面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「デスノート the Last name」

2006年11月06日 | 映画
さて、前編が予想以上に(!?)面白くてビックリした「デスノート」の後編にして完結編が、いよいよ11月3日より公開された。
先に記事でUPしたように、ツタヤオンライン特製前売券を購入し、満を持しての鑑賞。
結果は……good!
十二分に楽しめた 

死神リューク(声:中村獅堂)が気まぐれに地上に落とした“デスノート”を拾った、天才的な頭脳を持つ大学生・夜神月(やがみらいと・藤原達也)。
彼は警察庁刑事局長の父親(夜神総一郎・鹿賀丈史)譲りの強い正義感を持ち、現役大学生にして司法試験に合格し、父と同じく警察キャリアを目指していた。
この世の不正義を自ら正したい熱意に駆られる彼だったが、一方で理不尽な殺人事件や不正が横行し、処罰されない犯罪者や不正に胡坐をかいてのさばる輩が溢れる世の中に、法律の限界も感じていた。
デスノートに巡り合った彼は、これを使って凶悪犯を粛清し、自らの手で“理想の世界”を創りあげようと決意する。
次々に犯罪者が死亡し、巷では「救世主キラ」として、熱狂的な信者まで出始める。
そして一連の「キラ事件」を解明するためにICPO(インターポール)が送りこんできたもうひとりの天才・L。
神がかり的な推理力でキラの正体に迫ろうとするLに対し、知略を尽くし、非情に徹して捜査網から逃れる月。
ついに月は、Lとの直接対決を挑むべく、世間の同情と父親の地位を利用して、「キラ事件捜査本部」へと入り込む。
そして、月とLの窺い知れないところに、2冊目のノートが現れた。
2冊目のノートの所有者は、予告殺人を実行し、マスコミを利用してキラへの協力を宣言する。
どうやらその人物は、相手の顔を見ただけで殺せる能力があるようだ。
Lを倒すために月は、その人物への接触を試みる…

デスノートの最大の特徴は、そこに名前を書くだけで簡単に人が殺せること。
自らの手を汚すことなく、また人が死に行く凄惨な場面を見ることもなく、いともたやすく人が殺せるのだ。
まるで、テレビゲームで次々と敵を(それがモンスターではない人間のキャラクターであっても)何のためらいもなく殺すように。
そして、実際に「人を殺す」という、生命の尊厳を犯す重大な行為を、何のリスクも無く実行できるという状況は、必ず人の心を蝕む。

理想社会を築くという大儀のもと、凶悪犯を葬るために使っていたデスノート。
しかし月は、罪の無い人間を殺し始める。
自分の理想を実現するためにはやむをえないこととして。
徐々に人が死ぬと言うことに対してマヒが生じている。
それはもはや、普通の人間の感覚を無くしている証拠であり、心に異常を来しているとしか言いようがない。
絶対的権力者となった人間は、必ずしも絶対的正義ではあり続けられない。
人は、それほど強くはないのだ。
ましてや月は、まだ二十歳そこそこの学生であり、人生の機微、人間関係の酸いも甘いも、経験値は圧倒的に低い。
理想は独善に過ぎないことに気付かない。
ここにデスノート所有者としての危うさがある。

月は“自分の思い描く理想”を実現するために次々と人を殺す。
Lは“大勢の命を救う”ために、死刑囚の命を利用する。
どちらも、自分の正義に基づいた「必然」としての殺人であり、根は同じだ。
そして人の命の尊さに対する意識は希薄で、「死」と「悲」が結びつかない。
二人の対決は、多分にゲームを楽しむ子供同士のじゃれ合い的である。
そんな“キラ”と“L”の対決に対して、“父親”として対峙する夜神総一郎。
金子監督の、子供を持つ親の視点が織り込まれており、原作には無い視点である。
監督はその「親の視点」を総一郎に託し、クライマックスの場面を、人間味あるものに仕上げている。

人間の女の子・弥海砂(あまねみさ・戸田恵梨香)に恋してしまう死神・ジェラス。
また、海砂の寿命を延ばしてしまったがために灰となったジェラスの遺言を守るため、最後には自らも灰となってしまう死神・レム(声:池畑慎之介)。
新たに登場する二人の死神も、どことなく人間くさい。
そのため、前編では殺人をゲームとして楽しむような雰囲気があり、ドライな、ある種機械的な印象だったが、後編は一転して人間味が加味されていて、終盤へ向かうほどにウェットさが増していく。
そして、「死」は哀しいものだ、という当り前だが最近忘れ去られているようなことを、しっかりと印象付けて、観客を完結へと導く。
その一方で、死神が跋扈する不気味さも後味に残し、現代の危うさをも問いかけている。

ひたすら甘いものを食べ続けるLであるが、前編では洋菓子ばかりだったものが後編では和菓子だらけになっている、という違いや、Lが素顔を隠すために被るひょっとこの面のマヌケさ他のユーモア溢れる場面のチェックとともに、物語展開を通して様々なことを“感じ”て、この映画を楽しんでもらいたい。

デスノート the Last name
2006年/日本  監督:金子修介
出演:藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、片瀬那奈、鹿賀丈史、藤村俊二


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