講義で、まことしやかに教えられていたが、このような論理は、最早、通用する筈がない。
   私は、環境問題も含めて国家存続にとって死活問題であるので、電気自動車や環境産業の将来については、中国が、最先端を走ると信じている。

   
コメント
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