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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 419 大学生ルーキーカルテット

2016年03月23日 | 1984 年 



今年プロ入りした大学出のルーキーでビッグ4と言えば高野(ヤクルト)、銚子(大洋)、白井(日ハム)、そして小早川(広島)だ。この中でド派手なデビューを飾ったのが小早川。2月25日の中日とのオープン戦で1本塁打を含む4安打・5打点の活躍を見せた。今回はポスト衣笠として期待される小早川を中心に4人の現状を伝える。

オープン戦とはいえプロ初打席で初アーチを含む4安打と衝撃のデビュー、翌日の試合でも安打し懸念の三塁の守りも無難にこなして首脳陣の評価もウナギ登り。今季一軍定着を目論む期待の中日・平沼投手のカウント1-3からのカーブを捉えた。しかし本人は「打ったのはストレート。浩二さん(山本)に『おめでとう』と言われた時は嬉しかった」と球種を勘違いするほど興奮していた。山本浩は大学の先輩であるだけでなく同じ広島出身でもあって日頃から可愛いがられていて、スパイク磨きなど身の回りの世話係も兼ねている。「浩二さんからは色んな事を学ばせて貰っています。夜間練習の特打の時もアドバイスを頂いています」と今や師弟関係だ。

入団早々に「サードを守りたい」と宣言し1月中旬に始まった沖縄での自主トレから阿南コーチとマンツーマンで内野守備の特訓を行なった。阿南コーチと言えば嘗て一塁から三塁へコンバートを命じられた衣笠や外野から遊撃に変わった高橋慶の時も守備力向上の担当となっていて今回の小早川が3人目である。「やる事は沢山ある。打球に対する足の運び、グラブさばき、バックアップなど課題は山積み。一度に全て克服するのは到底ムリ。一つ一つ憶えるしかない(阿南コーチ)」と今は1日500本の猛ノックを浴びている。ただ三塁には衣笠がいて簡単に試合には出られず、このままでは宝の持ち腐れとなってしまう為に首脳陣は本職の右翼での兼用も検討しているが基本は三塁である。

正三塁手の衣笠も既にベテランの域にありこの先何年もプレーし続けられるものではない。ポスト衣笠&山本浩が広島の近々の懸念材料である。外野手の候補はいるが三塁手は見当たらなかった。昭和55年のドラフト会議で原(当時東海大)を指名したが抽選に外れてしまった。あれから3年余、ようやく候補が現れた。「打撃に関しては球を捉えるタイミングやバットスイングの鋭さはプロで2~3年やっているレベルにある。後はどうポジション争いに勝つか、だ」と古葉監督も認めており、一にも二にも守備力向上が課題なのである。「キャンプを1回こなしたからと言って直ぐに使える三塁手になれる筈がない。これからはオープン戦で慣れる事も大事だしシーズンが始まっても今以上の努力が必要」と阿南コーチは手厳しい。

「奴もなかなかヤルじゃないですか」と高野が小早川の活躍を耳にしたのは海の向こうのユマキャンプ。所属する大学もリーグも違うが投打の大学 No,1としてお互いの存在は意識し合っていた。4年生の明治神宮大会の準決勝戦で一度だけ対戦した事がある。第3打席までキッチリ抑えていたが9回の先頭打者として左中間に二塁打を許した。「内容まで憶えているんですからやっぱり気になる存在だったんですかね」と言うと二ヤリと笑う顔にはプロとしての余裕が感じられた。高野の評価は日に日に上がっている。早々とキャンプ中に武上監督から3月10日のオープン戦初戦となる日ハム戦の先発を命じられた。「今の所、他の人を気にする余裕は無いです」と言いながらも逸る気持ちを抑えている。

即戦力 No,1投手がベールを脱ぐのは学生時代に慣れ親しんだ神宮球場。「どこまで通用するのか不安の方が大きいですよ。やっぱりプロの打者は失投を見逃してくれませんから」速球に鋭いカーブ、それと味方相手では遠慮して使わなかったシュートも解禁するつもりでいる。「恐らくキャンプで見せていた投球より一段階ワイルドな高野を見せてくれるんじゃないかな」と武上監督はじめ首脳陣は今から大いに楽しみにしている。既に先発ローテーション入りは確定しているだけに今後は投球内容が問われる。「全て八重樫さんのサイン通りに投げます。小早川?エエ、彼とも銚子(大洋)とも早く対戦したいですね」と物怖じする事のない頼もしいルーキーである。

