いやいや中国では本当によく人が死にますね。コロコロと死にます。コロコロと死ぬことを前提に国家が成立し、運営されているのではないかと思わせるほどです。
少なくとも経済活動に関してはそうでしょう。「できるだけ低賃金」「頑固に搾取」が中国経済の売りですし、成長の原動力でもあるのですから。実際、外資の多くもそれを目当てに進出しているのです。限界まで絞るだけ絞る。そして不慮の事故死は織り込み済み、ということです。
ソフトやハードの至らないところは、惜しみなく人命を投入してカバーする。これが毛沢東以来の伝統、人海戦術の神髄ってなものです。人民解放軍は中越戦争あたりで懲りて以来この伝統とは決別したようですが、経済・社会の最前線では、未だにこの戦術一辺倒なのです。
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お察しの通りです。2月14日、遼寧省・阜新孫家湾炭坑で爆発事故が発生し、現時点までですでに210人の死亡が確認されています。炭坑事故としては建国以来最大規模とのことです。
温家宝がまた地味なジャンパーを羽織って現場に出かけて行って、取材陣の前で遺族の肩をギュッと抱き締めてウソ泣きするのでしょうか。今度は死者数が50人ばかり多いですから、涙を流さないとマズいでしょう。目薬用意!……目薬用意宜候。
こんな物言いは……そりゃ不謹慎でしょうとも。死者210人と聞けば一応「ええっ」と驚いてあげるのが礼儀というものです。でもチナヲチをしていると感覚が麻痺してしまって、正直これがなかなか難しいのです(※1)。
香港紙『明報』が最近5年における大陸(中共)の「鉱山事故Top10」を紹介しています(※2)ので、最近の例を拾ってみましょうか。ちなみに順位は死者数に拠っています。
●遼寧省・阜新孫家湾炭坑爆発事故(2005/02/14・死者210名・第2位)
●陜西省・銅川家山炭坑爆発事故(2004/11/28・死者166名・第3位)
●河北省・沙河鉄鉱石採掘現場火災(2004/11/23・死者61名・第9位)
●河南省・新密大平炭坑爆発事故(2004/10/20・死者148名・第4位)
●重慶市・天然ガス田中毒事故(2003/12/23・死者243名・第1位)
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ご覧の通りです。それに別に鉱山事故だけじゃありません。以前触れたように、104人を満載したダンプカーの横転崖下転落事故で死者55名なんてケースがあります(※3)。そのときに紹介した数字をもう一度並べてみましょう。
●昨年1-11月における炭坑事故件数は3413件、死者は合計5286人(※4)。
●昨年の生産活動中の死者は合計13万6000名余、1日平均373人が労災で死亡(※5)。
まだあります。
●広東省、帰省ラッシュの11日間(01/25-02/04)で交通事故6602件、死者335名
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/08/content_2560292.htm
●浙江省、旧正月期間中(02/05-02/14)の交通事故は6051件、死者182名
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/16/content_2583889.htm
鉱山事故なども含めた全国統計速報では、
●旧正月期間中(02/09-02/15)の死傷事故、全国で45件・死者398名
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/16/content_2582817.htm
どうです?……なんて胸張ってみても仕方がないんですけど、冗談でなく、人命軽視は中国経済・社会に欠くことのできない「仕様」のように思われてなりません。
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さて今回の炭坑事故、中国国内ではまたまた報道統制が敷かれているようで、炭坑側は「新華社の記事を使え」と取材拒否。そして事故に関する一連の経緯と後を絶たぬ大惨事に、ネット上では怒りと怨嗟の声が一斉に上がったようです。が、そこは中国、即座に削除職人が登場して大掃除完了。報道が制限されてweb上で話題にすることも御法度、というのは趙紫陽氏死去のときと同じです。
