フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

丸山健二「田舎暮らしに殺されない法」

2009-12-03 | 濫読

安曇野に住む作家、丸山健二も嫌な本を書いたものである。この本は、よく言えば、田舎暮らしを始めようとしている人、あるいは現にしている人のチェック表であり、悪く言えば、いい加減な気持ちでは「止めよ」という脅かしの書でもある。

内容は、目次を読めば、ほとんど分かる
・ その前に「自立」しているかを問え
・ 確固たる「目的」を持て
・ 「自然が美しい」とは「生活環境が厳しい」と同義である
・ 年齢と体力を正確に把握せよ
・ 「田舎暮らし」を考えるなら、まず酒とタバコを止めろ
・ 「孤独」と闘う決意を持て
・ 「妄想」が消えてから「現実」は始まる
などなど

「あなたは一体全体田舎暮らしというところをどれくらいの深さまで見定めてから、どの程度の裏情報を得てから、あまりにも大胆で幼稚な決断にいたったんでしょうか」
「都市という空間は確かに過酷な現実のかたまりでしょうが、田舎も都会以上に厳しい現実のかたまりであって、断じて癒しの場というわけではありません。」
「鳥籠から解き放たれて自由の立場を得たとき生涯にわたって追い求め、徹底して打ち込める仕事や趣味を持っていて、即そうした日々へ移行できるようでなければ、これまで無駄で無意味な人生を送ってきたことになる。」

結論は、こうである。
「のんびりと、静かに暮らしたいというような抽象的な願望ではなく、絵を描くため、陶芸に打ち込みたいため、渓流釣を極めたいため、読書に没頭したいため、家庭の事情のせいで一旦は諦めた学問や研究を再開するためというような、他のことなどどうでもよく思えてしまうような強い目的がなければやめたほうがいいでしょう。それも、やればやるほど奥の深さがわかってゆくような、何もかも忘れ没頭できるような、はっと気が付くと一日が終わっているようなことをすべきである。」

人は、そう先々まで明確な意識があるのだろうか。あまり単純化はできない。明確な目的が無くても、田舎に来て、新たな目的をもって生きている人もいるであろう。

しかし、このリトマス試験紙にどう答えることができるかな。