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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

トランプ経済、物価高騰で窮地に

2025年04月30日 | 政治・経済・社会
   ニューズウィーク日本版が、
「トランプ関税にノーベル賞学者が緊急警告「このままでは経済が沈む」 Gene Medi via Reuters Connect」と報じた。
   クルーグマンが、トランプ大統領による予測不能な関税政策──さまざまな関税の導入・一時停止や税率変更を繰り返すやり方──が、米国での景気後退を「あり得る」ものにしていると警鐘を鳴らした。 のである。
   トランプの関税政策とその実行方法がビジネス環境に深刻な不確実性をもたらしている 、「皮肉なことに、問題は関税そのものではない」「安定した関税率なら景気後退は起きない。しかし、翌日には変わるかもしれない不安定な関税率は、需要に本当に冷や水を浴びせる 」「トランプ関税の『秘伝のタレ』は、極度の不確実性にある。誰もそれがどうなるかわからない。次に何が起こるかもわからない」 。と言う。
   トランプはこれまでに、包括的、特定分野向け、報復的な関税を発表、実施、一時停止、再導入を繰り返してきた。特に、4月9日に大規模な報復関税が発動されたわずか数時間後に、その大部分を一時停止している。こうした状況が、企業投資や消費者行動、住宅建設業者などに悪影響を与えており、「景気後退があり得る」とする理由になっている。
   ただし、クルーグマンは「今回の景気後退は深刻なものにはならないだろう」としつつ、「もし消費支出が急落すれば、深刻な景気後退になる可能性もある」と警告している。

   現説を読んでいないので詳細は分からないが、関税などのころころ変わる朝令暮改のトランプの経済政策が惹起する不確実性が問題であり、消費支出が急落すれば深刻な景気後退になり得る。と言う事であろうか。

   私自身は、もっと単純な話で、今度のトランプ関税で引き起こされた急速かつ高率のインフレーションが、今後浸透してゆくと、アメリカ人の日常生活を圧迫して、政治経済社会を混乱させると思っている。
   ウォールマートの棚を見れば分かるが、その多くの商品が安価な中国製品であり、今や、棚には欠品が目立ち、価格が高騰して、消費者を困らせているという。食品や衣料、雑貨やおもちゃなどのアメリカの大衆消費財の大半は輸入品であり、高関税を課されるので、尋常な手段では対処できないであろう。
   それに、アメリカ製の自動車の部品の多くは25%関税の外国からの輸入品であるから、国産の自動車価格も高騰する。サプライチェーンを自国のみで完結できずに、外国貿易に依存しているアメリカのほかの製造業においても似たり寄ったりで、アメリカ経済そのものが、関税による悪性のコストプッシュ・インフレに見舞われつつあり、消費支出の急激なダウンが危惧され始めている。
   トランプが言うように、アメリカが世界中からぼったくられているなどと言うのは幻想で、むしろ、アメリカ経済自体が、安い外国製品に依存した、いわば、強者が弱者を利用した搾取型経済であった。その関係が、今回のトランプ騒動で人為的に外れて、構造改革とも言うべき現象で一気に輸入品が高騰するのであるから、容易に対応できるはずがない。

   これに対するアメリカ人一般大衆の強烈な半インフレ行動が拡大して、反トランプ運動を引き起こして関税政策の撤廃を迫るなど、トランプ政権は、何らかの形で、経済政策など対応を軟化せざるを得ないであろうと思っている。
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PS:スティグリッツ教授「アメリカは世界最大のタックスヘイブンになりつつある 」

2025年04月28日 | 政治・経済・社会時事評論
Project Syndicateのスティグリッツ教授の論文「アメリカは世界最大のタックスヘイブンになりつつある America is becoming the world's largest tax haven」

   資本と富裕層が自由に国境を越えられる世界では、多国籍企業と超富裕層への公平な課税を保証できるのは国際協力のみである。だからこそ、トランプ大統領はこれを拒否し、政権は暗号通貨 を積極的に受け入れている。
   トランプは、アメリカを史上最大のタックスヘイブンへと急速に変貌させている。財務省が企業所有者の実在性に関する透明性制度から撤退することを決定したこと、トランプ政権が国際租税協力に関する国連枠組み条約の創設交渉から撤退したこと、海外腐敗行為防止法の施行を拒否したことなどを挙げるだけで十分であろう。そして、暗号通貨に対する多くの規制の撤廃。と言う。

   これは、250年にわたる制度的保護を破壊しようとする、より広範な戦略の一環のように見える。トランプ政権は国際条約に違反し、利益相反を無視している。また、牽制と均衡を解体し、議会が割り当てた資金を押収した。現政権は政策を議論しているのではなく、法の支配を侵害している。として、以降において、スティグリッツ教授は、第2次トランプ政権の関税や貿易、経済政策を詳細にわたって、批判糾弾している。