香港各紙の報じるところによると、炭鉱夫の賃金は正社員が日給60-70元(人民元、以下同)、出稼ぎ農民とみられる臨時雇いは日給30-40元。この臨時雇いの炭鉱夫も今回の犠牲者に含まれている(30余名)のですが、請負業者(口入れ屋)と結んだ契約は、
「死亡事故での補償金は2万元、支給後は業者側は一切関知せず」
「旧正月期間中に出勤しなければ即解雇、並びに罰金1000元」
となっており、デフォといえばデフォな内容なのですが、死亡補償は20-30万元というこの業界の相場からすれば、さすがに過酷すぎます。口入れ屋は農民を舐め切って、その無知に付け入ったとしか言いようがありません。
ちなみに中国の石炭生産量は全世界の約3割を占めているのですが、全世界の炭坑事故死者における比率は実に約8割だそうです。別の言い方をしますと、中国の炭鉱夫一人当たり平均年間石炭産出量は321トンで、この水準は米国の2.2%、南アフリカの8.1%にしかならないそうです。それなのに死亡率は米国の100倍、南アフリカの30倍(※6)。要するに生産効率が滅茶苦茶低い上に現場の安全環境が劣悪で死亡率がバカ高い。ということで、
「ソフトやハードの至らないところは、惜しみなく人命を投入してカバーする」
を地で行っている訳です。ここもやはり驚くべきところなんでしょうが、炭坑事故は死者数が多い分クローズアップされるだけで、実際には中国経済・社会の各面において、程度こそ違えど本質的には全く同じというような事象がごく当たり前に存在しているのではないでしょうか。
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ところで、これだけ事故が続けば担当閣僚の責任問題に発展するかも知れませんね。
前例は一応あります。一昨年に中国肺炎(SARS)を隠蔽したことを理由に、当時の張文康・衛生部長が更迭されているのです。ただこの張文康は江沢民のお気に入りで、その更迭は江沢民派の手足を削いでいくという権力闘争の側面もあったといわれています。ですから「一応」の前例です。とはいえ、相次ぐ事故で死者数は比較にならない程多いですから(中国肺炎ほどの国際的インパクトには欠けますが)、クビ切りが行われても不思議ではありません。
ただ、関係責任者一同のクビを切って、温家宝がウソ泣きをすれば済むという問題ではないでしょう。ネット世論が騒いだのも正にその点ではないかと思うのです。でも、叩かれたその点こそが中国の売りである以上、胡錦涛政権は言論統制を以て市民の口を塞ぐしかない訳です。
同時に、そういう「売り」を担う人々がいなければ、自分たちがインターネットやら何やらといった「物質文明・精神文明」を享受できないということに、ネット世論は気付いているのでしょうか。
それにしても、中共当局にとって都合の悪い事件が頻発し、ひと波またひと波と続く報道管制&言論統制。そろそろ危険水域ではないでしょうか。いい加減ガス抜きをさせないとシャレにならぬ事態に立ち至りそうですが、「反日」はもう使えませんし、一体どうするのでしょうか。
いや実は胡錦涛の方だって、鬱屈を散じたいでしょう。例えばテレビ演説などで、
「うるさい黙れ黙れ。人命軽視は仕様だ。中国はこれで食っているんだからグタグタ文句言うな」
とでも怒鳴ることが出来れば、随分気持ちが楽になるでしょうに。
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【※1】念のため言っておきますが、感覚が麻痺してしまっているのは、あくまでも中国の事故に対してのみです。
【※2】http://full.mingpaonews.com/20050216/16gaz.gif
【※3】当ブログ「これも一種の人海戦術?」(2005/01/08)
【※4】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/14/content_2333249.htm
【※5】http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-01-08/26/526041.shtml
【※6】http://full.mingpaonews.com/20050216/gaa2r.htm
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雲南でも死人が出ているようです。
確か一昨年は死亡者が10000人超えてたと思います。
