面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「パイレーツ・ロック」

2009年10月23日 | 映画
ビートルズやローリング・ストーンズがヒットチャートを賑せていた1960年代のイギリス。
彼らの他にも、後に伝説となるようなスター達が綺羅星の如く居並んでいたこの時代、イギリスの国民がラジオを通して彼らの音楽を聴くことができるのは、なんと一日に45分だけだった!

…正式には。

その当時、イギリスのポップ・ミュージックファンのニーズに応えていたのは、北海の波間に漂う船に開設された、海賊船ならぬ「海賊ラジオ局」だったのだ!
海岸から3マイル(約5キロ)離れればイギリスの法律が適用されないことを利用したこの“ゲリラ放送局”は、イギリス国民から圧倒的な支持を受け、人口の半分以上におよぶ2500万人ものリスナーが耳を傾け、音楽に夢中になっていた。

そんな北海に浮かぶ海賊ラジオ局「RADIO ROCK」にやってきたカール(トム・スターリッジ)。
ドラッグと喫煙で高校を退学になった彼は、母親から更生のためにと、名付け親であり母の旧友であるラジオ局のオーナー・クエンティン(ビル・ナイ)に、身柄を預けられたのだ。
しかし、カールが送り込まれた海賊船は、世間一般的な「更生」とはかけ離れた別世界。
正に享楽の極致にあるパラダイスだった!

ロックと自由を愛するアメリカ人でナンバー1DJのザ・カウント(フィリップ・シーモア・ホフマン)、皮肉屋ながら面倒見のいいデイヴ(ニック・フロスト)、とにかく人がいいサイモン(クリス・オダウド)、寡黙がトレードマークの美男子マーク(トム・ウィズダム)、深夜の時間帯に番組を持ち、普段は部屋にこもりきりで滅多に姿を見せないヒッピー風のボブ(ラルフ・ブラウン)、毎時ジャストにニュースを読むジョン(ウィル・アダムスデール)、発言から行動まで全てに皆の癇に障るアンガス(リス・ダービー)。
個性豊かなDJ達との船上生活は毎日が刺激的。
放送禁止用語を史上初めて電波に乗せようとしたり、本土から女の子達を呼び寄せて乱痴気騒ぎに興じたり、ノリノリでイケイケな連中に囲まれ、瞬く間にカールは皆に溶け込んでいった。

その頃、政府はこの“治外法権”にある海賊ラジオ局を疎んじていた。
放送を取り仕切る大臣のドルマンディ(ケネス・ブラナー)は、風紀を乱すものとして彼らを苦々しく思っていた。
何よりも国民が「RADIO ROCK」に夢中になっているのが気に食わない。
スポンサーの規制に走るも、クエンティンの策略により効果が得られなかったドルマンディは、電波が海難信号を妨害するとして、海賊ラジオ局を違法なものとする「海洋犯罪法」の制定に動く…

イギリスのラジオ放送が、国営のBBCだけだったこの時代。
力の強いミュージシャンの組合が、「レコードをかけることでミュージシャンの仕事が減る」という理由でBBCに圧力をかけ、レコード演奏の時間を規制していた。
そのため、1日に45分しかヒットレコードをかける時間がないBBCに対して、規制に縛られることなくロックを流し続ける海賊ラジオ局は、若者に圧倒的な支持を受けていたのである。

ローリング・ストーンズ、キンクス、ザ・フー、ヤードバーズらの名曲が全編を飾り、見ているだけでも踊り出しそうなほどテンションが上がる♪
コアなロックファンには堪えられない本作だが、音楽を知らなくてもコメディとして存分に楽しめる作品に仕上がっていて、見応えは十分!

音楽番組のDJを目指す皆さんは必見。
音楽を愛し、また愛する音楽を、同じく音楽を愛する人々に届けたいと戦うDJ達の姿に、胸を熱くせずにはいられない秀作。


パイレーツ・ロック
2009年10月24日公開/イギリス  監督・脚本:リチャード・カーティス
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、ビル・ナイ、リス・エヴァンス、ニック・フロスト、ケネス・ブラナー、トム・スターリッジ、クリス・オダウド、トム・ウィズダム、ラルフ・ブラウン、ウィル・アダムスデール、リス・ダービー


最新の画像もっと見る

コメントを投稿