功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『Force: Five』

2010-01-26 23:20:43 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Force: Five
製作:1981年

▼本作は長らく「幻の作品」と呼ばれていたが、先頃めでたくDVDが発売され、一般にも流通するようになったのは記憶に新しい。ただ、私はこういった幻の作品が容易に入手できる状況に喜ぶ一方で、なんとなく寂しさのようなものを感じている。
何度かコメントやレビュー中でも触れたが、私はここ10年の間に功夫映画ファンとなった後発の者で、功夫映画との付き合いに関しては「ゆとり世代」と言えなくも無い。功夫映画ブームを体験していないし、テレビで放映されたB級功夫映画も見たことが無いし、ショウブラや本作に関してはここ数年の間にやっと知った身である。
故に、直撃世代の方々とは経た年数が違うため、ショウブラの復刻やハーベストの旧作が発売された際も、特にこれといって驚くことは無かった。むしろ「こんな作品もあったのか」という素っ気無い感想しか抱かなかったのだが、これらに対して直撃世代のファンは歓喜に満ち溢れていた事だろう。だから…だからこそ、私は寂しいのだ。
もっと前の時代に生まれて、もっと早くショウブラや『Force: Five』などの存在を知って、もっと多くの輸入版ビデオを購入して、もっと「幻の作品」に思いを馳せ、もっと経験を積んだ上で旧作の復刻や希少作品のDVD化を体験したかったのだ!生まれる時代間違えちゃったかなぁ…(涙

■というわけで本作の紹介である(切り替え早っ!)。簡単な概要を説明すると、本作は『燃えよドラゴン』のスタッフが夢よもう一度と企画した作品で、『ジャガーNo.1』のジョー・ルイスや『七福星』のリチャード・ノートン、そして『スパルタンX』のベニー・ユキーデといった豪華スターが揃い踏みしたオールスター格闘映画である。
 怪しげなカルト教団に、とある富豪の令嬢が入信した。彼女を連れ戻すように命を受けたのは空手使いのジョー・ルイスだったが、そのカルト教団というのが巨大な島を根城にしており、とても1人で突破するのは不可能に近い(誰の協力も得なかった李小龍とはエラい違いだ・笑)。そこでルイスは一計を案じ、腕っ節の強い奴を集めて「フォースファイブ」を結成しようと考えた。
まず最初にルイスが接触したのはベニー・ユキーデ。後の出演作では見せなかった好青年を演じ、軽快なアクションを披露している。次に連絡を取ったのは『バトル・クリーク・ブロー』のソニー・バーンズで、こちらはパワー担当の黒人さんだ。3番目にルイスが雇ったのはハスラーのリチャード・ノートンで、最後は恋人のパム・パディントンを召集した。ところで本作の打撃音は、どうやら『燃えよドラゴン』からサンプリングしているらしい(打撃音といっしょに李小龍の怪鳥音が聞こえます)。
 やっとこさ集結したフォースファイブだったが、依頼主の富豪はカルト宗教が放った用心棒ボブ・スコットによって殺されてしまう。と、そんな事はさておき(おい!)敵の島に行くためにはペリコプターと操縦者が必要らしいので、フォースファイブは刑務所にいるパイロットの救出に向かった。普通にパイロット雇えよ!という私の願いも虚しく、囚人を解き放ってやりたい放題のフォースファイブご一行。これじゃあどっちが犯罪者か解らないぞ(笑
とりあえずパイロットを助け出し、満を持して敵の本拠に乗り込んだフォースファイブは、身分を偽って潜入する作戦を実行。教祖のボン・ソー・ハンの元には、依頼主を殺したボブの他にも多くの兵士たちが顔を揃えている。一方、何も知らない富豪令嬢は教団内でヒゲの信者(実はニューヨークの記者)と親しくなっていた。果たして我らがフォースファイブは、教団の秘密を暴いて巨悪を倒せるのだろうか?