   しかし、要点は、後半部分のトランプのタックスヘイブン傾斜への論点である。
   イーロン・マスク率いる政府効率化局の施策の実施方法によっては、今年の税収が10%以上減少する可能性があり、IRS(内国歳入庁)の職員約5万人を削減すれば、今後10年間で約2兆4000億ドルの税収が失われることになる。
   その狙いは明確だ。富裕層への税率引き下げだけでなく、法執行の緩和も目指す。資本と富裕層が自由に国境を越える世界では、多国籍企業と超富裕層に公平な課税を行う唯一の方法は国際協力である。
   このような状況において、所有権データの収集禁止、匿名性を困難にする暗号通貨市場の容認、そして新たな国連租税条約と国際最低税の策定プロセスの放棄は、意図的なパターンを露呈している。それは、脱税とマネーロンダリング対策を目的とした多国間枠組みの解体である。
   我々が目にしているのは、トランプ、マスク、そして彼らの億万長者たちによる、タックスヘイブンをモデルにした一種の資本主義を作ろうとする明確な試みである。これは、富と権力の極端な蓄積を脅かすあらゆる法律への全面的な攻撃である。そして、このことが最も顕著に表れているのは、彼らが暗号通貨を支持していることである。
   規制されていない暗号通貨取引所、オンラインカジノ、オンラインギャンブルプラットフォームの急増は、世界的な違法経済のさらなる拡大を助長している。トランプ政権下で、財務省は取引を秘匿するプラットフォームに対する制裁と規制を解除した。
   トランプは「戦略的仮想通貨準備金」を創設する大統領令に署名し、ホワイトハウスで初の暗号通貨 サミットを開催した。
   上院もその後まもなく、暗号通貨 プラットフォームに利用者の特定と報告を義務付ける条項を廃止した。
   物議を醸す暗号通貨 を自ら発行したトランプは、腹心のポール・アトキンスを証券取引委員会(SEC)委員長に任命した。暗号通貨 は秘密主義を貫いている。ドル、円、ユーロといった優れた通貨は既に存在している。
   また、商品やサービスを購入するための効率的な取引プラットフォームも存在している。暗号通貨 への需要は、資金を隠蔽したいという欲求から生じており、マネーロンダリングや脱税といった違法行為に関与する人々は、自分の行為が容易に追跡されることを望まないのである。

   しかし、世界は黙って見ているわけにはいかない。国際協力が機能することを我々は目の当たりにしてきた。そして、50カ国以上が多国籍企業の利益に15%の国際最低税を課していることが、その証左である。
   G20においては、昨年ブラジルのリーダーシップの下、富裕層にも公平な負担を求めるという合意が成立した。米国は国際協定から距離を置いているが、逆説的に、その外交力の欠如は、より野心的な成果を生み出すための多国間交渉を強化する上で役立つ可能性がある。
   かつて、米国は(通常は既得権益のために)合意の骨抜きを要求しながらも、最終的には署名を拒否していた。これは、OECDにおける多国籍企業課税に関する交渉でも同様であった。今、世界の他の国々は、公正かつ効率的なグローバルな課税構造の構築に向けて前進することができる。

   以上が、スティグリッツ教授の主張だが、教えられたのは、トランプたちが、タックスヘイブンをモデルにした、多国籍企業や超富裕層 、強者のための一種の資本主義を作ろうとしていることである。
   これまで、関税などトランプの傍若無人な経済政策が、いかに世界中を翻弄して混乱に陥れているかと言った報道ばかりに接していたので、目から鱗であった。
   これは、ある意味では、資本主義、と言うよりも、民主主義を崩壊に導く恐ろしいダイナマイトを内包している感じで、恐怖を感じる。
   唯一のカウンターベイリング・パワーが、国際協力だと言うので、機能するかどうかは危ういが、巨大なアメリカの経済構造の自由からの離反であり、チェック&バランス機能の崩壊であろうから、その恐ろしさは、貿易戦争の比ではないような気がしている。
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ゴールデンウィーク:旅に思う

2025年04月26日 | 海外生活と旅
   ゴールデンウィークになると、テレビのニュースは、一気に、海外旅行の話題で賑わう。
   何十万人もの日本人観光客が、海外に出て行くし、日本各地も賑わう。
   若い時には、とにかく、家族旅行を企画して精力的に休暇を楽しんでいたが、もう、あの頃から半世紀以上経ってしまって、老境に入ると、ゴールデンウイークがやってきても、何の感慨も沸かない。

   まず、傘寿を超えた頃に、それまで楽しみにしていたニューヨークとフィラデルフィアへのセンチメンタルジャーニーを、体力的に無理になって、諦めてしまってから、旅行への興味が薄くなってしまった。
   このブログの「ニューヨーク紀行」のリピートを意図したのだが、ダメになったので、思い出にと、本にすべく、書籍化の編集を終えている。
   他にも、欧州紀行やロシア、中国などの紀行記事をこのブログに収容しているが、これらは、現役を引退してからの海外旅行であって、残念ながら、1970年代から世紀末頃までの現役時代に、海外在住14年、世界各地を仕事で東奔西走していた最盛期の膨大な記録は残せていない。尤も、その片鱗は、21年間のこのブログの記事の中で垣間見えてはいるが。

   海外旅行への最初の憧れは、この口絵写真アテネのパルテノンであった。
   敗戦直後で貧しい幼少年時代を過ごした私には、夢の夢であったが、幸いにもアメリカ留学の幸運が舞い込み、その休暇中に、欧州旅行を敢行して、パルテノンの丘に立った。
   それから、ブラジル、オランダ、イギリスと海外生活が続き、2~30年間海外各地を走り回り、旅に明け暮れた。私にとっては、この旅こそが仕事そのものであり生活であったのである。

