日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





【シリーズ:反日騒動2005(18下)】
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 北京の日本大使館襲撃事件後は御存知の通り、デモが各地に拡大して、昨日(10日)は確認できているだけで9都市にも及んでいます(しかも広州や深センではデモ参加者が暴徒化)。さらに「上」の冒頭で示した通り、全国各地にきれいに散らばっているのが特徴です。今度の日曜(17日)には吉林省・吉林市で反日活動が予定されているそうです。もちろん明らかになっていないだけで、他の都市でも動きがあることでしょう。

 例えば広州のデモですが、香港紙が伝えるところによると、同市・天河体育館を集合場所と定め、そこで反日集会を行うつもりだったのが、人数の集まりが予想以上によかったため、主催者は急きょ計画を変更して日本総領事館へのデモに切り替えたそうです(※1)。当然事前申請と市公安局による許可がないので非合法デモの筈ですが、調子に乗っていますからそんなことお構いなしだったのでしょう。

 しかも沿道から参加してくる一般市民を次々と喜んで隊列へと迎え入れた。「反日」という可燃度の高いテーマを掲げたデモに民衆が加わると、往々にして暴徒化し、暴徒化すると珍獣や糞青の手には負えなくなります。しまったと思っても青二才の細腕ではもう統御できない。そして道ゆく先々で破壊行動。組織が潰される理由を自ら当局に与えているようなものなのですが、そういう風に頭が回らず、事態が悪化してからようやく慌てるのが糞青の糞たる所以であります。たぶん深センの展開も似たようなものだったでしょう。

 こちとら政府の御墨付きだぁ、と増長しているところもあります。例えば糞青の総本山である「愛国者同盟網」、昨年8月末に胡錦涛によって一度潰され、残党が「青年先鋒網」というサイトを立ち上げてそこを新しい拠点としたのですが、このサイト、いつの間にか元の名乗りである「愛国者同盟網」に戻っています。さらに関係部門からの通達で御法度となった筈の「四・九北京デモ」関連スレ(前回参照)が再び出現しています。こういう調子に乗った態度からも、連中が胡錦涛から別の飼い主の手に移った気配が感じられます。

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 しかし、それにしても広州・深センではやり過ぎた観があります。

 居並ぶ海外プレスのカメラの前で堂々と日本製品の広告を破壊したり、日本総領事館の入っているビルのガラスを叩き割ったりしているのです。当人は爽快でしょうが、北京五輪や上海万博を控えた国際的なイメージ、そして治安維持という観点からすれば、政府にとってはたまったもんじゃありません(笑)。

 例えば日本の外務省はまだ動いていませんが、この先事態がエスカレートすれば渡航に関する注意が出るでしょう(私はプチ暴動が発生したりテロめいた事件で負傷者が出ている以上、もう躊躇せず動くべきだと思います)。

 中共当局にすれば、5月の連休に日本人観光客が来なくなるのも痛いでしょうが、日系企業の動きが止まってしまうともっと痛い。しかも対象は多分中国全土。

 そんな訳で、またまた今さらなんですけど胡錦涛がたまらずに動いた模様です。

 ●外交部報道官「在中国日系組織と日本人の安全確保に全力を尽くす」
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-04/11/content_1066526.htm

 出処はもうお約束ですね。胡錦涛の広報紙・今朝の『中国青年報』(2005/04/11)です。

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 さてその内容ですが、「上」で紹介した「中国側に責任なし」と「反日デモは自発的」を混ぜ合わせたようなものになっており、やはり記者会見の問答形式です。といっても記者が問いを発してあとは副報道局長が延々と喋るだけ(笑)。当然ながら副報道局長、

「責任は中国側にはない」

 と改めて断じています。中国国内の読者ならこの台詞で頷くでしょうし、糞青なら「そうだ」とか言いながら武者震いするかも知れません。逆にいえばとりあえずそこで媚びを売って、という思惑がなくもないような。

 で、この記事の特徴は「中国側は中国駐在の日系企業や日本人の安全確保に全力を尽くし、様々な手を打っている」とする一方、

「示威活動の過程で発生した様々な過激な行為は中国側にとって目にしたくないものだ」

 と、反日活動のクールダウンを求めた、というより
「過激な行為」は許さない。お前らいい加減にしろという意思表示にあります。

 『中国青年報』は国営通信社でも党中央の機関紙でもありませんが、喋っているのが外交部の報道官なのでこれが政府の言い分ということになります。副報道局長氏によると
「中国政府はこれまでずっと、民衆が冷静かつ理性的に、また合法的かつ秩序だった形で意思表示を行うよう求めてきた」そうです。秩序だった形で意思表示っていうのは、例えばみんなで揃って投石すること?

