ニューズウィーク日本版が、
「トランプ関税にノーベル賞学者が緊急警告「このままでは経済が沈む」 Gene Medi via Reuters Connect」と報じた。
クルーグマンが、トランプ大統領による予測不能な関税政策──さまざまな関税の導入・一時停止や税率変更を繰り返すやり方──が、米国での景気後退を「あり得る」ものにしていると警鐘を鳴らした。 のである。
トランプの関税政策とその実行方法がビジネス環境に深刻な不確実性をもたらしている 、「皮肉なことに、問題は関税そのものではない」「安定した関税率なら景気後退は起きない。しかし、翌日には変わるかもしれない不安定な関税率は、需要に本当に冷や水を浴びせる 」「トランプ関税の『秘伝のタレ』は、極度の不確実性にある。誰もそれがどうなるかわからない。次に何が起こるかもわからない」 。と言う。
トランプはこれまでに、包括的、特定分野向け、報復的な関税を発表、実施、一時停止、再導入を繰り返してきた。特に、4月9日に大規模な報復関税が発動されたわずか数時間後に、その大部分を一時停止している。こうした状況が、企業投資や消費者行動、住宅建設業者などに悪影響を与えており、「景気後退があり得る」とする理由になっている。
ただし、クルーグマンは「今回の景気後退は深刻なものにはならないだろう」としつつ、「もし消費支出が急落すれば、深刻な景気後退になる可能性もある」と警告している。
現説を読んでいないので詳細は分からないが、関税などのころころ変わる朝令暮改のトランプの経済政策が惹起する不確実性が問題であり、消費支出が急落すれば深刻な景気後退になり得る。と言う事であろうか。
私自身は、もっと単純な話で、今度のトランプ関税で引き起こされた急速かつ高率のインフレーションが、今後浸透してゆくと、アメリカ人の日常生活を圧迫して、政治経済社会を混乱させると思っている。
ウォールマートの棚を見れば分かるが、その多くの商品が安価な中国製品であり、今や、棚には欠品が目立ち、価格が高騰して、消費者を困らせているという。食品や衣料、雑貨やおもちゃなどのアメリカの大衆消費財の大半は輸入品であり、高関税を課されるので、尋常な手段では対処できないであろう。
それに、アメリカ製の自動車の部品の多くは25%関税の外国からの輸入品であるから、国産の自動車価格も高騰する。サプライチェーンを自国のみで完結できずに、外国貿易に依存しているアメリカのほかの製造業においても似たり寄ったりで、アメリカ経済そのものが、関税による悪性のコストプッシュ・インフレに見舞われつつあり、消費支出の急激なダウンが危惧され始めている。
トランプが言うように、アメリカが世界中からぼったくられているなどと言うのは幻想で、むしろ、アメリカ経済自体が、安い外国製品に依存した、いわば、強者が弱者を利用した搾取型経済であった。その関係が、今回のトランプ騒動で人為的に外れて、構造改革とも言うべき現象で一気に輸入品が高騰するのであるから、容易に対応できるはずがない。
これに対するアメリカ人一般大衆の強烈な半インフレ行動が拡大して、反トランプ運動を引き起こして関税政策の撤廃を迫るなど、トランプ政権は、何らかの形で、経済政策など対応を軟化せざるを得ないであろうと思っている。