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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#240 監督交代・プロローグ

2012年10月17日 | 1981 年 


毎年この時期は日本シリーズの取材で在野の解説者たちが一同に顔を揃える為、ストーブリーグが本格的に始まる事になる。第3戦の開始前、阪神を退団したばかりの中西太氏が義父にあたる日ハム・三原代表と共に正面ゲートをくぐった。ヤクルト・大洋・西武などが監督や打撃コーチにと声をかけていると報じられている為、グラウンドに姿を見せるやいなや報道陣に囲まれると早々にベンチ裏へ避難した。そこで出くわした鈴木セ・リーグ会長に「お前みたいな有能なヤツは遊んでちゃダメだぞ。少しでも球界に恩返ししないとな」とハッパをかけられてタジタジ。さらにその場にテレビ朝日の解説で来ていた西本幸雄氏に「もう進路は決まっているんだろ、俺にだけ教えろ」と詰め寄られると、ほうほうの体で逃げ出した。

中西氏に負けないくらい「時の人」だったのが前ロッテの張本勲氏だ。山内監督の突然の辞意発言で一躍、後任監督として急浮上してきた。山内監督が重光オーナーや球団社長の慰留を振り切って退団するようなら次期監督の第一候補と噂されている。もしも山内監督が辞意を翻意したとしても助監督ないし打撃コーチでの入閣が確実視されている。監督人事ばかりではない。「日本シリーズで各球団の代表が集まりますからトレードの話もしますよ」と言っていた南海・塩見代表は中日・鈴木代表を見つけるとすかさず「藤波を金銭で譲ってもらえませんか?大島を放出する用意があるようですが、どのクラスの見返りなら…」と早速にヒソヒソ話。一方、話を持ちかけられた中日・鈴木代表が近鉄・山崎代表に「羽田か栗橋のどちらかを何とか貰えませんか?できれば村田も。ウチは左腕不足なもんで・・」 と今度は逆に申し込む側に。交換要員には大島や三沢が用意されているそうで、一気に大型トレードに発展か!?と報道陣は色めき立った。

長嶋監督までの繋ぎで大洋の監督に就任するのではと言われている青田昇氏は「出て行くとマスコミがうるさい」と解説が無い日は巨人のOBルームに籠もりテレビで観戦。野村克也氏も一時は大洋やロッテの後任候補として名前があがったが、本人は執筆や講演会で既に来年のスケジュールはびっしり埋っていて「この1年ネット裏から野球を見る事で勉強になった。解説者の仕事は私の性分に合っているようだし、もう暫くこの生活を続けたい」と現場復帰を否定した。今一番の注目が大洋OBの秋山登氏だ。長嶋監督までの短命内閣だけに常識的には引き受けないだろういう見方が大勢だが秋山氏と中部社長との仲を知る人は「全く無い話ではない」と見ている。秋山氏本人も「藤次郎社長とは現役時代によく銀座で飲み歩いた間柄だったし頼まれたら無碍には断れないだろうな。いちOBとしても大洋の事は気になるしねぇ…」と全面否定はしていない。

現実的には可能性が低いと言われている「大洋・長嶋監督」に大洋漁業本社・中部藤次郎社長が今なお諦めずに動いていられるのも最後は秋山氏に泣きつけば何とかなるという保険があるからだと言われている。巨人打線が爆発して大勝した第4戦のテレビ中継が終わりチャンネルを変えると「いわゆるですね…」とカン高い独特の声がテレビから聴こえてきた。声の主は大リーグのワールドシリーズ中継の解説をする長嶋氏だった。ストーブリーグの超目玉は日本の喧騒をよそにヤンキースとドジャースの熱戦にノリノリだった。

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