   さて、旅にはあまり興味がなくなってきたということだが、体力的に無理になったという要因が大きいと思うが、別な意味では、既に、見るべきものは見た、経験すべきは経験してきたという思いがあるような気がしている。
   私の旅の目的は、人類の文化文明や歴史の成果や遺産の鑑賞と言うか、文化文明鑑賞行脚、歴史散歩なので、良き時代の20世紀後半に存分に旅を実行してその思い出を記憶に叩き込んでいる。
   旅は、体力知力ともに充実して感受性の強い、何でも見てやろうと好奇心旺盛な時期にやるべきであって、歳をとってからは、思い出を反芻することでも良いと思っている。
   それに、今のように、観光地が大衆化し過ぎて、ごった返して無残になってしまって、ろくすっぽ観光の醍醐味を楽しめないと言った状態には耐えられないという気持ちもある。

   もう一つ、追記すべきは、海外旅行への憧れをドライブしたのは、1970年の「大阪万博」で、直近の高槻市に住んでいたので、何回も通い続けた。
   今、「大阪・関西万博」が開催中だが、日本の若者たちを触発して、日本の海外雄飛の黄金期を呼び戻すことが出来ればと期待している。
   さて、その2年後に留学して、ニューヨークの摩天楼を仰いだのであるから、私にとっては、トントン拍子に海外が近づいてきたのであった。

(追記)このブログ左欄の「カテゴリー」の中に、前述の「ニューヨーク紀行」など海外の旅行記を収容している。
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Canon プリンターのMy Image Garden

2025年04月25日 | 
   Canon プリンターを使っているのだが、そのMy Image Gardenソフトを愛用している。
   DVDに、録画したオペラなどをダビングしていて、ディスクのラベルにタイトルや写真など記入して印刷して仕上げているので、このディスクレーベル・ソフトは非常に重宝しているのである。

   ところが、WiFiのルーターを変えたので、Windowsのすべてのアプリには、canon utilitiesが消えてしまって、パソコンからは、起動できなくなってしまった。
   Canonのサポートのチャットで、canon utilitiesは収容できたが、My Image Gardenは消えてしまって表れてこない。

   こまって、Canonの電話サポートに頼んで、古いアプリの掘り起こしなども試みて修復をして貰ったが、私の機種とWindows11では、インストール不可能だと言うことになった。
   しかし、インストールできないと言われたのだが、ルーターを変更する前には、文句なく使えていたので、私のプリンターTS●●●●でもWindows11で、ルーターが変わっただけで、使えないのがおかしいと思った。
   Windowsの検索から、色々調べて、
   My Image Garden Ver.3.6.8 ソフトウエアダウンロード - キヤノン を開くと、機種は詳細ではなかったが、Windows11に対応と書いてある。
   ダメもとだと思って、インストールをプッシュすると、順調にパソコンが動き始めて、インストールを完了した。
   嬉しくなって、Windowsのスタートを叩いて、すべてのアプリからcanon utilitiesを開くと、My Image Gardenが表示されている。前の私のHPと同じで、前のDATAがそのまま残っていてすぐに使えるのである。

   良く事情は分からないが、パソコンはソフトを収容するだけで、条件が合えばインストールするし、Canonの看板ソフトが、最新のWindows11に対応できない訳がない。
   また、アプリのソフトの場合には、インストールされたソフトに受け入れ態勢が整っておれば、そのソフトに合わせて機能する。
   私はパソコン併用だが、Canonのスタッフは、プリンタ―の機能だけを使って修復しようとしたので、出来なかったのかもしれない。

   ところで、今では簡単に語っているが、ルーターを変えてから、プリンタ―がoff状態で、印刷が出来ずに困った。
   何のことはない、WliFiが変わったので、プリンタ―の設定情報を変更する必要があったのに気づかなかったのである。
   あれやこれやで、パソコンもプリンターも、正常に戻すのに時間がかかった。
   昔のようにスイッチを押せば電灯がともり、ボタンを押してチャネルを回せば見られるテレビの時代が懐かしい。
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菊枝垂れ桜、エリナカスケード、そして、ドウダンツツジ

2025年04月21日 | わが庭の歳時記
   八重の菊枝垂れ桜が咲きだした。
   民家の小さな庭には、桜の木など無理だが、わが近所の住宅街には、ソメイヨシノが結構植わっていて、季節には華やかである。
   何故か、八重桜の方が好きで、千葉の庭では、普賢像を植えていて、この庭には、菊枝垂れ桜を植えた。
   桜切るバカ梅切らぬバカと言われているが、適当に剪定してコンパクトにしているので、当分は、椿と同居でも行けそうである。
   




   
   雪柳のようだというか、噴水のようだというか、滝のように左右に垂れた細い長い枝にびっしりと小さな花が咲くのが、椿エリナカスケード。
   珍しいので、千葉の庭では何本か植えていたが、鎌倉には1本だけ移植した。
   このヒメサザンカ、矮性なので、場所を取らないのが良い。
   