 まあ茶化すのはやめにしてマジメに考えてみますと、成都のイトーヨーカ堂襲撃事件(2日)後の最初の会見で出た
「民衆が理性的に意思表示するよう望む」(※2)よりは「過激な行為」について厳しい姿勢です。

 ●日貨排斥事件に外交部「経済貿易問題を政治化することは望まない」
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2769866.htm


 ……よりはソフトな感じですね。もちろん、日本の常任理事国入り反対論者を真っ向から叩き斬った、

 ●米国というファクターが中日関係を左右する
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-04/04/content_1062138.htm


 ……には足元にも及びません。それでも、胡錦涛の意思表示ととれる動きがあったことは注目です。

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 ごく個人的な感想として、どうも最近、胡錦涛は影が薄いというか、昨年秋の断固とした姿勢、「俺が全部仕切るんだ」という気迫、そういうものに欠けていて、それで例えば対外強硬派から後手後手に回った対日外交などを批判されて妥協したり、押されまくっているように思えるのです。

 1989年の天安門事件で失脚した趙紫陽・元総書記が今年1月に死去した際、その生前の事蹟に対する評価や葬儀の格式などについて党の元老格や物故した国家指導者の家族などから激しい突き上げがありました。それについては当ブログも当時リアルタイムに詳報しましたが、どうもあの騒ぎを乗り切ったあたりから指導力に翳りがみえているような気がしてなりません。

 江沢民・前総書記をさえ子供扱いできる党の元老・長老は、それまで胡錦涛の有力な支持基盤のひとつでした。昨年8月に江沢民を引退に追い込んだのも長老連の支持があったればこそと私は邪推しているのですが、もしかすると故・趙紫陽氏の処遇で大揉めしたのを契機に、以前ほど可愛がってもらっていないのかも知れません。

 「強権政治・準戦時態勢」を実現して中央の統制力を大幅に強化して、20年以上にわたる改革・開放の過程で生まれ、癌のような存在に成長した様々な矛盾や対立軸を改善する。抵抗勢力(既得権益層)は力づくで排除(そのための強権政治&統制力強化)し、それによって中共の延命を図る。延命措置が奏功すれば、党勢回復の道へと力強く踏み出す。……再三言及していますが、私はそれが胡錦涛政権の企図であり使命であると当初より考えています。それが果たせなければ、中共は早晩潰れるでしょう。

 昨年秋までは、胡錦涛は「強権政治・準戦時態勢」の道を着実に進んでいました。ただその後足取りが怪しくなってきて現在に至っています。地方の指導者レベルには自分の派閥(共青団系列)に連なるホープを次々と送り込んではいますが、「党総書記+党中央軍事委員会主席」という最高指導者にしては、目下のところ掌握力が心もとない印象です。

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 今回『中国青年報』を通じて投じられた一石がどういう効果を生むのかは転載状況や他の記事の論調の変化なども含め、じっくりヲチしていく必要があります。実際、この記事が今日出るのと軌を一にするかのように、「新華網」や大手ポータルのニュースサイトにおいて「反日」記事が急減した印象があります。あくまでも個人的な感想ですが。

「下手をすると中共の命取りになります」

 という言い回しを最近多用している気がしますけど(笑)、
いまの中国は本当に異常な状態にあるのです。考えてもみて下さい。珍獣・糞青によるものとはいえ、またテーマが「反日」であるとはいえ、何と中国各地でデモが行われている!これは1989年の民主化運動以来の危険な状況です。しかも糞青たちはデモの道すがら一般市民が加わってくるのを拒まない。それゆえ暴徒化のリスクが高く、実際暴徒と化しています。

 それでも被害が日本関連だけなのは辛うじて「反日」でまとまっているからで、もし民衆(市民と出稼ぎ農民)が大挙参加してくれば、「反日」の範囲を超えての焼き打ち・略奪などのような事態になるかも知れません。どの方向にどう荒れるかわからないのです。そうなったとき、仮に治安部隊との衝突で死者が出ても、ベクトルの向き、つまり騒ぎの鉾先を「反日」とは別の方向へとシフトさせる要因たり得るでしょう。

 くどくなることを承知で書けば、社会状況からして「物価高+失業+貧富の差拡大+党官僚の汚職蔓延」で危険水域にあります。実際に「反日運動」とは全く別の次元で、小規模の暴動が起き始めています。それに加えて全国各地で週末になるとデモが行われ、一部はプチ暴動になっているのです。

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 実は目安のひとつとして、この
「週末」が重要な存在だと私は考えています。平日にデモが起きないのは、参加者の大半が学生だったり社会に出てほどもない若い勤労者だったり、とにかく月火水木金だと時間がとれないからでしょう。

