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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 628 週間リポート・大洋ホエールズ

2020年03月25日 | 1976 年 



大洋丸、到着寸前でアッと沈没
2試合連続で土壇場の逆転負けに秋山船長カッカ
シーズン130試合の内には9回二死から逆転負けを喰らうこともあるが、そう滅多にあるものではない。それが同じチームが連夜に渡って憂き目に遭ったらたまったものではないだろう。それが現実に起こった。4月10日、川崎球場での対中日戦は大洋が中日先発の三沢投手以下5人の投手をシピン選手の2ラン、長崎選手のソロなどで圧倒し7回終了時で7対3とリードしていた。ところが大洋先発の奥江投手をリリーフした平松投手が8回表に高木選手のソロに続き井上選手に投手強襲安打、マーチン選手に2ランを打たれて3失点の1点差となり、たちまち楽勝ムードが怪しくなってきた。

だが9回表は平松も立ち直り、代打・末永選手を三振。ローン選手を捕ゴロに打ち取り二死となり勝利は目前だった。8回表に本塁打を打たれた高木に中堅前に安打されたが続く谷沢選手は二ゴロ。試合終了と思った直後、二塁手のシピンが見事なトンネルで一・三塁と一転して同点のピンチに。ここで平松は踏ん張れず井上に左前に運ばれ同点となり一・二塁とピンチは続く。マーチンの打席で辻捕手が立て続けに捕逸し二塁走者の谷沢が生還し逆転。マーチンは四球で尚も一・三塁で島谷選手、梅田選手が連打し、この回4失点で7対10で逆転負けした。「抑えてくれる思った平松が打たれて続いてミスを連発じゃ勝てんわな」と秋山監督は怒りをグッと押し殺した。

しかし悲劇は翌10日も続く。試合は渡辺投手が踏ん張り8回まで2対1とリード。9回表も安打と四球で一死一・二塁の場面で谷木選手は遊飛で二死。続く高木は平凡な遊ゴロ。ところが名手・山下選手の二塁送球がまさかの野選となり試合終了の筈が二死満塁の大ピンチに。ここで谷沢に右前2点打。続く新宅選手には投手強襲安打で更に1失点。代わった宮本投手がマーチン、梅田に長短打され計6失点で万事休す。「やった、やった」と大騒ぎの中日ベンチに対して大洋ベンチ内はお通夜状態。9回裏の攻撃もあっさり終了して悪夢の連続逆転負けに選手達は茫然自失。

ロッカールームは火の気が消えた静けさで誰一人として喋らない。やはり一番ショックを受けたのは秋山監督だ。今年は勝負の年としてキャンプ・オープン戦から昨年までとは比べようもないくらい厳しい姿勢で選手に接してきた。そうした動きが徐々にだが実を結びつつあった。開幕して5試合を3勝2敗と勝ち越し、負けた2試合の内容も昨年までの無様な負け方ではなかった。今年の大洋は違うと周囲が思い始めた矢先の今回の連敗である。「私が弱気になっちゃいかんのだが、それにしても参った」と秋山監督は苦笑しながらも「また明日からやり直しだ」と前向きだ。やはり今年の大洋は一味違う。



オレの女房は大学3年生です
平松が独身に終止符。大上洋子さんと結婚
球界のプリンスと呼ばれている平松投手がとうとう独身生活に終止符を打った。11月23日にかねてから婚約中の大上洋子さん(20歳・フェリス女学院3年)と東京・芝の高輪カトリック教会で挙式した。品川パシフィックホテルでの披露宴には横田球団社長、別当監督をはじめ大洋ナインら多くの球界関係者や、歌手・橋幸夫さんら著名人も参列した。「最下位脱出の為またエースとしても是非とも20勝を」という言葉が祝辞として寄せられたが、これも最近の平松の成績から見れば致し方ない。

高さ10㍍・150万円という豪華なウェディングケーキにナイフを入れた後に11月20日に出来上がったばかりの大洋球団歌を選手らが高らかに唄って会場を大いに盛り上げた。平松は翌24日から12月1日までハワイへ新婚旅行。「子供は2人か3人欲しいね。もちろん亭主関白だよ(平松)」「学業と主婦を両立させ幸せな家庭を作りたい。体調管理の面でもバランスの良い食事を心がけていきたい(洋子夫人)」と2人。来季はガラスのエースを返上して家庭だけでなくチームの関白になってもらいたい。

幸せいっぱいのムードが漂う披露宴会場で一人浮かぬ表情だったのが横田球団社長。クラウンライターライオンズとの交換トレードでライオンズへ移籍する山下律投手へのトレード通達を披露宴翌日の24日に控えていたのだが、一昨年に山下が結婚した時の仲人が横田社長だった。「いくら仕事とはいえ仲人をした選手にトレードを伝えるのは嫌なもんだねぇ。もう二度と選手の仲人はしたくないね」と。日頃からチームの勝敗に共に一喜一憂する選手にトレードを通達したり解雇を宣告したり、社長さんの気苦労は多い。



投げて投げて投げまくります
ドラフト1位の斉藤(大商大)たくましく入団
11月19日、ドラフト会議が開始される午前11時を前に会場の外では球団職員が慌てていた。というのもクジを引く役目の横田球団社長が一向に現れないのだ。開始10分前に悠然と姿を見せた横田社長は「慌てたってしょうがない。早く来たら良い番号を引けるわけでもないし。今年は最下位だから、せめてドラフトは良い結果になるよう祈っている」と。結果は六番目。前日のスカウト会議では何が何でもサッシー(酒井投手)あるのみ!だったが酒井は一番クジを引いたヤクルトが指名し獲得ならず。大洋の1位指名は大学ナンバーワン右腕の斉藤明雄投手(大商大)だった。斉藤は「希望はセ・リーグ」と明言しており入団に支障はない。

12月1日、平山スカウト部長が大阪を訪れ契約金2600万円・年俸240万円を提示したが斉藤は「僕が考えていた額より少ない」と合意には至らなかった。一週間後の7日、今度は横田社長が自ら大洋漁業大阪支社に足を運び斉藤本人、両親、村上監督(大商大)と会って契約金3000万円・年俸240万円を提示すると今度はすんなり合意し入団が内定した。ちょうどこの日のスポーツ紙にはヤクルトが指名した酒井投手が契約金3000万円でも合意に至らずヤクルト球団の苦悩が記事になっていただけに大洋側も「果たして斉藤君が納得してくれるか不安です」と平山部長は心配顔だったが杞憂に終わった。

入団内定に大喜びの横田社長は「斉藤君の通算1.64 の素晴らしい防御率は何とも心強い。ウチは投手力が弱いのでこんなに嬉しいことはない。来年は巨人の王君、張本君、阪神の田淵君らを向こうに回して大いに投げまくって欲しい」と大絶賛。大学ナンバーワン右腕と期待される斉藤は最初の条件提示の時に「プライド料としてもう少し…」と粘った甲斐があったわけだが「大洋に骨を埋めるつもりで肩が上がらんようになるまで投げて投げて投げまくります」と期待する方、される方の両方がニコニコ顔の一日だった。何はともあれ今から開幕が待ちどうしい。

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