▲はっきり言ってしまうと、ツッコミどころの多い作品である。
ストーリーは『燃えよドラゴン』の焼き増しで、似たテイストの『サンダー・ウォリアーズ』よりも没個性的であると言える。特に物語については『燃えよドラゴン』そのまんまで、本作独自の枝葉が無かったのも残念だ。本家『燃えよドラゴン』も物語はショボかったが、あの作品は李小龍の魅力があったからこそ傑作になり得た。その点を誤解し、新しいものへ挑戦しようとしなかった本作のスタッフは、『カラテNINJA/ジムカタ』で再び失敗を繰り返している。
 しかし、それでも本作がいささかも輝きを失っていないのは、「3大格闘映画スターが揃い踏みしたオールスター作品であった事」と「この時期の作品としては質の高い格闘アクションだった事(スタント・コーディネーターは『燃えよドラゴン』にも参加したパット・ジョンソン)」の2点が大きかったと言って間違いは無いだろう。個人的には今回が初接触となるジョー・ルイスに期待していたが、本作での動きは中途半端な李小龍スタイルだったため、思ったような収穫はありませんでした(『ジャガーNo.1』は様子見かな?)。
だが、香港映画へ出演する前のノートンとユキーデの動きは格段にレベルが高く、ラストの決戦では両者とも打点の高い蹴りやトンボ切りをビシバシと繰り出し、ルイス以上の大活躍を見せていた。どうせなら最後のルイスVSボン・ソー・ハンにも参加して欲しかったが、そのラストバトルも際立った出来ではなく、この作品の〆とするには少々華に欠けていたと思われる。
 たいしたことはない作品ではあるものの、初期のユキーデやノートンの格闘アクションが見られる点が大きく、マーシャルアーツ映画を見た者なら一度は見るべき逸品か。これでストーリーがもっと面白かったらなぁ…。ところで、本作のラストでノートンは赤い上着にジーンズという姿で闘っているが、『七福星』のラストでも似たような衣装で登場している。もしかして、サモハンは本作を見てノートンを起用したのでは…?(ないない)

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6 コメント

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『Force:Six』になってたじゃん  (白扇仔)
2010-01-31 21:29:32
龍争こ門様こんばんは(この絵文字は上の画像とかけてみましたw)。
作品全体をちゃんと見たわけではなく、YouTubeに上がっている動画を見ただけですがコメントしますね。

>打撃音といっしょに李小龍の怪鳥音が聞こえます

ほんとだw YTの動画でも確認出来ました。

>香港映画へ出演する前のノートンとユキーデの動きは格段にレベルが高く ~ ルイス以上の大活躍を見せていた。

特に、ヘリの前でユキーデが二人の敵と闘うシーンは、絡みの人のレベルも高かったし殺陣も良かったっすね。

多少コマ落としも使い、殺陣も進化した90年代以降のMA映画群を見慣れた我々(?)にとっては、“まあまあ”でしたが、これが当時予定通り(ある年の東宝東和の公開予定作のラインナップに載っていました)劇場公開されていたら、メチャクチャ燃えただろうと思います。
作品全体としての質はともかく格闘シーンに関して言えば、80年代前半の作品だと考えるとかなり高いクオリティだったと思います。なんでビデオスルーすらされなかったのか、全く解せません!

>ラストバトルも際立った出来ではなく、この作品の〆とするには少々華に欠けていたと思われる。

そーでしたか、このクライマックス・シーンはYTにあがってないんで未見なんですが、ボン・ソー・ハンは石堅よりはずっと動けたと思うんで、その辺が見てみたかったっすね。

そゆえば、『ケンタッキー・フライドムービー』は未見ですか?
これ(『F5』)を見てから見ると面白さがちょっとUPするかも知れませんねw

あと、書き込みタイトルのもうひとつの案は「女は要らんかったんちゃう?」だったんですが、彼女はストーリー上必要だったのでしょうか? ヘリのパイロットを含め6人になってたし、彼の方が活躍してたよーな・・・
遅ればせながら返信! (龍争こ門)
2010-02-03 23:33:04
白扇仔さんこんばんは!

