医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

腸内細菌と大腸がんの関係の考えられるメカニズムについて 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-06-12 18:15:56 | 健康・病気

腸内細菌と大腸がんの関係は、最近の研究により次第に解明されつつあります。その予防・防御には、乳酸菌を始め、ビタミンC、食物繊維などいろんな栄養素が関係していることがわかりかけてきました。そして、いつも腸内環境をベストに保つことが必要ですが、今回は、これらの病態分子生化学的メカニズムについて考えていきたい、と思います。

ウイスター研究所のRauscher博士らは研究で、結腸上皮細胞へ、EPEC細菌により生じた抗炎症性蛋白質を注入しました。これらの蛋白質の一つであるNLEEは、NF-kB経路において化学的シグナルの形質導入に関係したヒトの基本的蛋白質であるTAB2を標的としている酵素です。TAB2を標的とすることは、腸管の数多くの炎症活性の不活性化をもたらします。

Rausher博士らは、NLEE(抗炎症性蛋白質で酵素)に標的とされる、その他のヒト蛋白質を調べました。そして、NELLがDNAの修復に関係した蛋白質のZRANB3を阻害する能力を有していることを発見しました。

Feng Shao博士によると、細菌に感染した結腸細胞がDNAのダメージを修復できないなら、その変異は増え、そのことがガンの成長を促進させます。加うるに、NELL蛋白質が、TAB2とZRANB3をメチル化することにより、攻撃し、メチル分子一個を加えます。そのことは標的蛋白質を明らかにします。NLEEは、亜鉛フィンガーとして知られているTAB2とZRANB3の構造を特異的に攻撃するようです。それらは、多くのその他の蛋白質で用いられている構造上のモチーフです。

博士らがNLEEの構造を調べた時、ある亜鉛フィンガーのパターンにおいて、特異の蛋白質に強く付着しることを、発見しました。さらに、EPECに感染した結腸細胞を調べてみると、この亜鉛フィンガーのパターンは、少なくとも三つのDNA修復酵素に共通しており、NLEEが、主としてガンの成長を阻害する、結腸でのメカニズムに広く影響する能力を有していることを、示唆するものです。

Rauscher博士らの研究結果は、胃部不快感をもたらす、いくつかの感染性腸内細菌が、ガンの進行をもたらす、腸管細胞の遺伝子の変異を誘導する能力を有することを、示唆しています。腸管のこれらの細菌を抑制することは、長期間、腸管細胞に集まり、がんの成長をもたらす遺伝子変異からヒトを守ってくれる可能性があります。このことは、結腸がんの培養器として、腸管内の微細環境を調べる新しい方法であり、どの細菌のタイプと種がヒト大腸に生息して、感染の可能性があるか、によって決まります。更なる追試により、この仮説の真実性を望みます。

これらの研究から、腸内環境をベストに保つことが、大腸ガンの発症の防止に重要で、野菜や果物、発酵食品、それに豆、イモ類などが推奨され、獣肉・動物性脂肪の摂取制限が叫ばれています。

Reference

Bacterial gut biome may guide colon cancer progression : ScienceDaily. April 4,2014

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