面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「大阪のうさぎたち」

2012年07月19日 | 映画
謎の致死性伝染病によって、人類の90%が死滅してしまっていた。
しかし、日本の大阪では、人々が何事もないように普段通りの生活を送っている。
恋人を失い、大阪へとやってきた女(杉野希妃)は、韓国からやって来ていた男(ミン・ジュンホ)と出会った。
研究機関によると、明日の朝5時に人類は死に絶えるという。
その最期の時までを一緒に過ごすことに決めた二人は、ホテルの部屋で互いのことを語り合った。
すると男は、死を逃れることができる特効薬を持っているという…


2011年、「大阪アジアン映画祭」にゲストとして来阪したイム・テヒョン監督が、東日本大震災の翌日、大阪の各所を巡って即興的に撮影した異色SF作品。
ほとんど役者のアドリブに任せて作品を作りあげるイム監督は、今回も主演の二人には詳細をほとんど説明することなくシチュエーションだけを与え、自然な流れに乗った二人の演技を切り取っていったという。

明日の朝5時には死亡すると知らされ、絶望の中をホテルの一室で共に過ごす男女。
男は、もしひとり生き残っても生きてる意味が無い、という。
女は、なぜこんな目に遭うのか?なぜ死ななければいけないのか?と、理不尽な状況に憤る。

自分の周りの人々が次々に死んでいくという状況下で、その寂しさに耐えられないという精神面での弱さは致命的だ。
“大阪人”同士の会話を象徴するものと言われる「なんでやねん!?」というツッコミには、そんな精神面での弱さは持ち合わせていない。
そこに込められているのは、我が身に降りかかる理不尽な状況に対して「なんでやねん!?」とツッコむことでマイナスの要素を蹴散らし、絶望的な状況であってもそれを笑い飛ばしてしまおうとする旺盛な生命力である。

うさぎは、寂しいと死んでしまうという話がある。
それが本当なのかどうかは知らない。
人類が死滅していく中でも生き残っている人間がいて、とりわけ大阪では何事も無いように人々が平然と普段と変わらない暮らしを送っている。
「笑い」をベースにした、生命力の強さがにじみ出る会話を繰り広げる大阪の人々は、どんな状況でもしたたかに、そしてしなやかに生き続けることができるのだろう。

この街に生まれてこの街で生きてきたことに、ちょっとした優越感を感じつつ、面映ゆかったり…
しかし単純に、新梅田シティや南海なんば駅が出てくるのは嬉しい♪


大阪のうさぎたち
2011年/韓国=日本  監督:イム・テヒョン
出演:杉野希妃、ミン・ジュンホ、松永大司


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