 ……お察しの通りです。
「平日」にもデモが起こるようになると、これは危ないのです。あ、ラッキーとか僥倖とか言うべきでしょうか(笑)。失業者やらニート(いるんですよこれが)やら、インターネットカフェに入り浸っている無職の小僧やら流民(土地を奪われてその日暮らしの境遇に堕ちた農民)やら……特に「4050」と称される40~50代の失業者、それに「失地農民」と呼ばれる流民が参入してくると、テーマも「反日」一色ではなくなるでしょう。

 煽り過ぎて反政府運動になってしまうのはもちろん困るし、鎮静化してしまっても日本へのプレッシャー、また国際社会へのアピールにならない。ですから「ほどよい」デモを中共当局は望んでいるのでしょうが、「反日」という可燃度の最も高いテーマですから、実際には極端な方向に流れてしまう。

 進退に窮するとでも言いますか、つまりは「ジバク」状態なのです。まあ、いまが
「自縛」で、それが「自爆」に向かうかどうか、といったところでしょう。

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 最後に、ちょっと気になることを指摘しておきたいと思います。外交部報道官による会見、例えば『中国青年報』に掲載された4月10日の記者会見では、

「中国側は中国駐在の日系企業や日本人の安全確保に全力を尽くし、様々な手を打っている」

 と言っています。ただつい最近、具体的には4月5日の記者会見までは、日本の常任理事国入り反対署名活動や、それがプチ暴動に発展したことなどに関連して、

「中国政府は終始一貫責任を持って、法律に基づいて日本を含む全ての在中外国人の生命・財産・安全と、企業の正常な経営活動を保護する」
(※3)

 ……と胸を張っていたのです。比較すれば一目瞭然、現在の日系企業及び邦人の安全確保に関する言い回しは、ずいぶん後退したものになっているのです。特に「法律に基づいて」が消えていることが気になります。


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 【※1】http://www.mpinews.com/content.cfm?newsid=200504101949ca71949c

 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/05/content_2790627.htm

 【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/05/content_2790627.htm



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【シリーズ:反日騒動2005(18上)】
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 色々な意味で物騒になってきた、という印象です。

 とりあえず、昨日(4月10日)デモなどの反日関連活動が行われた都市をまとめておきます。複数の大手反日サイトと今朝の香港各紙(11日)の情報を基にしたものです。

 ●深セン市
 ●広州市(広東省)
 ●福州市(福建省)
 ●南昌市(江西省)
 ●蘇州市(江蘇省)
 ●仏山市(広東省)
 ●長春市(吉林省)
 ●海口市(海南省)
 ●昆明市(雲南省)

 これまた東西南北あまねく、という展開ぶりですね。お行儀のいい活動もあれば、広州や深センのように在留邦人に身の危険を感じさせるような過激な行動もありました。実際に両市では器物損壊などの実害が出ています。

 物が壊されただけではなく、商売の邪魔をされたことによる売り上げ減などの被害も相当なものでしょう。

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 前々回指摘した通り、当初はバラバラ(私の見方は四分割でした)に動いていた反日活動が、今はもうすっかり、ひとつリズムで踊るようになっています。その表現方法としてデモが用いられるであろうことも、そのときに指摘した通りです。

 日本のマスコミも報じていますが、「五四運動」の5月4日を記念して、糞青(自称愛国者の反日教信者)らが同時多発デモのようなイベントを企てる動きがネット上であるようです。詳細はいまなお不明ですが、

「大串連」(da4chuan4lian2)

 という単語が使われています。文化大革命のときにその尖兵となった紅衛兵が、情報・経験の共有や顔つなぎのために中国全土を巡回し交流し合った活動を指す言葉です。

 ええ、糞青はまことに紅衛兵のようなものだと思います。馬鹿な上に生活を背負っていない分ガンガン突っ走れるから始末が悪い、というのも共通点ですね。しかも21世紀の紅衛兵たちはネット上で集えますから、汽車やバスに乗る必要もない。全く困ったものです。

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 9日には
上海のレストランで食事をしていた日本人留学生が複数の中国人に襲われ、負傷しています。日本人かと念を押された上で、ジョッキと灰皿で殴打してきたそうです。道具を用いるあたり卑劣漢らしさが漂っていますけど、何よりもこれ、日本人を標的にしたテロじゃないですか。今回の一連の騒ぎの中で、質的には最も危険な事件といってもいいでしょう。日本のマスコミは被害者が許す範囲内で事件の詳細など具体的な内容を大々的に報じて、中国及び上海市政府の非を鳴らして然るべきではないでしょうか。