   ドウダンツツジも釣り鐘状の花をびっしりとつけて、新緑の緑が美しい。
   これが、秋になると真赤に萌える。
   


   
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ルーターの交換で、一気にパソコン快調に

2025年04月20日 | 
   ソフトバンク光を使用しているのだが、書斎を移動したので、私のパソコンが、光BBユニットから少し遠くなって、Wi-Fi(無線LAN)接続が不安定になって、インターネットの起動に不都合を来し始めた。接続ができなくなったり、途中で消えたりして困り始めて、色々操作するのだが、一向に良くならない。
   フラストレーションが高じてイライラし始めたので、ソフトバンクの光サポートセンターに電話して説明すると、ルーターを交換すると言って、手続きをすぐにしてくれた。
   5年ほど前にもそんなことがあったのだが、精密通信機器は日進月歩で、性能が良くなっているという。

   4~5日で送られてきた新しい光BBユニットに取り換えた。
   勿論、問題なく、インターネットが順調に機能し始めたので、ほっとした。
   たったそれだけのことだが、ICT危機に弱い老人には、パソコンんがうまく動かないと、大変なのである。
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椿:青い珊瑚礁、ダローネガ

2025年04月18日 | わが庭の歳時記
   赤紫の青い珊瑚礁が咲き始めた。
   一重筒状~平開 の中輪椿で、育つ気候条件によって、紫が濃くなったり微かに青色を帯びたりする珍しい椿である。
   種子島で見つかったヤブツバキのようで、市場に出ることが少なくて、取得に何年もかかった、私にとっては貴重な椿である。
   青く咲かせることは、非常に難しく、この最後の写真のように平凡なヤブツバキの花になてしまうことがある。
   




   黒い椿は、いつの間にか、消えてしまって、残っているのは、ブラックマジック1本だけ。
   本体と枝が、あまりにもか細くて弱いので支柱が必要であるのだが、その上に、バラのように華麗な大輪の花を咲かせる。
   結局、1輪だけ庭石に這わせてシャッターを切った。
   

   淡いクリーム色の椿ダローネガ。
   黄色い椿と言えば、中国だが、この椿はアメリカ生まれの洋椿、
   千重咲き中輪の綺麗な椿である。
   まだ、咲き続けている白い椿は、ジュリア・フランス。
   




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W・チャン・キム &レネ・モボルニュ「破壊なき市場創造の時代 これからのイノベーションを実現する」)

2025年04月17日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   この本の後半の第2部は、「非ディスラプティブな創造をどう実現するか」である。
   まず、創造を実現するためには、心の中の台本を投げ捨てる、手段と目的を混同しない、少数ではなく大勢の力を解き放つ、と言った強力なリーダーシップが必須だと説く。
   そして、その新市場の創造には、3つの基本条件、
   非ディスラプティブな事業機会を特定する
   機会を解き放つ方法を見つけ出す
   機会を実現する
   を挙げて、詳細に論じている。

   私自身、実業には関わっていないので、この「非ディスラプティブな創造をどう実現するか」には、殆ど関心はない。
   この本で面白いのは、ブルー・オーシャンや非ディスラプティブなイノベーションのケースを多岐にわたって紹介して興味深く説明していることで、科学技術や新規企画などの胎動からイノベーションが誕生して経済社会を変えて行く様子を語るナラティブの巧みさである。

   まず、最初に技術が先行した発明ありきで面白いのは、失敗作がバリューイノベーションで大化けした非ディスラプティブなケースである。
   ポスト・イットは、くっ付く筈のノリが、すぐに剝がれて後を残さないのが功を奏して、3Mが大儲けし、
   バイアグラは、高血圧の治療薬として開発されたが効き目なく、副作用として性的興奮を引き起こし勃起するのでED治療薬となった。

   逆に、最初に目標があって、非ディスラプティブな創造となったのは、ケネディのアポロ計画で、アポロ11号が、人類を月面に着陸させた。
   一寸ニュアンスが異なるが、中国の「中国製造2025」 などもこれに似た性格であろうし、盛田時代のソニーもこれに近い破壊的イノベーションであった。

   著者は、最終章で、「よりよい世界をともに築く」で、非ディスラプティブな創造が、遠からず実現しそうな分野を例証している。
   高齢化長寿、エネルギー、発展途上国の都市化、環境問題、宇宙問題、等々、人類社会の直面する「経済善」と「社会善」の両立を目指す分野である。
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ダロン・アセモグル・サイモン・ジョンソン「技術革新と不平等の1000年史 上」(2)

2025年04月14日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   上巻で興味深いのは、「生産性バンドワゴン」についての論述である。

   技術進歩と生産性の向上に伴って、実質所得も上がったに違いないというのが常識的な考え方なので、「生産性の向上が賃金と労働者の生活水準を押し上げる流れを、生産性バンドワゴン」と称して、その推移を論じている。
   残念ながら、中世の経済には、この生産性バンドワゴンは出現しなかったという。少数のエリートは別として、人々の生活水準が持続的に向上することはなく、むしろ場合によっては悪化した。大半の人にとっては、中世の農業テクノロジーの進歩は、一層労働強化に拍車をかける手段と化し、貧しい暮らしを更に貧しくする結果しか生まなかった。と言うのである。

