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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 730 週間リポート・読売ジャイアンツ

2022年03月09日 | 1977 年 



「ムフフ、まだまだです」と90番
毎日のように新記録を出しながら予定通りの快進撃。「スタートダッシュがポイント」と言っていた長嶋監督は笑顔を必死に抑えている。「4連勝?ムフフ、まだまだですよ。このままの勢いで突っ走りたいですね」と。4月6日の大洋戦を勝利して開幕4連勝は20年ぶりの快挙。開幕前に末次選手が練習中に打球を目に当てて負傷し、「五番・右翼手」がポッカリと空いたが代役の柳田選手が穴を埋めてお釣りがくる大活躍。末次が怪我をした打球を打ったのが柳田で「末次さんに申し訳なくて。家内とウチの両親が入院している末次さんの見舞いをしたら末次さんが『俺のことは気にせず頑張れと柳田に伝えてくれ』と言ってもらいホッとしました」と神妙な面持ちの柳田。

もともと信心深く神社仏閣の前を通ると手を合わせる柳田だが今では家の仏壇に手を合わせて末次の早期回復と自身が代役として恥ずかしくない務めが出来るように祈っている。この祈りが通じたのか柳田は大洋戦で満塁本塁打を放ち巨人の開幕4連勝に貢献した。巨人が開幕戦に勝利するのは5年ぶり。2戦目は2年ぶりの22安打。3戦目は相手の大洋と両軍合わせて22四死球はセ・リーグ新記録を更新するなど記録ラッシュの開幕シリーズとなった。過去四度の開幕4連勝した年はいずれも優勝している。果たして今季はどうなるか注目である。


" ライト病 " 復活に " 王勝負 "
ペナントレースが白熱の度を濃くしてきた4月下旬のエピソードを2つ紹介しよう。先ずはスポーツ紙に " ライト御乱心 " と見出しがついたビーンボール騒動。4月26日の巨人阪神戦(後楽園)でライト投手が中村選手にぶっつけた。2球続けてビーンボールまがいの球を投げて、2球目が中村のヘルメットをかすめた。阪神ベンチの抗議にライトは怒り狂って、あわやブリーデン選手や古沢投手らと乱闘寸前になった。長嶋監督らが慌てて制して事なきを得たが「おいフルサワ、文句が有るなら言いに来い。タクシー代はオレが出してやるぜ」とライトの怒りは収まらなかった。

ライトの言い分は「ベースボールにビーンボールは付き物だ。投手の伝家の宝刀といっていい。ただし決して致命傷となる所には投げず避けられる範囲に投げている。相手を怒らす為にやるのだから怒って向かって来るのが当然だ。そして相手が手を出したら応戦するだけだ。それがベースボールというものなんだよ」と。自分に抗議できるのは阪神投手陣から報復を受けるかもしれない味方である巨人の打者だけで新聞なんかに文句を言われる筋合いではないとも言っている。大リーグに詳しい専門家によるとライトの言い分が多くのアメリカ人の意見だそうだ。だからブリーデンや巨人のリンドら外人選手が日本人選手より熱くなっていたのも頷ける。

2つ目は " 張本敬遠、王勝負 " 。ライト騒動の翌日の試合でリードする阪神がピンチで張本選手を迎えると吉田監督は張本を敬遠して王選手との勝負を指示した。張本が巨人入りして王と「O・H」砲を組んで初めての出来事だった。吉田監督は「(投手の)谷村が張本には自信がないと言っていたし、カウントが0-2になったので敬遠のサインを出した。塁を埋めた方がアウトも取れやすいし、王はスランプ気味だったので王との勝負を選んだ。結果的に二塁打を打たれたが作戦としては間違っていないと思っている」と正当性を主張する。


へ~い、大トロ一丁あがり
新人の藤城投手に付けられたあだ名は「大トロ」。最初はトロだった。刺身のトロみたいに赤身ががってポチャっとした感覚が藤城みたいだと。藤城は赤ら顔でポッチャリした体型、おまけに投げるカーブがトロっと曲がる。違っているのは顔つきだけで、こちらは甘いマスクの二枚目ではなく苦み走ったいい男で時代劇の役者にピッタリのハンサム男だ。定坊こと定岡投手が若いレディキラーなら藤城は妖艶なマダムキラーといった感じだ。やがて新人離れした強心臓が買われて大物の " 大 " がついて大トロとなったのである。

悠々とした動作、時々怒られる反優等生ぶりが加味されて周りから大物扱いされるが首脳陣にしてみれば、いくらデカい口を叩いてもルーキーだ。だから初先発を言い渡す時は気を遣って5月9日の当日の練習中に「きょう先発だからな」と告げた。「あまり早く伝えて寝られなくなったら困るからね」と杉下投手コーチ。藤城も人の子で、実際これまで何度か先発の可能性があると告げられた夜は寝つきが悪かったが、この日は落ち着いて練習に集中できたそうだ。先発陣に疲れが見え始めて二軍から定岡が上がって来てライバルも増えたが、第4の先発投手の座はオレが頂くとばかり度胸満点の投球でヤクルト打線に対した。

ピンチは4回表にやって来た。一死一二塁で大杉選手に打たれて1失点。続くマニエル選手にボールカウント0-1となったところで長嶋監督がマウンドに駆け寄り「いいか4点くらい取られたって大丈夫。ウチの打線を信じろ。お前のトロ~としたカーブが有効だぞ」と声をかけた。この一言で気が楽になった藤城はマニエルにゆる~いカーブを投げて内野ゴロ併殺打に打ち取った。結局、7回 2/3 を投げて7試合目にしてプロ初勝利を飾った。この試合のヤクルトの先発は藤城と同じく新人でサッシーこと酒井投手。当代一の人気者相手に見事勝利した。まさにトロはトロでも極上の大トロだった。

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