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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 734 週間リポート・ヤクルトスワローズ

2022年04月06日 | 1977 年 



甘いぞ!これでいいのか!
広岡監督の交代命令に怒ったマニエル選手が5万人の大観衆の前で大暴れした。4月17日の巨人戦(後楽園)の3回裏、西本選手が打った平凡な飛球を右翼手のマニエルは一旦前進した後に慌ててバックしようとした時に足を滑らせ転倒して捕球できなかった。この拙守にマウンド上の会田投手はガックリとうな垂れた。即座に広岡監督はマニエルを引っ込め福富選手と交代させた。すごすごとベンチに戻るマニエル。ここまではよくある光景であったが、試合が再開された直後にマニエルが三塁側ベンチから飛び出して広岡監督に向かって何やら大声で喚き散らした。帽子をグラウンドに叩きつけたりベンチ前の防護網を両手で激しく揺さぶった。

ちょうど攻撃している巨人のチャンスだったので観衆の目は打席の柴田選手に向けられていたが異変に気づいた観衆は何が起きたのかとざわめきだした。自分の拙守を棚に上げて選手交代に反抗した態度は外人選手の横暴と多くの観衆の目には映ったであろう。ロッカールームに戻ったマニエルは流石にマズイと思ったのか「言い訳はしない。オレのミスだ」と自分の拙守を認めてションボリ。だが騒動は沈静化しなかった。大観衆の前で醜態を晒したマニエルだけでなく広岡監督も赤っ恥じをかかされた格好になった。「あのプレーだけでなく、その前にも二度サインを見落としたり拙走もあった。(通訳の)ルイジに注意するよう伝えたらあんな態度をとった」と広岡監督。

途中交代へのあからさまな抗議。闘志の捌け口をとんだところで発散したわけだが、侮辱的行為に処罰をしなかった首脳陣の弱腰にも批判の声が上がっている。ネット裏の評論家諸氏は「外人はイニングの途中で交代させるとプライドを傷つけられたとして反発する。だが拙守でチームにダメージを与えたなら交代は当たり前。マニエルに処分を下さないと他の選手に示しがつかない」と口を揃える。試合に勝つには外人選手の力が必要だ。さりとて信賞必罰もそこそこではいつまで経ってもニッポン球界は甘いとナメられ続けられてしまう。ガイジン対策を改めて考えさせられた問題提起であった。


待望の初勝利に笑顔なし
嬉しさも中位なり。念願のプロ初勝利を手にした梶間投手だったが「恥ずかしい、恥ずかしい」を連発した。4月27日の中日戦(ナゴヤ球場)、同点の5回裏一死満塁のピンチに先発した会田投手をリリーフした梶間。デービス選手に右前適時打され2点を奪われ勝ち越された。中日は6回表からリリーフエースの鈴木孝投手を投入。どう見ても負けパターンだったが8回表に打線が爆発して逆転勝利した。8回表の攻撃も梶間の代打・船田選手の安打が口火とあって梶間は逆転劇に関わっておらず「初勝利おめでとう」とナインから握手攻めにあっても半信半疑の梶間だった。

「先発でも救援でも納得のいく投球をして初勝利なら嬉しいんですけどね。実質は敗戦投手ですから…」と梶間はギョロリとした大きな目も伏し目がちにボソボソと話す。松岡投手、会田投手と並ぶ7試合に登板し、新人ながら開幕から先発ローテーションに入っているだけにスカッとした勝利を狙っていた梶間は「おいルーキー、贅沢はよそうぜ」と背中を叩かれると「そうですよね。1勝は1勝ですもんね」とやっと納得した。名古屋市内の宿舎で休んでいる所にフジテレビの『プロ野球ニュース』の佐々木信也キャスターから電話取材があったが声は弾まず淡々と答えるのみで拾いモノの1勝に破顔一笑とはいかなかった。

持ち前の変幻自在の投球と違い頑なに自分の理想を追求する性格が梶間の真骨頂だ。「ピンチでも顔色一つ変えない。やはり都市対抗野球の優勝投手だけのことはある」と女房役の大矢選手は改めて驚いている。シーズン前から右を向いても酒井、左を向いてもサッシーと日の当たらない梶間の影は薄いが、安田投手の調子が上がらない現状では左のエース的存在だ。報道陣から「サッシーよ、お先に失礼って感じかい?」と意地悪な質問をされても「彼の素質は相当なものです。僕なんか足元にも及ばない」と大人の対応で軽く受け流す。そうは言いながらも " 実力では負けないゾ " の気概がアリアリだ。


あぁ、3600万円が泣いている
ロジャー、マニエルの両外人はいよいよもって箸にも棒にも掛からなくなってきたようだ。シーズン途中に来日した非力なリンド選手(巨人)ですら既に2本塁打しているのに、ヤクルトの助っ人2人合わせて2本塁打とは情けない限り。ロジャーに至っては本塁打ゼロ・打率も開幕から終始1割台。2人揃って打てない・走れない・守れないの3拍子ときてはチーム内の雰囲気もシラけるだけだ。で、広岡監督が2人をスタメンから外すと今度は不平タラタラである。「代打じゃ力の出しようがない」と直訴したマニエルをそんなに言うならとスタメンで起用したが結果を出したのは5月2日の巨人戦だけという体たらく。

逆に今まで控えに回っていた山下選手、福富選手らにとってはチャンス到来である。巨人戦で代打3ランを放ち勝利に貢献した山下は早速マニエルの代理で五番に座る。福富はロジャーに代わりトップバッターとして打ちまくっている。が反面2人合わせて12万ドル(約3600万円)を払っている球団にとってこれほど勿体ない話はない。なるほど試合前のフリー打撃では王や張本も真っ青の豪快な打球を飛ばす2人。「あの打球を見せられると使いたくなる。まぁ観兵式とは分かっているんだけどね」と広岡監督が一縷の望みを託して起用しても結果は同じ。今季限りで解雇かトレードか、にわかにキナ臭さが漂い始めた。

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