医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

生の果物の摂取と二型糖尿病のリスクの低下について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-26 15:11:37 | 健康・病気

二型糖尿病のリスクと果物の摂取の関係は、今までは、果物に糖分が含まれているため、栄養指導では、頻回の摂取を勧めておりませんでした。しかし、新しい研究では、生の果物を丸ごと摂取すると、二型糖尿病のリスクが減少する結果でした。それとは逆に、果物ジュースの摂取は、二型糖尿病のリスクを増やす結果でした。したがって、これからは果物に対する認識が変わるものと思われますが、新しい研究を基に、これらについて考えていきたい、と思います。

ハーバード大学の新しい研究では、3件の長期にわたる研究において、187,382名の被験者から、1984年から2008年にわたって集めたデータが調べられました。登録した人では、二型糖尿病、心臓血管系疾患、あるいはガンと診断された被験者は除外されました。その結果12,198名が、その研究期間中、二型糖尿病が発症しました。また、米国では、日本に比べて果物をよく摂取するという報告もあります。赤身の肉をよく摂取し、それによるいろんな疾患のリスクを生の果物の摂取によりカバーしている、という報告もあり、最近では、野菜の摂取量が日本国より多いようです。

その研究者らは、個々の生の果物(ぶどう、レーズン、桃、あんず、アプリコット、プルーン、バナナ、マスクメロン、リンゴ、梨、みかん、グレープフルーツ、イチゴ、ブルベリー)の摂取だけでなく、全フルーツの摂取状況を調査しました。また、果物のジュースの状態(リンゴ、みかん、グレープフルーツ、その他の果物)での摂取状況を調査しました。

特定の生の果物(特にブルベリー、ブドウ、それにリンゴ)を2回/週、摂取した人は、1回/月以上摂取した人に比べて、23%程二型糖尿病の発症リスクが減少していました。それとは逆に、果物ジュースを、1回/日もしくはそれ以上摂取した人は、21%程二型糖尿病の発症リスクが増大しました。また、3回/週の果物ジュースの摂取を、生の果物に変えると、二型糖尿病の発症リスクが減少したことを、その研究者らは発見しました。したがって、果物ジュースを愛飲している人は、そのリスク予防のため、明日から生の果物に変えるのが二型糖尿病予防の一環、と考えます。

果物のグリセミック指数は、二型糖尿病の発症リスクと果物の関連を調べる、重要な因子であるかは証明されていません。しかし、果物ジュースの高グリセミック指数は、食物繊維の豊富な生の果物に比べて急速に消化システムを通過するので、果物ジュースと二型糖尿病のリスクの増大の明らかな関係を説明できる可能性があります。

研究者らは、特定の個々の生の果物の利点となる作用は、ビタミン、ミネラル、食物酵素、食物繊維、アントシアニンなど抗酸化栄養素など成分の協働作用によることを、立証しています。なお、以前の研究では、心臓発作のリスクの低下は、ベリー類やブドウなどに含まれるアントシアニンの作用と関係していると、報告されています。

ハーバード大学のIsao Muraki博士らの研究によると、二型糖尿病糖尿病予防のための対策として、果物ジュースではなく、農薬などで汚染されていない生の果物を丸ごと頻回に摂取することが、勧められています。また、野菜、果物、それに豆類などに優しい土作りをして、愛情をこめてそれらを育てることが、二型糖尿病予防への一里塚になります。そして、更なる研究の積み重ねが、二型糖尿病のリスク対策の希望ある未来に繋がります。

References

British Medical Journal: August 29, 2013

Eating whole fruits linked to lower risk of Type2 diabetes: scienceDaily. Aug 29,2013