   余剰を吸い取って享受していた少数のエリートとは、王の家来や貴族や高位聖職者など5%ほどで、また、食料余剰の一部は、人口増加の著しい新興の都心部を支えるのに使われた。  
   しかし、余剰の殆どを食い尽くしていたのは都心部ではなく、一大支配者層たるキリスト教会で、大聖堂や修道院など次から次へと教会を建設した。               

   産業革命の場合も同様で、例えば、炭鉱では、信じられないほど不衛生で危険な環境下で、真っ暗な坑道で、長時間半裸で働く子供がいるなどは珍しいことではなく、綿業をはじめとする工場の労働環境も同様に過酷であった。 
   苦しんでいるのは子供だけではなく、労働者の実質所得が上がらないのに、さらに長時間劣悪な環境で働かせられ、工業化は、一部の人間を大金持ちにしたが、殆どの労働者は、工業化前よりも寿命を縮め、健康を損ない、過酷な人生を送ることになった。
   「生産性バンドワゴン」は、働かなかったのである。

   さて、それでは、どのようにして、傾向を逆転したのか。
   テクノロジーの変化によって労働者階級に新たな機会が生み出され、賃金を低く抑えることが、最早、不可能になったのである。それが実現したのは、工場主や富裕なエリートへの対抗勢力が、職場で、続いて政治領域で広がり始めた後のことである。この変化により、公衆衛生やインフラが改善に向かい、労働者は労働条件の向上や賃上げを求めて交渉できるようになり、テクノロジーの変化の方向が変わった。国民の大多数にとっては遥かによい結果がもたらされたのである。
   これらの進展は、自動的に生じたものではなく、鬩ぎ合いながら進んだ政治・経済改革の賜物である。

   生産性バンドワゴンが機能するためには、二つの前提条件が必要になる。労働者の限界生産性の向上と、労働者の十分な交渉力である。どちらの要因も、イギリスの産業革命の最初の100年間はほぼ欠けていたが、1840年代以降は順調に発展し始めた。
   対抗勢力の健在が、政治経済社会の健全性と安寧に如何に重要か、
   ガルブレイスが半世紀上も前に、カウンターベイリング・パワーとして論述している。
   トランプ体制に堅実かつ有効なカウンターベイリング・パワーの発露を期待したい。

   さて、人類の歴史は、結局、「生産性バンドワゴン」のon offの繰り返しの連続で階段状に進化発展を遂げて来たように思う。ここ数百年における驚異的な文化文明、経済社会の成長発展には目を見張る思いだが、その今日の社会でも、まだ、「生産性バンドワゴン」の亡霊と言うか残滓を引き摺っている。
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梨の花、姫リンゴ、トキワマンサク咲く

2025年04月13日 | わが庭の歳時記
   桜も散り始めて、春の花も入れ替わり。
   わが庭では、梨の花が咲きだしている。
   びっしりと白い花をつけていて、青空に映えている。
   



   重ねて咲いている赤いトキワマンサクと好対照、
   フラワーセンターで苗木を買った時には、白い花もあったのだが、場所がないので諦めた。
   梨の木が元気になったので、丁度、バランスが良くなった。
   



   姫リンゴと言うのであろう、クラブアップルの花が、咲き始めた。
   イギリスに居た時に、あっちこっちで咲き乱れていたリンゴの花に感激して、帰ってから植えたいと思っていた。
   千葉や鎌倉では、一寸気候に合わないと思って、姫リンゴにした。
   広い庭に長い垣根状に這わせて咲かせれば華やかであろうが、如何せん個人の住宅の庭では無理である。
   





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W・チャン・キム &レネ・モボルニュ「破壊なき市場創造の時代 これからのイノベーションを実現する」

2025年04月12日 | 書評(ブックレビュー)・読書
    ブルー・オーシャンのW・チャン・キム とレネ・モボルニュ の新しい本である。
   既存の業界を破壊せず、外側にまったく新しい市場を創造する「非ディスラプティブな創造」の追求、すなわち、「ディスラプションなき市場創造」こそが、これからのイノベーションと成長の目標だと説く新境地の展開で非常に興味深い。

   disruptionとは、破壊とか崩壊と言う意味で、経済学では、イノベーションによって新規市場が生まれて既存市場とそこで活動する既存プレーヤーに取って代わる場合を言う。著者は、disruptionを、ローエンドやボトムアップから起こると説いたクリステンセンと違って、新製品や新サービスがハイエンドとローエンドの両方において旧来のものに取って代わる形態の現象を表すとして、一般化して論じている。

   今回、新しく論じているのは、このdisruptionを伴わない「非ディスラプティブな創造」、すなわち、企業の破綻、雇用の喪失、市場の荒廃と言ったディスラプションを引き起こさずに、新たな産業を創出する、何もなかったところに新たな市場を創造する市場創造型イノベーションについてである。
   非ディスラプティブな創造とは、「既存の産業の外側における、あるいはそれを超越した、全く新しい市場の創造」と普遍的に定義できるとしている。
   例証しいているのは、生理用パッド、マイクロファイナンス、セサミストリート、ポスト・イット、バイアグラ
   全く、かって存在しなかった無市場、無消費の業態である。