この前は欧州でしたけどアメリカでも。
中国で販売の映画ソフトの95%海賊版 米国の業界団体などが加盟する国際知的財産権アライアンス。
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2005/02/15/003.html
これ全部に労災がおりていたらそれはそれで凄いことだと思いますが・・・無理ですよね。いくらなんでも。
http://www.sankei.co.jp/news/050218/kok055.htm
こう言ったら普通は、責任をどう取るのかが見物なんですが…
まあ責任を取るとは言ってないから期待損かも(笑
wowowさん、それは言わないお約束(笑)。
という訳で、事故発生とともに責任者一同が逃亡(笑)。結局自首してきたようですけど。
知的所有権での中国叩きは見物ですね。香港だって根絶されていないのに。
そういえば香港は映像作品だと正規品のDVDが増えてきているようですが、リージョンコードは全世界対応、ていうのが大半ですね。観る方としては有り難いのですが、ああいうのは大丈夫なんでしょうか……。
>これ全部に労災がおりていたらそれはそれで凄いことだと思いますが・・・
そうですね。出ているかどうかも問題ですが、いくら支給されているのかも問題でしょうね。いま補償金額についての基準策定が急がれているようです。泥縄ですね。
>胡・温は、最近農民などに対する配慮を口にしていますが、単なるポーズでしょう。
同感です。北京に陳情に来た農民(上訪人士)の扱いをみていれば一目瞭然です。
ただ口先だけでも猿芝居でも、国家指導者がそれをやることで無条件に感動してしまう農民も多いでしょうね。これは民度としか言いようがありません。
温家宝も大変ですよね。相次ぐ大事故にいちばん感覚が麻痺しているのは国家指導者たちでしょう。
「参ったなーまたかよ勘弁してくれよ」とか思いながらウソ泣きしに出かけていくんでしょうねえ。
南風窓の記事訳がたまたま手にはいりました。本来は記事のURLを記したかったのですが無くなってしまい、ここに記す事が出来ず済みません。タイトルは以下のとおりです。もう見られたかもしれませんが、知人からいただいた全訳とタイトルを添付しておきます。大変長く申し訳ありませんがもし問題がありましたら、事後で大変恐縮なのですが削除していただければと思います。
世界垃圾場:中國1.5億人淪為生態難民
陳中、陳初越記者 2005年2月24日付け(紹介元はchinesenewsnet.com)
訳者によるタイトル「中国・世界のゴミ捨て場」。
2005年1月、北京市で13億人目の公民が生まれた。つまり中国の人口が建国当初からほぼ2倍に増加したということである。すべての先進国の人口を足したよりもさらに1億人多い。中国人にとってどれだけの生存空間があるのだろうか。
中国960万km2の国土で自然条件から居住不能の地域が3分の1を占める。建国(1949年)後の僅か50余年で表土の流失は3分の1を超え、現在生存できる土地の総面積は3分の1しかない。つまり僅か半世紀で人口は6億から13億に倍増し、生存空間は半分になったことになる(従来の居住可能面積600万km2が300万km2になった)。中国の1人当たり耕地面積は世界平均の2分の1であり、淡水は6分の1である。現在中国には45種の鉱産物があるが、15年後には6種のみになる。石油はすでに長年にわたって純輸入国となり、2010年にはその70㌫以上を輸入に依存することになる。中国はどれだけの人口を養うことができるのか。世界の1人当たり淡水量で計算すると、許容人口は3.2億人、可耕面積で2.6億人,森林面積で1.7億人なのだが、中国は13億人を養い、なお増えたほうが良いとしているのは世界の奇跡と言ってよいであろう。人口は土地の負担能力をはるかに超えており、資源は極度に不足し、環境許容範囲も極度に少ないという情況の下で経済は高消費、高汚染という方式で成長を続けている。中国の人口密度は世界平均の3倍、天然資源は2分の1、単位生産値当たりの汚染排出量は世界平均の10数倍にのぼり、労働効率は先進国の数十分の一に過ぎず、経済の不安定指数は世界平均の4倍以上である。これと同時に中国ではエネルギー浪費が
