熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

岩手・角館の旅(1)・・・盛岡のまち

2010年06月04日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   ある会合に参加する為に、盛岡に出かけた。
   その日の午後遅くから時間が空いたので、一泊して角館まで足を伸ばそうと思って、その日は、盛岡駅構内のメトロポロタンに宿を取った。
   これまで、出張の時には、利便を優先して駅に近いホテルに宿泊していたのだが、このホテルも二回くらい泊まって便利だったので、暇がありながらなまくらを決め込んだ。

   ところが、困ったのは、仙台や十和田・八甲田、会津磐梯など東北の旅行ガイドは結構あるのだが、岩手県単独の本はなく、東北ガイドの一角を占めているだけで、如何に、盛岡近辺と言うか岩手の観光が貧弱かが良く分かって面白い。
   幸い、一冊だけだが、昭文社から「ことりっぷ」と言う本のシリーズで「角館・盛岡」が出ていて、これを頼りに歩いた。
   ヨーロッパなら、ミシュランのグリーン本と言う立派な観光ガイドがあるのだが、日本のガイドブックは、バックマージンを貰っているのか、独善と偏見が強いのか、偏りすぎて参考程度にしかならないのだが、この本も似たり寄ったり。しかし、いずれにしろ、分からない土地では、何らかのガイドが必要なのである。
   尤も、この前に、歌舞伎座の前にある岩手県の物産店に出かけて、観光案内所で観光情報を得ようとしたのだが、特に、特別なものはなく、全県地図をくれただけで、地方のパンフレットを見よと言うことであった。

   結局、最初に行った所は、盛岡城跡公園。
   1633年完成と言うから新しい城で、観光案内では、盛岡産の巨大な石垣に、盛岡藩20万石の面影が残ると書いてあるのだが、大阪城やあっちこっちの立派な古城を見て歩いた私には、普通のこじんまりとした平山城と言う印象しかない。
   若き日の啄木や宮沢賢治がこよなく愛したと言うことだが、当時城内に植わっていた風雪に耐えてきた木々であろうか、新緑に萌えて真っ青に輝いていて実に美しく、素晴らしく静かで平和な空間を作り出していて爽快であった。
   まだ、八重桜や藤の花が少し残っていた。観光客は殆ど居ない。

   城址から中津川べりに降りて、古い盛岡が残っている河畔を散策することにした。
   対岸の橋の袂には、レンガ造りの外壁と白色花崗岩の装飾の美しい明治期の岩手銀行中ノ橋支店の建物が目を引く。
   その正面の広場で、古本のオープンマーケットが立っていて、止せば良いのにと言われたが、立派な小学館の日本古典文学全集の近松門左衛門集2巻を見つけたので買ってしまった。

   この銀行の建物を回りこんで裏道を歩いていくと、街道沿いに、「ござ九」と言う江戸後期に建てられた豪商の建物(口絵写真)がある。
   現在も雑貨商を営んでいると言うことだったが、この日は、残念ながら閉店していて中には入れなかった。
   この道を更に歩いて行くと、赤い屋根を被った角型の望楼のある紺屋町番屋が見えてくる。大正期の木造洋風建築と言うことだが、日本には珍しい青い壁面の建物で、赤い屋根が如何にもエキゾチックな雰囲気を醸し出していて面白い。
   このあたりには、他に、今、もりおか啄木・賢治青春舘となっている明治期の旧第九十銀行のロマネスク様式の建物があるようだが、古い古建築は、これだけだが、立ち寄るだけなら2~30分くらいで回れるので手ごろだが、観光資源としてはやや貧弱ということであろうか。

   その後、元々古い商人町のようだが、新装なった材木町へ向かった。
   宮沢賢治の世界が漂う古くて新しい町並みだと言う触れ込みだが、道路や店舗が綺麗に整備され、彫刻のモニュメントが歩道に置かれるなど、気持ちの良い遊歩道である。
   宮沢賢治の「注文の多い料理店」を出版した光原社が、賢治の関係展示などを含めて、シックな店舗群を経営していて、時間つぶしに丁度良い。

   夜は、郷土料理を味わいたくて、南部民族料理と言う民族と言う言葉に引かれて、「南部どぶろく家」に出かけた。
   今時、どぶろくはないだろうと思ったが、飲んでみたが、可もなく不可もなくであった。
   岩手の伝統を守ってその土地で採れた素材を土地の料理法で出すと言う触れ込みで、店に入ると、主人が、店の中央にどっかり座り込んで注文をとり、お客の相手をしている。
   馬刺くらいは覚えているが、何を食べたのか良く覚えていないが、結構美味かった。
   中央大法科を出て御手洗さんとも親しいと言う主人と世間話をしながら、ひと時を過ごした。
   ところで、先の昭文社の「ことりっぷ」本だが、郷土料理の紹介などなく、わんこそばやじゃじゃ麺、盛岡冷麺、それに、スイーツの話ばかりだが、みんな、盛岡へ行けば、わんこそばを喜んで食べると思っているのだろうか。
   このあたりの錯誤ぶりが、日本のガイドブックの限界でもある。
   

コメント
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