>ある年の東宝東和の公開予定作のラインナップに載っていました
>なんでビデオスルーすらされなかったのか、全く解せません!
ノートンとユキーデという大物が出ているのにも関わらず、日本公開が一切実現しなかったのは痛恨の極みですね。
のちにノートンとユキーデが再び共演した『ザ・ファイター 炎のラスト・マッチ』という作品がビデオ化されましたが、あまりの駄作っぷりに目眩がしました。こっちよりも本作の方が何倍もいい出来だったのに…本当に惜しいです。

>80年代前半の作品だと考えるとかなり高いクオリティだったと思います。
この時期の作品だと『フォース・オブ・ワン』や『CIA殺しの報酬』なんかも良かったですね。個性豊かな混成チームというアイディアも、質の向上に一役買っていました(もしこれがルイスの単独主演だったら…う~ん)。

>ボン・ソー・ハンは石堅よりはずっと動けたと思うんで、その辺が見てみたかったっすね。
ルイスVSボンの対決については後日連絡致しますが、本作のボンは全然目立っていませんでした。むしろ石堅の方がよっぽど動けていたかも…(汗
ちなみに『ケンタッキー~』はまだ見ていません(レンタルしている店へ行くのに片道1時間も掛かりますので、懐に余裕がないと遠征できません…って、前にも同じことをボヤいたような気が・苦笑)。

>「女は要らんかったんちゃう?」
実際の本編では、富豪の令嬢に接するシーンなどで存在意義は見いだせるのですが、アクションとなると一気に蚊帳の外に追いやられちゃってますね。せめて『ジムカタ』のヒロインぐらいの活躍はして欲しかったところです。
なんだかなんだで面白い作品ですよね (Z)
2010-02-08 21:28:15
はじめまして。
長い事、観たくて堪らない作品でしたが昨年ようやく観る事が出来ました。
失敗した警備員の処刑シーンがもっさりしてたのが妙にツボでしたが、「ジャガーNO1」よりも生き生きしたジョー・ルイスも良かったですし、何といってもユキーデ&ノートンが白眉でした。(後年の共演作「炎のファイター」は無かった事に・・)

追伸 「ケンタッキー~」ですが良ければ差し上げますが・・(頂き物のRですが)

hukhuk135@yahoo.co.jp
返信! (龍争こ門)
2010-02-09 01:04:35
Zさんこんばんは&初めまして!

>長い事、観たくて堪らない作品でしたが昨年ようやく観る事が出来ました。
おお、Zさんもご覧になられましたか。仰るようにユルい点も多々ある作品ですが、若き日のユキーデとノートンが暴れ回っているだけでも、本作は大きな価値があると思いますね。

>追伸 「ケンタッキー~」ですが良ければ差し上げますが・・(頂き物のRですが)
実は、来週あたりに県外の店へ行く予定が入りました。なので『ケンタッキー~』は近い内に視聴が叶いそうなので、申し訳ありませんがお断りさせて頂きたいと思います。
せっかくの申し出でしたが、やはり入手できるソフトは自分の手で入手したいと思いまして…(どうもスミマセン)。
了解しました。 (Z)
2010-02-09 01:29:14
同時に違う人から頂いてどうしようかと思ってたものですから。

「フォース・ファイブ」は冒頭であのメル・ノバックがヒットマンで出てたのも嬉しかったです。相変わらず悲惨な最期でしたけど・・
返信!(1) (龍争こ門)
2010-02-10 23:13:31
Zさんこんばんは!

>メル・ノバックがヒットマンで出てたのも嬉しかったです。
出てましたね~メル・ノバック。本作では全然いいとこ無しでしたが、現在でもバリバリ俳優として活動中の模様です。
最近はレオ・フォングの新作などに顔を見せていますが、随分と老け込んでいました。『死亡遊戯』の頃の面影がほとんど残っていないので、これはちょっとショックかも(苦笑

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