はなはだしい。生産値1万㌦当たりの鉱物資源の消費は日本の7.1倍、米国の5.7倍、なんとインドの2.8倍にもなっている。統計によれば中国の国土の3分の1は酸性雨に侵蝕され、7大水系の中で水質汚染の5類に属するものが41㌫、沿海の赤潮発生率は20年前の3倍になり、4分の1の人口が基準以下の水を飲み、都市人口の3分の1がかなり汚染した空気を吸い、都市のゴミ無害化処理は20㌫に至らず、工業危険廃棄物の処理率は32㌫である。全世界の重大汚染都市10のうち中国が5を占めている。
環境汚染と生態破壊は巨大な経済的損失をもたらしている。世界銀行の推計では中国での大気・水の汚染による損失額はGDPの8㌫になる。中国科学院の推計では環境汚染によって中国の発展コストは世界平均よりも7㌫高く、環境汚染と生態破壊による損失はGDPの15㌫になる。環境保護総局の生態調査によれば、西部9省のみで生態破壊による直接的な経済損失は現地のGDPの13㌫にものぼっている。環境破壊は人民の健康に明らかに危害を加えている。昨年中国の病人の延べ人数は50億人となり、健康不安による経済的損失は8千億元(日本円訳10兆円)となり、同年のGDPの7㌫になる。国連開発機構が発表した2002年度の報告によれば中国では大気汚染で1500万人が気管疾患を患っている。中国では毎年200万人が癌で死亡し、汚染地区の癌死亡率は大気の良い地区の4.7倍
から8.8倍に達している。例えば北京の肺癌発病率は悪性腫瘍の第一位を占め、大気汚染がもっともひどい石景山地区(北京市西部の工業地帯)の肺癌死亡率は全市平均値より30㌫高い。
中国の膨張する人口と粗放型経済成長によって大気、水、土壌、生物などの環境要因は破壊され、自然災害が頻発、資源維持能力も下降し、民族の生存空間は縮小している。専門家によれば広大な西部地区と生態状態が脆弱な地区は現在の人口負担に耐えられず、全国22の省市から1.86億人を移出させる必要があるが、現在住民を受け入れられる広東、北京、天津、上海、遼寧、浙江、福建、黒龍江、海南などの省市の受容量は3千万人過ぎない。その時になると全国で1.5億人が「生態難民」となるであろう。
外国の科学者は、もし中国が急速に生産・生活方式を転換させなければ、人類史的環境危機による経済、社会システムの最大限の崩壊が中国で発生するであろうとしている。明らかに中国の現在の環境情況では、すでにこれ以上のエネルギーの高消費、高汚染、低産出という発展方式を取り続けることは不可能になっている。中国では今なお法治社会への転換が完成しておらず、多数の基層幹部は権力を尊重するが法は尊重しない。中国では行政権力による強制執行に頼らなければなにもできないのだが、行政権力に頼るだけでも上手くいかない。
2004年、中国の3分の2の省市では電力不足が起き、石炭については事故があんなにも多いのに需要を満たせない。石油は2010年以降70㌫を輸入に頼ることになる。中国のエネルギーは明らかに不足となっている。だが同時に、中国は間違いなく浪費が巨大である。エネルギーの価格決定が歪められているし、生産技術が低く、資源浪費が甚だしい。それは西側国家が100年前の「工業化初期」に直面した問題である。「工業化初期」の問題とは、自然の開発にひたすら力を入れ、大量の廃棄物を出し、盲目的な高消費を続けることである。この方式の背景には伝統的な西側の経済学の仮説があった。つまり地球の資源は無限であり、資源の価格は製品価格に占める人件費の中に転化できる程度のものであるということであった。しかし地球の資源と環境許容量には限界があり、自然の法則が西側工業文明に懲罰を与え始めた。西側各国では6,70年代に世界を驚かすような公害事件が多数発生し、大規模な大衆運動を誘発した。それか30年経ち西側各国は工業化を完成し、また重厚な経済的・技術的資本によってある程度各国国内の環境問題を抑制することができた。だが中国は工業の途に着いたばかりであり、資金も技術もないまま、喜んで西側諸国がたどった古
い道を進んでいるのである。
中国の人の分析では1割強がもうすぐ悲劇にあうようです。難民がどっと日本海にあふれ出る日も近いかも。
シベリアの方が日本より中国人が流入しそうです。
以下の記事を読むと将来大きな問題になるかも、
とおもいます。
http://www.hokuriku.chunichi.co.jp/nea/vladivo/20041122.shtml
命の価値ってなんだろう・・・
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
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