 それからこういう記事もありました。何ですかこれは。

 反日デモ「責任ない」=町村外相の要求拒否-中国外務省(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050410-00000128-jij-int

 【北京10日時事】中国外務省の秦剛・副報道局長は10日午後、北京で9日発生した反日デモで日本大使館が被害を受けたことなどに関して、町村信孝外相が中国政府の謝罪や損害の補償を求めたことに対して、
「今日のような日中関係を出現させた責任は中国側にはない」と反論し、要求を事実上拒否した。さらに日本側に対し、歴史問題や中国の国民感情にかかわる重大原則について真剣に対応し、適切に処理するよう要求した。 

 言うも言ったり、横暴の極みではないですか。そのおかげで、「いかなる理由があろうと、破壊活動は許されるものではない」という町村外相の正論(10日、王毅・駐日大使に説教垂れたときのもの)が際立っています。

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 まだあります。

 ●反日デモは「自発的」 中国外務省(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050410-00000030-kyodo-int

 【北京10日共同】中国外務省の秦剛副報道局長は10日、北京市内で9日に起きた大規模な反日行動について「歴史問題における最近の誤った日本の態度と行為」に不満を抱いている北京の人々が自発的に行ったデモだったと述べた。
 また副報道局長は、中国政府が参加者に対し、冷静かつ合法的、秩序あるやり方で自らの態度を示し、行き過ぎた行動を取らないよう求めていたと説明。当局としては秩序を維持、事態が広がることを防ぎ、日本大使館などの施設や在留邦人の安全確保に努めていたと強調した。さらに中国外務省が日本大使館に状況説明を行っていると語った。

 ――――

 この「反日デモは『自発的』」会見には、注目すべき点が2つあります。

 まず、原文(※1)にも当たってみましたが、確かに「自発的に行ったデモ」とあります。でも自発的でないデモというのが中国には存在するのでしょうか?中国のデモは届出制ではなく許可制です。「自発的に行ったデモ」は非合法活動であり違憲、警官があれだけいたのになぜ阻止しなかったのか(※2)。実際に農民のリーダーとして村の仲間と不条理を訴えるべく請願しようとした浙江省だか福建省の農民が、この罪で昨年、懲役3年(記憶モード)を喰らっています。

 「自発的でないデモ=官製デモ」ということでしょうか(笑)。ちなみに、私は前回の本文とコメント欄で北京のデモを「官製デモではない」(最初にやった中関村での集会は官製です)と再三強調しましたが、もちろんこの発言を根拠にしているのではなく、数々の状況証拠から判断したものです。これも前回の本文・コメントを御覧になれば御理解して頂けると思います。

 第2点は、
「副報道局長は、中国政府が参加者に対し、冷静かつ合法的、秩序あるやり方で自らの態度を示し……日本大使館などの施設や在留邦人の安全確保に努めていたと強調した。」という部分です。簡単に言うと、当局はこういう姿勢と措置で事態に臨んだのだ、と言っているだけです。要するにデモ隊に破壊活動など違法行為があったことには言及していません。言及していないというのは、中国的理屈では「なかったこと」なのです。そういえば、

 ●日貨排斥事件に外交部「経済貿易問題を政治化することは望まない」
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2769866.htm

 なんて僅々10日前に言っていたのが嘘のようです。いまや政治化どころか破壊して回っているじゃないですか。……ああ、デモ隊のそういう悪行三昧は「なかったこと」なんでしたね。

 実は当局のこの態度、成都事件(2日)後の最初の会見(※3)から一貫していて、そのときは
「民衆が理性的に意思表示するよう望む」という少しはマシな言い方でした。でも違法行為を指摘したり批判してはいないので、やっぱり「なかったこと」なのです。

 ――――

 私は昨日は急に仕事が入ったりして忙しかったのですが、もう腹が立って、とにかく憤慨しっぱなしです。それで電話をかけてきた香港チーム(仕事仲間)のひとりに、

「お前ら普通選挙権もない無知な香港人に俺が歴史を教えてやる。南京で30万人が殺された根拠はなんだ?通州事件は知っているか?お前らの歴史の教科書に六四事件はどう書いてある?さあ言え。おら早く言え」

 と毒づいて八つ当たりしてしまったのですが、せっかく毒づいても広東語が下手ですから相手に毒が伝わらない悲しさ(笑)。まあ、憤慨したままではヲチする上での必須条件が欠落してしまうので、一晩かけて頭を冷やした次第です。

