医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

二型糖尿病のリスクの減少と全粒穀物、野菜、生の果物の摂取量との関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-23 17:33:18 | 健康・病気

以前のこのブログでも述べたように、二型糖尿病のリスクを減らすためには、カロリーの制限だけでなく、摂取する食物の質の改善も必要です。このことが、最近、ハーバード大学の研究でも確認されました。今回は、この問題について、米国の研究を参考にしながら、考えていきたいと思います。

"the American Diabetes Associations 74th Scientific Session"によると、人の食事の全体的質の改善は、他の生活スタイルとは関係なく、二型糖尿病を防ぐのに役立つことが、わかりました。

ハーバード大学のSylvia Ley博士らの研究によると、4年より長く食事の質指標スコア―を10%だけ改善した(全粒穀物、生の果物、それに野菜をもっと多く摂取、糖分を含む飲料、食塩、飽和脂肪酸の制限)人は、そのような食事をしない人に比べて、約20%だけ二型糖尿病のリスクが減少しました。そして、食事の質は、2010年度の110ポイントある代替健康度指標を用いて、調べられました。

食事の改善は、体重の減少、あるいは運動量の増加が関係なく、二型糖尿病に対し、リスクを軽減するとしても、そのような他の生活スタイルの変化のマ―カーであるかどうか、調べました。

研究の結果、Ley博士らは、食事が、体重の減少や運動量の増加とは関係なく、二型糖尿病と関係することを、発見しました。もしも人が、その他の生活スタイル因子を改善するなら、もっと二型糖尿病のリスクを減らすと考えられますが、食事の質のみを改善することは、意義のある利点です。そのリスクを減らすため、管理栄養士の指導により、長期のカロリー制限食を摂取することは、二型糖尿病患者にとって、しばしば困難を伴います。食事の全体的質を改善できるのなら、赤身の肉、加工肉、食塩、糖を含む飲料を減らし、もっと野菜、生の果物、それに全粒穀物の摂取を増やすと、健康状態が改善され、二型糖尿病のリスクを減らせる、と博士は述べています。

日本国でも、ファーストフード摂取の増加と食生活の肉食化など、欧米の影響による食生活の変化で、二型糖尿病を始め、生活習慣病の増加が懸念されています。ここで述べた食生活の質を改善することにより、昔のスリムで、元気な日本人のようになれる、と考えています。

References

Improving diet quality reduces risk for type2 diabetes: ScienceDaily. June 14,2014

the American Diabetes Associations 74th Scientific Session.

 

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腎臓結石のリスクの軽減と野菜、果物、ナッツ、全粒穀物の頻回摂取の関係について 栄養医学ブログ 

2014-06-23 13:56:19 | 健康・病気

今までの米国での研究でも、頻回に野菜や果物、豆類を多めに摂取し、獣肉や動物性脂肪の摂取の少ない食習慣のヒトは、腎臓結石のリスクが低いと報告されています。今回は、そのことを裏付ける新しい研究が有りましたので、ポイントを紹介し、それについて考えていきたい、と思います。

"the American Society Nephrology"によると、野菜、生の果物、ナッツ、低脂肪酪農製品と全粒穀物を多く摂取し、一方、塩分、赤身の肉、加工肉、それに糖分の多い飲料の摂取を制限することは、腎臓結石を防ぐ効果的な方法です。その理由として、腎臓結石は、高血圧、糖尿病、体重の増加、そしてその他の心臓病などのリスク因子との関係の比率の高さと関連しています。そして、これらの発見は健康と深い関わりがあります。

Brigham and Women's HospitalのEric Taylor博士らは、腎結石の形成に及ぼす健康な食事習慣の影響を調べる大規模な研究を実施しました。そして、3件の臨床研究に登録された人々から食生活と健康情報を集めました。1件目は、医療従事者の食生活と健康追跡調査(45,821名の男性での18年の追跡調査)、2件目は、看護師の食生活と健康調査(94,108名の中高年女性での18年間の追跡調査)、そして3件目は、看護師での食生活と健康調査(101,837名のもっと若い女性での14年間の追跡調査)となっております。

Taylor博士らは、DASH食(高血圧の食事療法)は、野菜、果物、豆類、低脂肪酪農製品、そして全粒穀物の高摂取と塩分、糖類の多い飲料、それに赤身の肉、加工肉の低摂取を基本としたものです。DASH食の高スコアーの人々は、高Ca、高カリウム、高Mg、高シュー酸塩、
高ビタミンC、それに低ナトリウムの食事を摂取しました。

総計5,645名の腎臓結石の発症が3件の研究の参加者で見られました。3件の研究のおのおのでは、DASH食スコア―のもっとも高い参加者(被験者)は、DASH食スコア―のもっとも低い参加者に比べ、40%~45%、腎臓結石の発症が少ない結果でした。また、腎臓結石のリスクの低下は、年齢、体のサイズ、水分の摂取量、それにその他の因子とは関係がないようでした。なお、更なる追試を希望します。

博士によると、DASH食は、腎臓結石と関係した高血圧、糖尿病、それにその他の慢性疾患の発症に影響を及ぼす可能性が有ります。また、高血圧、あるいは糖尿病を患っていない被験者を研究するため、限定した分析を実施し、これらの被験者の間でさえ、DASH食では、腎臓結石のリスクが低下しました。したがって、肉食や炭水化物食に偏った食生活のヒトは、野菜、生の果物、豆類、全粒穀物などを、多めに食生活に導入することが、腎臓結石、高血圧、糖尿病のリスク低下に必要、と考えられます。また、一日一個のリンゴの摂取が腎臓結石のリスク低下と関係がある、という研究もあります。

腎臓結石の治療に用いられている医薬品の多くは、不快な副作用があるので、DASH食を食生活に取り入れることは、効果的な代替療法になり、副作用がなく、体に優しいので、一般人でも実施可能、と考えられます。

References

Eric. Taylor et al: DASH-style diet associates with reduced risk for kidney stones. Journal of American Society Nephrology, 2009;DOI

An apple a day keeps kidney stones away: more fruits and veggies, less salt prevents stones from forming. ScienceDaily. August 14,2009

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