功夫電影専科

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【Gメン75in香港カラテ①】『南シナ海の殺し屋』&『マカオの殺し屋』

2009-12-05 22:16:28 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「南シナ海の殺し屋」
「マカオの殺し屋」
製作:1977年

▼今月、遂にCSのファミリー劇場で『Gメン82』の香港編が放映されます。それを記念しまして、今回は『Gメン75』に於ける「香港カラテシリーズ」を、香港映画的な視点から考察していきたいと思います。なお、最初にお断りしておきますが、この特集では「香港カラテシリーズ」の全てを紹介いたしません(というか出来ません)。私はCSで本作を視聴していますが何話か見逃した回がありまして(爆)、本来なら全部を総ざらいしたかったのですが、そのへんはご容赦を…。

 全ての発端は第一次ドラゴンブームが巻き起こった1974年から始まる。
李小龍(ブルース・リー)を筆頭に様々なカンフー映画が日本全土を吹き荒れ、大きな影響を与えた事は当ブログでも何度か触れてきたが、その風に乗って1人の男が日本に凱旋を果たす。和製ドラゴン・倉田保昭その人である。香港で活躍していた日本人スターという事で脚光を浴びた倉田は、矢継ぎ早に東映のカラテ映画に参戦。『女必殺拳危機一発』や『必殺女拳士』に出演し、TVドラマ『闘え!ドラゴン』に主演したことで、彼はお茶の間にも知られる存在となった。
日本での人気も定着しつつあった倉田は、1975年にある刑事ドラマへ出演する…それが『Gメン75』だった。『Gメン』といえばシリアス&ハードな刑事ドラマとして有名だが、海外ロケや怪談モノといった多種多様なシリーズ構成も人気の一翼を担っていた。そんな『Gメン』とドラゴン・倉田の出会いが、この「香港カラテシリーズ」を作り上げたといっても過言ではない。
 とはいえ、シリアスな世界観を持つ『Gメン』にいきなりカンフー映画の真似事をさせるのはあまりにも無謀だ。そこで最初の香港ロケとなった第105話『香港-マカオ警官ギャング』と第106話『女刑事殺人第一課』は、ドラマ重視のストーリー展開が行われ、功夫アクションはほんのオマケ程度に挿入された(なお、『女刑事殺人第一課』には刺客として江島(チェン・タオ)が登場する。のちに「香港カラテシリーズ」の顔となる楊斯(ヤン・スェ)に次ぐ出演数を誇る江島だが、楊斯よりも登場は早かったようだ)。
しかし、続く第126話『南シナ海の殺し屋』と第127話『マカオの殺し屋』では、いよいよ倉田のカラテアクションと香港側の大物ゲストが出演する。その後も何度となく死闘が繰り広げられる「香港カラテシリーズ」は、この2本から幕を開けたのだ。

■香港から来たヘロインの運び屋を捕らえたGメン一行。取引相手が誰なのか吐かせようとするが、マカオの香港コネクションは秘密裏に殺し屋・力石考を派遣し、運び屋と護衛の警官が殺害されてしまう。彼らの命を奪った銃弾は、かつて倉田が3年前の事件で撃たれた弾と同じ物であった。力石を捕らえるべく、倉田は丹波哲郎のひと声で香港へと向かった。
香港警察に協力を断られた倉田は、アバティーンや九龍地区を転々としながら証拠集めに奔走。最後にマカオへ辿り着いたが、そこでコネクションの刺客である楊斯と白彪(ジェイソン・パイ)に襲撃を受けた。その時、倉田は孤児院で3年前の事件でとばっちりを受けた女医に再会する。一方、日本では若林豪らが麻薬の取引相手であるボクシングのプロモーターを確保し、コネクションのボスが誰なのか取調べを続けていた。その際に運び屋が「麻薬の仲介人は九龍のダンスホールにいる歌手だ」と自白し、倉田を支援するために伊吹剛と森マリアが香港へ飛んだ。
 そのころ香港では、くだんの歌手が白彪に叱咤を受けていた。この歌手と白彪は愛し合っていたのだが、伊吹たちと合流した倉田の目前で歌手は力石によって射殺されてしまう。捜査は振り出しに戻ったが、香港コネクションは倉田たちを消そうと着実に近付きつつあった。再び白彪たちとまみえた倉田は楊斯を倒すが、白彪は「貴様が彼女(歌手)を殺したんだ!」と憎悪を向ける。
白彪こそ取り逃がしたものの、倉田は女医から力石の人相書きを入手し、続いて奴がマカオに行ったことを知る。マカオで聞き込みをする倉田と女医…が、遂に力石の凶弾は女医の命をも奪った!同じ頃、伊吹と遭遇した白彪は自分が秘密捜査官である事を明かし、死んだ歌手を救いたかった無念を語った。共に大事な女性を失った倉田と白彪は、香港コネクション壊滅を心に誓った。
 白彪でさえも組織の全容はわからなかったが、朗報は日本から入ってきた。若林の追及によってプロモーターが白状し、マカオに黒幕が潜んでいることを掴んだのだ。さっそく香港コネクションのボスを問い詰めるが、自身の罪状に関してはシラを切るばかり。だが、目下の目的はコイツではなく力石の逮捕だ。離島に力石が潜伏していると聞いた倉田は、たった1人で乗り込もうと決意する。
続いて白彪も突入するのだが、果物売りの月丘千秋(白彪の母)と力石の意外な関係が明かされるとは、このとき誰も予想だにしなかった…。

▲香港コネクションと麻薬、香港側の助っ人、アバティーン、九龍城、そして楊斯…この前後編は、その後の「香港カラテシリーズ」で欠かせぬ要素となる物が大量に登場し、以降のシリーズの雛形として作られている。
今回ゲストとなるのは白彪と楊斯で、『アムステルダム・コネクション』や『白馬黒七』などで付き合いのある両者が倉田と戦う構図になっている。後半では白彪が実は味方であったことが明かされるが、一方の楊斯はあまり目立っていない。これがシリーズ初登場である楊斯だが、作中では後編の冒頭であっけなく死んでしまうのだ。
しかし、楊斯が本領を発揮するのは本作以後であり、作中で壊滅することのなかった香港コネクション共々、何度と無くGメンに立ちはだかってくるのである。
 本作とその後の「香港カラテシリーズ」で最も違うのは、ラストが功夫アクションで終わっていない点だろう。筋立ては殺し屋を追う追求劇であり、まだまだシリアスな作風が後を引いているため、その後のシリーズにあった爽快感はあまり感じられない。また、白彪の死や力石の出自など、少々唐突ともいえる展開が鼻に付くが、これらの反省点は以後のシリーズに生かされていくことになるが、それはまた次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『Gメン対香港の人喰い虎』前後編をお送りします。

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