面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

落語会in天満天神繁昌亭 by紫亭京太郎

2007年02月25日 | 落語
昨年9月の開場以来、ようやく繁昌亭へ行って来た。
夜席の6時半開演の直前に到着したのだが、既に1階席はほぼ満員。
舞台に近い席を探して、一番右端の席を見つけて座ってみたが、あまりにも角度が急過ぎた。
これならいっそ、2階席へ行こう!と連れを誘って席を立つと、後から入ってきたご婦人のグループが、自分達が立った席へすかさず座ってきた。

一旦入口を出て2階席への階段へ行くと通行止めに。
そばにいた桂文鹿師に声をかけると、
「すみません、1階席を埋めたいんで…」
とのことであったが、わずかの残席は角度が悪いうえに1席ずつしか空いていないため、連れとバラバラになってしまって興ざめであることを訴えると、その席の“主任”を務める桂三金師と相談し、2階席も開放された。

自分達が最初の客なので、いそいそ階段を上がって最前列ど真ん中付近を“占拠”したのだが、2階席からも舞台は近く、これは見やすい♪
実にイイ小屋である。
本当に落語を観ることを主眼に置いた設計になっているのだなと思いつつ、演者からもこれはやりやすいだろうな、と改めて感じ入った。
新宿の末広亭に負けない良い席ができたことは、本当に喜ばしい限りである。

開演まで少し時間がありそうだったので、ひとまず自分の提灯を確認した。
あったあった!
なんと、2階席の上の方へ上がれば手に取れる位置にぶら下がっている♪
写真に撮るのは後にして、まずは舞台に集中することにした。

【開口一番直前の舞台】

開口一番は桂吉弥師の「つる」。
師匠の故・吉朝師譲りの、丁寧でそつのない口演。
大師匠の米朝師にもつながる、実にオーソドックスな、キレイにまとまった高座で、安心して見ていられる。

続いては桂都んぼ師「向う付け」。
高座に上がったときの貼り付けたような笑顔で笑いが取れるのはオイシイ。
サル系の顔をくしゃっと潰した笑顔は見ただけで笑える。
吉弥師とは対照的なくらいに動的な口演で、アホのキャラはピッタリと“ニン”に合っていた。
仁鶴師が演じるアホを彷彿とさせる、愛すべきキャラに仕上がっていて楽しめる。

中トリは桂かい枝師の「堪忍袋」。
口演が始まってしばらくはネタが何か見極められず、「天災」か?…いやいや「喧嘩の仲裁」か?
いや、違うような…と中盤を過ぎたあたりでようやく分かった。
堪忍袋が出てきたからである。
このネタ、てっきり鶴瓶のオリジナルかと思っていたのだ。
膨大なワタシの『落語ライブラリー』の中でも、今のところ鶴瓶師の口演しか持っていない。
実は他の演者で聞いたこともなかったからなのだが、調べてみると結構あちこちでかけられているネタであった。
非常に動的な中にも仕草のキレが良く、丁寧な演出でテンポ良く小気味よい高座である。

ここで中入り。
歌舞伎のような緞帳が下りてきた。
へぇ~、舞台が開く前後とは違うんやなぁ、と感心。


【「中入り」時の緞帳】

さてさて、再び自分の提灯を確認し、デジカメで写真をパチパチ♪
最近、どうもブレることが多いので、数枚撮っておく。
と、ここで違和感を覚えた。
ん?何かおかしいぞ??


【とくとご覧あれ…】

あ!じ、字が違うてるがな!!
(「ちごうてる」と大阪弁でお読みください)
これでは「しばてい・きょうたろう」である。
誰やねん、それ!?
「紫」と「柴」を書き間違えているのだ。
がび~ん。。
ショック…
連れは「『縛ってぇ、京太郎~』やな!」と大笑い。
「縛ってチョウさん、このカラダ」という言い回しが大学時代に流行ったが(そらウチのクラブの中だけか)、それを彷彿とさせる“大誤植”である。
帰りがけに誰かに言おうと、気を取り直して残り2席に集中した。

もたれは桂文鹿師の「動物園」。
なのだが、スゴイ演出でビックリした!
移動動物園で動物の毛皮を着てなりすますという“バイト”に就く主人公は、本来は虎になるのだが、なんとゴリラになるという設定。
最後には、本物のデカいゴリラと対決させられるという、ぶっ飛びの展開。
…どんなオチやったか、忘れてしもたがな!?
セリフまわしも仕草も雑なところが目につき、演出と合わせて、どっかの落研で「この人の落語は面白いで!」と評判をとってる学生の高座を観ているような気分。
落研の観客を意識してるのか?とさえ思ってしまった。

さて、大トリは桂三金師の「ちしゃ医者」。
マクラで「トリに相応しいネタです」というフリがあったので、何を演るのかと思ったら、ウ○コネタて(苦笑)
コロコロした見ためと明るくも丁寧な語り口によるキャラクターの効果で、話の汚さが緩和される。
とは言え、ほんまに汚い話やでなぁ…これが大トリかいな。

2階席最前列に陣取り、存分に堪能した初めての繁昌亭。
満足満足♪
本当にイイ小屋ができたものである。
自分もあの舞台に立ちたい…いや座りたいものであるが、上方の落語家にとっての“聖地”であり、噺家達の間には、素人が上がることには抵抗があることは耳にしている。
夢果たせず亡くなった六代目松鶴をはじめとして、一時は滅んだとさえ言われた上方落語を今日の隆盛まで築いてきた先達と現役噺家達の悲願が成就した、たくさんの思いが込められた高座である。
素人に好きなように使われるのには抵抗もあるだろうことは想像に難くない。
しかし、この小屋を本当の意味での「上方落語の聖地」と位置付けるのであれば、在野の“天狗連”にも高座を開放することこそ、上方落語発展の礎を磐石のものとする最善の策であると愚考する次第である。

さて帰りがけ、アンケート用紙を提出しながら入口にいた受付の女性に声をかけた。
「あのぅ…個人名の提灯、吊ってもろうてるんですけど、字が違うてますねん。」
「え!?ホンマですか!」
ビックリして目をむく女性。
横で聞いていた桂都んぼ師、
「なんちゅうことや!そら取り替えなアカンがな!」
と、高座での“サル笑顔”が嘘のような怒り心頭の表情になったのだが、その顔もなんか可笑しい。。

提灯を設置したのは、いわゆる開設準備室事務局なので、そっちへ連絡してほしいということで、連絡先の電話番号を教えてくれた。
(後日電話したのだが、なぜか誰も出てくれない…)

会場を出ようとしたそのとき、入口に千社札の印刷機を発見した!
300円で自分の千社札シールが作れる優れもの。
閉館間際の慌しい時間も顧みず、さっそく作ってみた。
デザインを選ぶのに意外と時間がかかるのだが、これは手ごろで楽しい♪
あちこちで配る予定なので、どこかで見かけますれば、ぜひ本ブログまでご一報を!

大阪待望の上方落語定席。
落語を観るには絶好の場所であり、落語好きにとっての極楽である。
末永く栄えんことを祈って、皆さんもぜひ足をお運びくださいますよう、上方落語協会に成り代わりまして(!?)、お願い申しあげる次第。



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