法政大学の同期で主将と副主将として小早川とクリーンアップを組んでいた銚子。ツーと言えばカー、の仲だがプロでは大洋と広島の敵同士に分かれた。「何やら大暴れしたみたいですね?早速テレビで活躍ぶりを見ました。先ず感じた事は小早川の打球はもっと鋭かったと思いました。例えば大学時代の彼が芯で捉えた三遊間を破る打球に野手は一歩も動けなかった。ただ今回の当たりは少し緩く見えましたね」と実感したそうだがそれは自らにも当てはまる。アマとプロの違いをまざまざと見せつけられているのだ。「プロの投手が投げる球威に押されてヘッドの抜けが遅くなって打球に力が伝わっていない」と自分でも感じているのだ。

大学野球とプロの世界では格段の差がある。大学王者の法大で主力打者を務めていたとしてもそこはルーキー。今後、投手の調整が仕上がってくれば今以上にスピードについて行くのが難しくなる。銚子もなかなか思うように左方向へ引っ張る打撃が出来ていない。本塁打こそ1本出たがまだまだフォーム固めの真っ最中である。 " 銚子シフト " なる外野手が一斉に右寄りに守備位置をずらすなど早くもプロの洗礼を浴びている。ともあれ敵味方に分かれてライバルとなる旧友だが「もう今は自分の事で精一杯で他人の事をあれこれ考える暇すらありません。だからお互い一度も連絡を取り合ってません。こっちはこっち、ゴーイングマイウエイです」と敢えて無関心を装う銚子であった。

日米大学選手権でのチームメイトだった小早川・銚子は東京六大学リーグのスター、首都大学リーグの星が高野、そして白井(日ハム)は東都大学リーグの即戦力 No,1野手としてそれぞれのチームに身を投じた。自主トレ・キャンプ序盤はかつてのチームメイト達の動向も多少は気になっていたという白井だがあっという間に学生気分は吹き飛んでしまった。アマとプロの違いをまざまざと見せつけられ自分の身体で実感したからだ。プロ入り前は自分の能力に少なからずプライドを持っていた。自信が無ければプロの世界にやって来る訳はないので当たり前の話であるが。しかしセールスポイントと自負していた守備と走塁でポカを連発する失態を演じてしまった。

「自分がこんなに野球が下手だったのかと思うとガッカリしました」と完全に自信を喪失した時期もあった。だがそこは駒大・太田監督が「総合力では石毛(西武)より上」のお墨付きを添えてプロへ送り出した逸材、1日1000本の打ち込み・600本の特守を14回受けると頭角を現し紅白戦で田中幸投手から初本塁打、その後も快音を響かせ13打数5安打・打率 .385 と打ちまくった。オープン戦では少々お疲れモードなのか打撃は3試合で8打数1安打・1四球・1三振と精彩を欠いているが守りは堅実さをアピールしていて先ずは首脳陣から合格点を貰った。「手も足も出ない訳ではない。まだ球種を絞れてないだけ。小早川の活躍?他人は他人、自分は自分です」と白井はユックリズムの腹づもりのようだ。

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2 コメント

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雑談 (th)
2016-03-23 23:06:16
いつもありがとうございます。
水曜日を楽しみにしていますよ。
尤も当方、現在の週べはもう購入していません。
この真弓明信が表紙の230円で販売されていた頃は、よく買いました。
それが今では、ついに選手名鑑号すら買わなくなりました。

現在世の中は文春の「スクープ」に大騒ぎをしていますが、よほどのインパクトがないと雑誌には手が届かないというこの頃になったのでしょうかね。
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赤痢 (カムバッカー)
2016-03-28 14:47:43
小早川、結局、期待ほどではなかったですね。

あ、でも、キャンプで赤痢にかかったこと、江川に引導を渡したこと、ヤクルトに移籍して、いきなり3連発なんてこともやっているんですね。

結構、自分の印象にあったんだな。
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