   それでは、これまで論じていたブルーオーシャンの創造とはどう違うのか、
   ブルー・オーシャン戦略は、新市場開発イノベーションだが、既存業界の境界を越えて新市場を創設して、ディスラプティブな成長と非ディスラプティブな成長を混在させる成長で、非ディスラプティブとディスラプティブの中間に位置する混在形態である。と言う。
   例えば、ウーバーvsタクシー、アマゾンvsリアル書店を考えれば分かるが、ウーバーとアマゾンはブルー・オーシャンだが、旧来勢力をディスラプティブしてはいるが、必ずしも完全に、タクシーやリアル書店に取って代わっているわけではない。QBハウスも既存理髪店との競合であるし、スターバックスも既存の喫茶店と共存している。
 
   イノベーションの父と呼ばれるシュンペーターが「創造的破壊」論を展開した。「創造的破壊が起こるのは、新規市場を創造するイノベーションが既存市場を破壊しそれに取って代わる場合だ」と言うものであった。
   シュンペーターにとって経済成長の真の原動力とは、新しい種類のテクノロジー、商品サービスを生み出す市場創造型のイノベーションであった。創造的破壊は、創造と破壊は切っても切れない関係にあって、創造的破壊は絶え間なく古いものを破壊して新しいものを創造するするという概念であった。   
   しかし、著者は、シュンペーターやクリステンセンを超えて、既存産業や既存企業を破壊しない、ダメージを与えない、完全に新規な経済活動を生み出す「非ディスラプティブな創造」を論じているのである。
   一頃、バイブルのように脚光を浴びて一生懸命に学んでいたマイケル・ポーターの経営戦略や競争戦略論が、今昔の感であるのが面白い。

   極めて貴重な提言の数々、
   論点などは後述したい。
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野村證券をかたるフィッシング詐欺

2025年04月10日 | 経営・ビジネス
   【重要】野村証券オンラインサービス利用規約変更のお知らせ
   と言う次のようなメールが入ってきた。
   
   「セキュリティに関する重要なお知らせ」
平素より野村証券をご利用いただき、誠にありがとうございます。
 現在、当社WEBサービスではセキュリティ強化に伴うシステムメンテナンスを段階的に実施しており、以下の手続きが必要となる場合がございます。 
お客様のご契約内容・ご利用環境によって、追加の確認事項が表示されることがございます。該当のお客様には、本メールにて個別にご案内を差し上げております。 
▼ ご確認が必要な項目
  • 利用中デバイスの再認証・確認 
  • 一部認証方式の見直し(FIDO、ワンタイムキー等) 
  • セッション維持ポリシーの更新対応 
ご確認は以下の手順にて行ってください。 
▼ お手続き方法
  1. 下記リンクよりご案内ページにアクセス 
  2. 画面上の「設定内容を確認する」を選択 
  3. 受付番号 NOMU-私のmail adを入力のうえ、案内に従って進む 
   「ご案内ページに進む」の下に、
   よくあるご質問
  • Q:このメールは本物ですか?
  • Q:設定手続きに不安があります 
    お問い合わせ サポートページはこちら
 
   試しに、「ご案内ページに進む」や「Q:このメールは本物ですか?」や「サポートページはこちら」をクリックすると、全て同じ野村のホームトレードのログインページと寸分違わない入力画面が出てくる。
   結論から言うと、これに入力して送信すると、万事休すである。

   送信先のメールアドレスNomura Securities サポートチーム 
<notice@info5488.com>を見れば、野村からのメールでないことは分かるのだが、まず、メールの中身に気を取られて、立て続けにメールが送られてくると、冷静さを欠く。
   おかしいのは、深夜前に送られてくるので、野村である筈はなく、西の国からのメールであろう。

   とりあえず、「WEBサービスではセキュリティ強化」だと言うので、無視も出来ないと思って、野村ホットダイレクトに電話して、指示を仰いだ。
   やはり、間違いなしにフィッシング詐欺であった。
   各証券会社でも頻発しているようで、
   「フィッシング対策協議会」を立ち上げて、HPを開設して、詳細に現状や対策などを報じている。
    野村證券をかたるフィッシングの報告 だけでも、次のとおり、
【必読】野村證券口座の確認のお願い
【重要】野村証券オンラインサービス利用規約変更のお知らせ -
「NOMURA」取引回数制限なし!1ヶ月間の株式手数料無料サービスのお知らせ
「NOMURA」安全取引のための重要なお知らせ
「NOMURA」セキュリティ対策アップデートのお知らせ
「NOMURA」セキュリティ強化プログラムのご案内
「NOMURA」オンラインサービス安全強化キャンペーン
「NOMURA」お客様情報保護強化のご案内
「NOMURA」フィッシング詐欺対策のお知らせ 

