面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「野蛮なやつら/SAVAGES」

2013年03月17日 | 映画
心優しい平和主義の植物学者ベン(アーロン・テイラー・ジョンソン)と世界の戦場を渡り歩いてきた元傭兵のチョン(テイラー・キッチュ)は出会ってから長い付き合いになる。
性格も経歴もまるで正反対のようなキャラクターの二人は“高レベル”の大親友で、チョンが戦場から持ち帰った極上の大麻を、ベンが植物学者としての知識をフルに活かして栽培し、超高品質の大麻を作りだすことに成功。
大麻のベンチャービジネスを興して、莫大な富を得た。
彼らはカリフォルニアの高級リゾートであるラグーナ・ビーチで、とびきり美人の“共通の恋人”オフィーリア(ブレイク・ライヴリー)と共に、3人で穏やかに、愛に溢れた自由な暮らしを満喫していた。

そんな彼らのもとに、メキシコ最大の麻薬組織であるバ
ハ・カルテルから、ビジネスパートナーの誘いが来る。
巨大なマフィア組織であるバハ・カルテルとの提携は、その傘下として支配されることを意味するのは明らか。
ベンとチョンは提携話を断ると、これまで稼いできた資金を手に、オフィーリアと3人での国外逃亡を図った。
しかしバハカルテルは二人を服従させるべく、オフィーリアを誘拐してしまう。

最愛の恋人を人質にとられ、怒りに震える二人。
メキシコからカリフォルニアへと連なる麻薬地帯を舞台に、持てる頭脳と戦闘能力をフル回転させ、彼らは巨大麻薬組織に戦いを挑んだ…!


「プラトーン」「7月4日に生まれて」でアカデミー監督賞を受賞した、社会派としての印象が強いオリバー・ストーン監督の最新作は、大麻ビジネスという反社会的な世界の物語。
「JFK」や「ニクソン」も含めて、政治的なメッセージを発信し続ける超硬派なイメージからすれば真逆のように思われる向きもあるだろうが、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」や「Uターン」といったバイオレンス映画も手掛ける彼にしてみれば、今回はふんだんにバイオレンスを描き、エロチックを織り込んでスピーディーな展開でイッキに見せる娯楽活劇の方に取り組んだだけのことだろう。
しかし、アメリカのワシントン州やコロラド州で、大麻が嗜好品として合法化されるタイミングでの本作の公開は、ある意味「社会派」としての面目躍如と言えるかもしれない。
また、医療関係においては薬品としての大麻の取引が合法的になされていることも初めて知った。
彼らが作る高品質な大麻は、医療の世界では「優れた医薬品」といえるやもしれず、大麻ビジネスの実態を垣間見て興味深かった。


とはいえ、反社会的なビジネスによって莫大な富を得たベンとチョン。
真っ当に生きられるはずはなく、“悪”の存在として必ず滅びるもの…と勝手に決めつけて観ていると、度肝を抜かれることになる。
ラストの大どんでん返しは、昔懐かしい「8時だよ!全員集合」におけるドリフターズのコントを観ているよう。
麻薬捜査官でありながら、麻薬組織と“ヨロシク”やっている悪徳捜査官デニスにジョン・トラボルタ、バハ・カルテルの幹部でボスの参謀として付き従っているものの、常に腹に一物持っているようで油断ならないラドにベニチオ・デル・トロを配しているのも非常に効果的。
中でもジョン・トラボルタほど、“明るく調子のイイ悪徳警官”という役がハマる俳優はいない!
彼の地ではないかとさえ思えるデニスの“明るい悪人”キャラと、ラドの“究極の腹黒男”キャラがラストシーンで炸裂する様子は秀逸♪
誰も彼も皆、登場人物全てが野蛮なキャラクターとして縦横無尽に暴れまわる様は爽快でさえある。
深い母性愛を見せるバハ・カルテルの女ボスであるエレナ(サルマ・ハエック)が、一番真っ当な善人に見えてくるから愉快だ。


自身も麻薬不法所持で二度の逮捕歴があるオリバー・ストーン監督にとっては、大麻ビジネスの物語は“お手のもの”だったかもしれない。
社会派のテイストを漂わせながら、野蛮なやつらの戦いをアップテンポに描く、痛快バイオレンス娯楽活劇!

「おいおい!そんなことでイイのか!?」と声をあげそうになる、我々の良心を揺さぶるラストシーンは、しかし映画終了後に後味を悪くしない。
まあ、こんな映画を作ったオリバー・ストーンが一番野蛮だ、ということで…


野蛮なやつら/SAVAGES
2012年/アメリカ  監督:オリバー・ストーン
出演 テイラー・キッチュ、アーロン・テイラー・ジョンソン、ブレイク・ライブリー、ジョン・トラボルタ、サルマ・ハエック、ベニチオ・デル・トロ


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