ニャロメから消えた笑顔
あまりにも遅い2勝目だった。柳田投手は8月12日の南海戦に先発し、被安打3・奪三振10・失点1で見事完投勝ちを収めた。実に5月25日の日ハム戦以来の勝ち星だった。柳田投手は漫画の主人公・ニャロメに似ているひょうきん者だが勝てない間は口数が減り笑顔を見せることも少なくなった。ペナントレースが3分の2を過ぎようとしている時点で僅か1勝しかしていなかったのだ。昨シーズンは鈴木啓・太田幸と共にローテーションの中心を担ってきた柳田投手。それが今シーズンは故障もあり開幕から蚊帳の外だった。「もう俺には先発はめぐって来ない」と愚痴を口にする状態まで追い込まれた。
更なる飛躍を今シーズンにかけていた柳田投手は宿毛キャンプでも人一倍練習したが結果が出ない。意欲と現実が噛み合わず悶々とした日々を送っていたが考えてもいなかった先発を南海戦の前日に告げられた。「この試合で好投できなかったら今シーズンはお終い」と心に決めてマウンドに上がった。案ずるより産むが易しとはこの日の柳田投手のことだった。初回を連続三振でスタートを切ると柏原選手のソロホームランだけに抑えて完投勝利。大喜びかと思いきや柳田投手は「今までチームに迷惑をかけた。これからその分も返さなければ」と笑顔はなかった。西本監督も「柳田の復活は明るい材料」と巻き返しに手応えを感じている様子。
エースの貫禄15勝も喜ばぬ鈴木
パ・リーグのハーラーダービーを独走する鈴木啓投手が13日の日ハム戦にも勝って両リーグ15勝一番乗り。この調子を持続させれば昭和44年に記録した自己最多の24勝を上回りそうな勢いだ。しかしマウンドを降りた鈴木啓投手は「俺もひとがエエわ」と苦笑いした。8回に富田選手に四球を与えて今シーズン八度目となる無四球試合をフイにしたからだ。「15勝は勿論うれしいがチームが上位に行かないと面白くない。下位でウロチョロしてたらつまらん」と不満げ。ハーラートップにいてもチームを思うこの心はやはりエースだけのことはある。
ガソリンタンク
超ベテランの米田投手の最近の口癖は「早く一区切りつけたい」である。通算350勝にあと2勝で今シーズンを迎えたが、なかなか勝てず王手をかけた今シーズン初勝利をあげたのは8月10日の南海戦だった。既に金田正一氏の記録を破る通算945試合登板の新記録を達成してるだけに、一気に350勝もという気持ちが前述の口癖に現れたわけだ。開幕前に痛めた腰も完治し「ナンボでも投げまっせ」と意気込む。350勝を達成したら次は?との質問に「そう簡単に辞めんぞ。新たな目標を見つけて投げ続ける」と39歳にして " ガソリンタンク " の異名はまだまだ捨てそうにない。