   フィッシングサイトは本物のサイトの画面をコピーして作成することが多く、ログイン画面など全く同じなので見分けることは非常に困難である。と言うより無理である。
   これまでに、愚かにも2回このようなフィッシング詐欺に引っかかって、1度は酷い目にあったので注意しているのだが、朝晩毎日、
   アマゾン、楽天、銀行、カード会社、ガス水道電気、ETC、e-Tax等々、関係のないところからも、無数に入ってくる詐欺メールを、迷惑メール、受信拒否処理するのに謀殺されているのだが、次から次へと増加の一途で鼬ごっこ。

   したがって、サービスへログインする際は、各会社のHPを開いてから行うことにしている。
   もう何十年も使っているので、漏洩しているメールアドレスを変えるべきだろうが、事後処理が厄介なので逡巡している。

   いずれにしろ、トランプの狂気関税に振り回されて株価の大暴落で滅入っているときに、フィッシング詐欺対策とは笑うに笑えない。
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ダロン・アセモグル・サイモン・ジョンソン「技術革新と不平等の1000年史 上」 (1)

2025年04月09日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   2024年のノーベル賞経済学賞受賞者のこの本 Power and Progress: Our Thousand-Year Struggle Over Technology and Prosperity 「権力と進歩 テクノロジーと繁栄との1000年闘争史」
   前著の「国家はなぜ衰退するのか——権力・繁栄・貧困の起源 」「
自由の命運 : 国家、社会、そして狭い回廊」同様に面白い。

   農法改良、産業革命、人工知能の進化 など、テクノロジーの発展、イノヴェーションによって、生産性が向上し、人類社会は繁栄してきたが、その果実は農民や労働者や一般庶民には行き渡らず、格差が拡大の一途を辿った。何故こんなことが起こるのか、このパラドックスを、千年の人類史を分析して、未来の指針を展開する。
   後半の下巻はすでにレビューしたので、今回は上巻で気付いたことを考えてみる。

   まず、何故、産業革命がイギリスで起こったのかと言うことに対する著者の見解に注目した。
   この答えには、学問的にも色々な見解があって、このブログでも論じてきた。
   著者は、それら諸説は、五つの題目に分類できるとして、地理、文化(宗教と生来の企業家精神を含む)、天然資源、経済的要因、および、政府政策だとして、個々に詳細に分析して論破している。
   ダニエル・デフォーが説く「プロジェクトの時代」の核心だと言うジョージ・スティーヴンソンのような起業家で発明家と言う新しい階層の出現と台頭こそが、イギリスの産業革命の何よりの原動力であった。不可欠であったのは、比較的地味な出自を持つ新種の人々の起業家精神と革新性で、彼らは実際的な技能と野心があり、それが新しいテクノロジーを生み出せる素地になった。と言うのである。

   さらに重要なのは、産業革命を生んだ環境土壌である。イギリスだけほかの国と違って行き着いたのは、長きにわたって進行していた社会的な変化であり、その過程から、いわば成り上がり者の国が出来上がったからである。
   中流階級のイギリス人は、健全な投資であれ一攫千金を狙った投資を通じてであれ、富を蓄積して、上昇する機会を狙っており、また、工業工程のあっちこっちの側面でイノヴェーションを起こして富と名声を得て成り上がる労働者が出るなど下剋上の変容を、社会的階層性が緩むなど一連の大きな制度的や社会的な変化が受容して、貴族に納得させた。と言う。

   銑鉄生産のダービー、蒸気機関のニューコメン、水力紡織機のアークライト、陶器のウェッジウッドなどを例証して、彼らは、ラテン語も読めなければ、学術研究の参照に多大な時間をかけることもない、序列社会の下層の家に生まれた小規模製造業者や職人や商人たちだったが、いずれも途轍もない野心家で、テクノロジーを信じていて、進歩の原動力としても、自らの社会的上昇の手段としても期待をかけていた。と言うのである。

   テクノロジー優位の非常にユニークな見解で興味深い。
   脚注で触れているように、一般的な見解ではなさそうであるが、やはり、除外した前述の五つの産業革命要因も、それなりに関連しているので無視するわけにもいかないと思う。
   いずれにしろ、複合的な要因が重なり合って産業革命が起こったことは間違いないので、両方を考慮しながら考えると面白い。

   参考のために、一般論として、ウィキペディアを借用すると、
   イギリスで世界最初の産業革命が始まった要因として、原料供給地および市場として植民地が大きく存在した事、清教徒革命・名誉革命による社会・経済的な環境整備、蓄積された資本ないし資金調達が容易な環境、フランスにもこれらの条件は備わっていたものの、両者の違いは植民地の有無である。 
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トランプがどう足掻こうとも、実体経済は騙せない

2025年04月07日 | 政治・経済・社会
   トランプ関税と異常な経済政策が、世界経済に激震を起こし、未曽有の経済危機を招いている。
   トランプの常軌を逸した暴挙であることは間違いないのだが、始動し始めてしまったので、当面は、流れに任せる以外にしようがない。

   はっきりしていることは、トランプが、どんなに強弁を弄して正当化して足掻こうとも、実体経済は、必ずトランプの経済政策を後追いして、その甚大な弊害なり無残な結果を露呈するであろうということである。
   まず、アメリカを筆頭に世界中の株価が大暴落しており、日経株価など、一時31000円を割り込んでしまった。
   アメリカでは、株価の大暴落と大衆の抗議デモだが、まもなく、トランプの唱えるお題目とは逆に、
   国家経済全体が変調を来してインフレが強襲するなど一気に経済情勢が悪化して、国民生活を窮地に追い込み、国民の不満が爆発しよう。国際経済の破壊は凄まじい筈である。
   世界の信認を失って凋落して行き、国民が離反して行くアメリカの黄昏に、トランプアメリカが耐え抜いてゆけるかどうか。