 外交部副報道局長の上記2つの発言(「責任ない」と「自発的」)にはもう1点ツッコミどころがあるのですが、それは後述するとして、とりあえず、

 ●成都(4月2日)
 ●深セン(4月3日)
 ●北京(4月9日)

 とヒートアップした反日騒動について、中共当局はこれをとがめ立てせず、むしろかばってやっているような態度になってきていることがわかるかと思います。しかも「中国側に責任はない」とまで硬化しているのです。

 ただし、国内に対しては報道統制を敷き、成都や深セン、それに北京についても一切報道させませんでした。前回紹介したように、それは大手反日サイトでの「関連スレ立て禁止」措置にまで及びました。逆に成都事件の段階でしっかり報道して悪行に批判を加えていれば、仮にデモが行われたとしても、過激な行為に発展することはなかったと思うのですが。……それをやれなかったのが当時の政治状況、ということなのかも知れません。

 ちなみに「自発的」の会見原文(※1)は、

「最近、中国国内で多くの民衆が様々な方法で中日関係などに関わる問題について意思表示を行っている。中国政府はこれをとても重視しているし、国際社会にもはっきりと(意思表示が)伝わっているだろう」

 という言葉で締めています。ごもっともです。確かに不埒な悪行三昧はその都度海外プレスにはっきりと撮影されているので、国際社会にもはっきりと民度の低さが伝わったと思います(ちなみにこの会見記事、「北京でデモがあって日本大使館に被害が出た」という事実を質疑応答の形で間接的に国内へ告知した最初のものです)。

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 それとも今回の一連のデモは、李登輝氏訪日や尖閣諸島の灯台国有化で行われた「なんちゃってデモ」(参加者約50人)が毎回余りにショボく日本側からも無視されたことで、「それじゃ一丁派手にやってやるか」ということになったのでしょうか。……と、邪推モードに入ってみます。

 成都と深センでは失敗したので、今度は北京でヤラセに徹しよう、というのは胡錦涛・総書記やウソ泣き首相・温家宝でも打ちそうな芝居です。場所を限定しての官製集会+集会終了直後に新華社がそのニュースを素早く配信(海外限定)、というのがそれに当たります。

 しかしその直後に行われたデモ、しかも沿道の群衆の参加を拒まない点で暴動に発展する可能性に満ちた(実際暴徒化した)デモは、秩序と統制が大好きな胡錦涛にしては「らしくない」ように思います。

「大使館に突っ込むのはさすがにマズかろうが、ガラスくらいなら好きに割らせてやれ」

 というのは、軍人や治安畑一筋できた高官なら「いかにも」な感じの荒っぽい発想です。実際、ズラリと門前を固めた防暴警察(機動隊)の若い衆は投石に顔色を変えることはありませんでした。でも大使館内に突入しようとする暴徒には、防暴警察やその前を固めていた公安(警官)が群がって、実力でそれを阻止していました。

 例えば対日本・台湾外交で強硬論を唱える向きなら、「ちょっとイジメて鬱憤晴らし」ということで乗りそうな企画じゃないですか。「鬱憤」とは、昨秋以来蓄積されたフラストレーションのことに他なりません。

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「あ、でも靖国参拝はするから」(日中首脳会談)
「中国もそろそろODAを卒業しないとね」(小泉首相発言)
「中国の軍事的台頭には要警戒」(新防衛大綱)
「あ、ビザならもう出したから」(李登輝氏訪日)
「あの灯台なら国有化したよ」(尖閣諸島)
「台湾海峡で何かあったら介入しますのでよろしく」(「2+2」での日米共同戦略目標)

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 ……などなど、いずれも糞青や珍獣(プロ化した糞青)が一大反発した出来事ですが、強硬派にとっても我慢ならなかったのではないでしょうか。台湾独立に備えて全人代で成立させた例の「反国家分裂法」、以前も書きましたが、香港の観測筋では「胡錦涛が強硬派に妥協した産物」とみる向きが多いのです。

 という訳で、北京のデモは当局が予想していなかった動き、むろん「官製」ではなく「民間」のデモです。ただし中国の「民間」には必ず政治的保護者(後ろ盾)がいます。このケースでは胡錦涛から「糞青・珍獣」を奪回した対外強硬派(元の飼い主)あたりが糸を引いていたのではないか、と考えてみたりするのです。……あ、くれぐれも邪推ですから。


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 【※1】http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/t190813.htm

 【※2】前回書いた通り、香港紙『明報』の電子版速報「明報即時新聞」によると、集会参加者が警備に当たっていた警官と現場で交渉してデモを認めてもらったそうですが、そんな無茶な(笑)。
     http://www.mpinews.com/content.cfm?newsid=200504091920ca61920y

 【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/05/content_2790627.htm



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