医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

大腸ガンと腸内細菌の関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-06-09 13:38:54 | 健康・病気

日本国では、獣肉、動物性脂肪摂取の増加、食物繊維摂取の減少など食生活の欧米化により、大腸ガンによる死亡率は、全ガン死亡率の中で男性では3位、女性では1位となり、大腸ガンに対する栄養医学的対策が、国家的喫緊の課題となっております。今回は、重要事項の大腸がん(直腸癌、結腸がん)と腸内細菌の関係の、最新研究について、考えていきたい、と思います。

大腸ガンはヒトの体内の最も複雑な環境の中で進行します。大腸は、約10兆個の細菌の集落が共生しております。2014年のサンデイエゴでの"American Association for Cancer Research Annual Meeting”では、ウイスター研究所の研究者らの研究によると、腸内細菌の結腸での集落は、大腸ガンを生長させ、増殖させます。この観点から、そのガンの腸内微細環境を変えることが、その発症の予防につながる、と考えます。

これらの結果から、細菌の出す有害な蛋白質が、結腸に並んでいる上皮細胞内でDNA修復蛋白質を抑制する可能性が有ることが、示唆されます。遺伝的、あるいは環境による暴露により、
リスクがあるヒトの腸管内細菌構成を変えることにより、結腸ガンのリスクを減らす可能性が、研究により示されています。現在のところ、このリスクを減らすために塩分の少ない和食や発酵食品、ヨーグルトなどが推奨されています。なお、これらには、乳酸菌(善玉菌)、食物繊維、ビタミンCを始め抗酸化栄養素が多く含まれています。

次に、Frank Rausher博士によると、結腸がんが腸管内でどのように形成され、致死的状態に進行する引き金となるかは、新しい方法で判明されました。それは、ある細菌の蛋白質が、結腸ガンの進行を裏付け、腸管内の状態を作り出す遺伝的変化を促進さす、と考えられます。ところで、日本では検診により、大腸ガンの発生率は減少していますが、生存率は減少していません。外国でも同じ傾向です。

腸管内細菌は、一般的には、善玉菌のようにヒト宿主への多くの利点をもたらし、消化を助け、より直接的に病原性細菌を締め出します。なお、フレンドリーな片利共生菌も感染性、病原性細菌も,炎症を減らすことがわかっています。また、それらは、治癒を促進し、感染の拡大を防ぐ、免疫システムに働く重要なツールとなっております。このように、大腸ガンの予防のためには、腸内細菌の正常な構成バランスを保つことが重要で、食事がそのカギを握っています。このように、腸に優しい食事が、いろいろ発表されておりますので、ネットで検索されることをお勧めします。更なる研究が期待されます。

Reference

The Wistar Instute. "Bacterial gut biome may guide colon cancer progression" ScienceDaily, 4 April 2014