   日経株価の暴落だが、日本経済が健全なので、時間はかかるであろうが、元に戻る。右往左往することはない。
   また、景気循環の常で、日本経済のみならず、世界経済も、いずれ適当な時期に、上昇局面に向かって進行して行き、新秩序を形成して均衡状態に落ち着く。今度は、アメリカ弱体の新秩序なので状況は一変するであろうが、歴史の必然なので、気長に待つこととなろう。

    信じられないのは、民主主義のリーダーであった筈のアメリカで、何故、このような民主主義と資本主義の根幹を揺るがせ、国際秩序を根本から破壊するような狂気じみた暴挙が起こり得たのかと言うことである。
    更なる悲劇は、この暴挙を制止するカウンターベイリング・パワーが働かなかったアメリカの良識の著しい退潮、民主主義の崩壊の予感である。
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経営コンサルタントの倒産

2025年04月06日 | 経営・ビジネス
   東京商工リサーチが、
「2024年度「経営コンサルタント」の倒産が過去最多専門領域の分散化で“経営のプロ”の生き残り競争が激化」と報じた。
   “経営のプロ”のはずのコンサルタントだが、事業再生やDX支援、M&Aなど、専門領域の分散化と顧客ニーズが高度化し、最近のコンサルは差別化と専門性が求められている。資料集めや情報の整理などはAIに取って代わられ、単純な手続き代行や財務指導など、過去の経験則だけで生き抜くことは難しい。と言うのである。

   さて、私自身も、現役引退後に、日銀に居た大学の後輩と二人で、経営コンサルタントを立ち上げて、しばらく運営していたので人ごととは思えない記事である。

   経営コンサルタントの倒産は、原因別では販売不振や赤字累積などの「不況型倒産」が7割近くを占め、形態別では、「破産」が構成比96.0%と大半を占めている。また、資本金別では、1億円未満が同98.6%と大半を占めた。さらに、従業員数別では5名以下の小規模事業者が同94.0%だった。コンサル業界は1人でも、少ない開業資金でもスタートでき、参入障壁は低い。ただ、人脈が途切れたり、継続的な案件取引が突然なくなるリスクもあり、中小コンサルタントの足元はぜい弱な企業が少なくない。 
  「経営コンサルタント業」の実績は、コンサルタントの経験や人柄、人脈などで大きく左右される。属人的な性質が強い分、如何に優秀な人材を確保し、顧客に高付加価値を提供できるかを問われている。後継者不足やDX支援など、中小企業が直面する課題は多様だが、高度化する顧客ニーズへの対応には、それ以上の専門的な知識が必要になる。このため、コンサル業界の生き残り競争が加速し、特色を打ち出せないコンサルの淘汰が続く可能性が高い。と言うことである。

   ところで、我々のコンサル会社について、
   まず、私のキャリアだが、世界屈指のビジネススクールで経営戦略論を専攻してMBAを取得して帰国して、その後長くヨーロッパの現地法人を設立して経営に携わった。帰国後は、関連事業の総括を担当して、色々な業種業態の子会社の管理監督および経営指導に当たり、続いて、一部上場の関係会社の監査役に就任した。監査と言う任務以外に、全国の事業所を駆け回る機会を得たので、個別事業の管理運営指導や戦略戦術の議論などコンサルに軸足を置く仕事にも注力した。
   相棒のゼミの1年後輩の日銀マンも、海外は勿論錚々たるキャリアを積んでおり、経営コンサルタントとしては、二人とも、まずまず、資格があると考えた。
   しかし、この考えが甘かったのである。

   二人とも、多くの頼もしい素晴らしい人脈に恵まれおりながら、頼らずに独立独歩で歩こうと決めて走り出したのだが、如何せん顧客が掴めない。最初は、私の大学の非常勤講師の謝礼や相棒のコンサル業務のフィーなどで、ほそぼそとスタートしたが、鳴かず飛ばず。
   実際には、コンサルを頼りにしたい中小企業は、生きるか死ぬかの瀬戸際であり、高邁な理論など論外であって、もっと泥臭い、死地を彷徨いながら泥を被って打ち込む実業に長けたコンサルに頼りたいはずだったのである。

   さて、経営コンサルタントは言うなれば、病院や医師に近い業務だろうが、今や、ICT革命、AIの驚異的な進歩で、知的高級職の弁護士や会計士さえ駆逐しつつあるように、同様に、業務の多くがAIに代替されて更に高度化して業態が大きく変化している。
   しかし、ミンツバーグが説くごとく、経営はアート、
   豊かな創造性と、高度な経験と知見に裏打ちされた鋭敏な感性が求められ、経営コンサルは、そのはざまにあって、難しい仕事である。
   いずれにしろ、MBA感覚では、個人的な経営コンサルタントなど務まる筈はない。
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