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面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「受難」

2014年02月11日 | 映画
修道院で育った天涯孤独のフランチェス子(岩佐真悠子)。
“汚れなき乙女”である彼女は大きな疑問を抱いていた。
「なぜ男女は付き合うのか」
「どうして男女はSEXするのか」
社会に出ても、風俗嬢になっても、その疑問は晴れず。

知り合いにSEXを頼んでも拒まれるフランチェス子は、食堂で働きながら客に尋ねる。
「私と目があったとき、『やりたい』と思われましたか?」
しかしどの客も反応はそっけない。
「いえ、全然。」

満たされない思いを抱えたまま、無駄に広い家を借りて住んでいたある日。
突然どこからともなく彼女を罵倒する声が響いた。
「身の程知らずのダメ女!」
声のする方をたどっていくと、なんとそこはフランチェス子の股の間!
自分の女性器に人間の顔、「人面瘡」ができているではないか!?
それもオッサンの。

「お前が男から相手にされることなどない!」
「お前は女として無価値だ!」
口汚くフランチェス子を罵倒する人面瘡だが、彼女は「そうかもしれない」と素直に受け入れる。
そして人面瘡に「古賀さん」と名前を付け、不思議な共同生活が始まった…


フランチェス子は、何となく人の役に立ちたいという思いを抱いていてい、勝手に海岸でゴミを拾い集めている。
ゴミ拾いの合い間に偶然強姦魔を退治したりするが、一向に心は満たされない。
そんなある時、自宅に遊びに来た友人からヒントを得て、男女の密会のために空き部屋を提供することに。
男女のためにキレイに調度を整え、快適な空間を準備して評判は上々。
そんな様子も、日々“古賀さん”に罵倒されながら、スケジュール管理に追われていたある日。
一番、フランチェス子を頼りにしているはずの友人から計略を仕掛けられ、あろうことか処女を失ってしまう。

しかしフランチェス子は怒るでも悲しむでもない。
それは“初めての相手”となった男が好意を抱いていた相手だったからなのか、それとも計略にかけたとはいえ一番親しい友人の役に立てたからか。
とはいえ大きなショックを受けたフランチェス子は、シャワーを浴びている間に男を帰らせる。
しかし男が去っていった後を追うように、衝動的に素っ裸で街中へと駆け出す。
走っても走っても男の姿は見えなかったが、明らかに彼女の中で何かが変わっていた。

「たった一本のちんちんが入っただけなのにねー。」
なぜ男女はSEXするのか、抱き続けていた疑問は、もうどうでもよくなったか、それとも“答”がみつかったか。
それまでの、どこか空虚な目とは明らかに異なる、満たされたような生きた瞳の輝きが、フランチェス子の変化を表していた。
全裸の疾走シーンが話題となった岩佐真悠子だが、KYでありながらも繊細なフランチェス子の表情を見事に演じ分けていて素晴らしい。


男も女の間には、SEXが無くても分かりあえるものではあるが、SEXを起点として理解しあえるものもある。
それは、お互いが物理的に“ありのままの姿で触れあう”からだけでなく、物理的に“深くつながる”ことで、心の壁が取り払われることになるからだろう。
タートルネックにロングスカートと編みあげブーツという“完全武装”の閉じた姿から、素っ裸で外へと飛び出していったフランチェス子の姿は、正にそれを体現している。


受難
2013年/日本  監督・脚本:吉田良子
出演:岩佐真悠子、淵上泰史、伊藤久美子、古舘寛治


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