日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





【シリーズ:反日騒動2005(14)】
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 一連の「反日」に関して大きな動きがありました。わざわざ「一連の」をつけたのは、今回の動きは一括りにできない部分が少なくないからです。また前回までのコメント欄で色々書き散らしてしまったので改めてそれをまとめたいところですが……。

 とりあえず言っておきます。今回の「反日」については、

「署名活動」(中共+「なんちゃって民間組織」+御用組織主導の大学生)
「報道」(中共+メディア)
「日貨排斥」(主に小売店)
「日系スーパー襲撃」(民衆)

 ……と、少なくとも四分割して各々を眺めてみる必要があると思うのです。各分野を担う活動主体もまた異なります(カッコ内)ので、これまたひとつひとつ眺めてやらなければなりません。それについてじっくり邪推したいところですが、まずは本題である「大きな変化」について紹介することにします。

 ――――

 変化を呼んだタネは、言うまでもなく成都(2日)と深セン(3日)で起きた日系スーパー襲撃事件です。まず日本側の動きをみてみましょう。

 ●邦人、企業の安全確保要請 外務次官が中国大使に(共同通信)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=DLT&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2005040401003170

 この報道によると、外務省の谷内正太郎事務次官は4日午後、中国の王毅駐日大使を呼びつけて「強い関心と憂慮を表明する。在留邦人の安全と日本企業の営業の確保に向け協力を求める」と、事件について中国政府の有効な対応を求めたそうです。これに対する王毅の言葉が唐突です。どういう会話の中で出たのか記事はふれていませんが、

「中国政府が国民と一体となってとか、後ろで何かやっているということは全くない」

 と、中国政府の関与を否定したそうです。「王毅君、誰もそんなことを尋ねてはいないよ」てなところでしょうか(笑)。相変わらず口数が多すぎる奴です。この時期に駐日中国大使がこういうキャラ、というのは日本にとっては幸運なことといえるかも知れません(笑)。

 このほか小泉首相が「中国の日本企業、日本人の活動が自由にできるように配慮してほしい」と、中国政府に配慮を要請。外務省もようやく警戒警報発令です。

 ●中国:日系百貨店に対する抗議活動に関連する注意喚起(2005/04/04)
 http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/spot_top5.asp?id=009&num=1

 また、北京の日本大使館か重慶の総領事館でしょうが、四川省政府に対し現地日系企業の安全・権益保護要求が出たようです。

 ●日本大使館(総領事館?)、日系企業の安全保障を四川省政府に求める
 http://hk.news.yahoo.com/050403/12/1azwy.html

 ――――

 そして中国側の動きですが、まず胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』(2005/04/04)が面白い記事を出しました。日系スーパー襲撃事件を受けて、胡錦涛もたまらずに動いた、というところです。

 ●米国というファクターが中日関係を左右する
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-04/04/content_1062138.htm

 この署名論評の要点をかいつまんでいきますと、まず
「日本の政治大国・軍事大国になることを懸念する向きがあるが、それは全くの杞憂だ」と説き起こし、その理由として「米国の基本戦略が世界唯一の超大国という存在を維持することにあるからだ」とします。だからその地位を脅かすような大国に日本がなることを米国は望まず、日本にはあくまでも米国の弟分というポジショニングを強いるだろう、というものです。

 この記事はその一例として英国を挙げ、
「英国は欧州の域内では大国かも知れないが世界的には米国の子分でしかない」とし、日本は「極東の英国」という役割を米国から振られているのだ、と指摘しています。そして、せいぜい「極東の英国」どまりなのだから、日本の政治大国化・軍事大国化を案ずる必要はない、というのです。

 そして本題に入ります。
「日本を国連安保理の常任理事国にしたら世界の大国になってしまうとする意見があるが、そんなことはまずあり得ない。常任理事国の地位が日本を大幅にグレードアップさせる?そんな単純なものではない」とバッサリです。

 ここでも英国が引き合いに出され、
「英国は安保理の常任理事国だが、米国との特殊な関係を平等な関係へと改めることができないでいるではないか」と決めつけます。そして、「日本も同じだ。たとえ最終的に常任理事国になろうと、それは安保理に対する米国の支配力を増やすことにしかならない」とし、常任理事国入りによる日本の政治大国化・軍事大国化という論調に疑問を呈しているのです。

 これでこの記事の真の主題は語り尽くされたことになるのですが、表面上の主題(標題)に結論を与えるべく、「だから対日関係を改善するには、まず対米関係を考えることだ」と力業に入ります(笑)。簡単にいうと、子分(日本)との関係は中国と親分(米国)の関係次第で改善される、ということで、だから「米国という要素が中日関係左右する」なのだ、中日関係のこれ以上の悪化を防ぐにはまず対米関係を改善することだ、と高らかに謳い上げて文章を締めています。

 ――――

 『中国青年報』のこの署名論評で注目すべきことは、他でもありません。
中国全土でヒートアップする反対運動に水をぶっかけるように、日本の常任理事国入りを否定していない(暗に認めている)ことです。しかもその過程では、

「もし日本が常任理事国になってしまったら……」

 という反対運動側が掲げているネガティブな理屈を
真っ向から叩き斬っているのです。

 原文を読んだ感想、これは文章全体に漂う空気のようなものですが、ずいぶん露骨で強引でしかもバタバタとした感じで、署名論評としての風格なり洗練さに欠ける、といったところでしょうか。日系スーパー襲撃事件の報に接して慌ただしく天上世界から命令が降ってきたので、とりあえず御注文通りに急いで書き上げました、と筆者が肩で息をしながら上司に報告しているという印象を与えます。

 日本の常任理事国入りでグタグタ騒ぐな、とまでは言っていませんが、要するにそれに近い意思表示です。他にも大手ポータル「新浪網」の特集ページでトップ扱いで報じられていた各地の署名活動に関する記事が一昨日から消えています。これは広州系の「南方網」でも同じです。一方で署名活動に燃える糞青(自称愛国者の反日教信者)に「心の準備」を説いた『南方都市報』の例の記事、

 ●「日本の常任理事国入り」反対という激情には理性的な状況把握が必要だ
 http://www.southcn.com/news/international/zhuanti/permanant/topnews/200503300310.htm

 これは健在でトップ扱いなのです。そういえば「新浪網」の特集ページでは前回紹介した記事、

 ●呉建民氏「網民による日本の「常任入り反対」運動は理解できるが理性的な対応も必要」
 http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-04-01/26/558074.shtml

 これも主要記事としてやはり健在です。

 話題が前後してしまいますが、『南方都市報』は他にも日貨排斥をたしなめる文章を発表しています。

 ●何のための日貨排斥?
 http://www.southcn.com/news/international/gjsp/200504010330.htm

 この記事は中共の路線転換(「反日」クールダウン)を暗示するものとして香港や台湾のマスコミにも取り上げられました。

 ちなみに、成都と深センの事件に関する報道は、中国国内メディアでは全く行われていません。私のみた範囲では、そこで署名活動が実施された、という記事もありませんでした。



反日騒動下2005(14下)に続く)





コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
さすが (wowow)
2005-04-05 17:31:40
「署名活動」(中共+「なんちゃって民間組織」+御用組織主導の大学生)

「報道」(中共+メディア)

「日貨排斥」(主に小売店)

「日系スーパー襲撃」(民衆)



と段階的に分けられているのはさすがです。その主体をさらに説明する括弧の部分に脱帽です。



その中でも特に(民衆)の部分に御家人さんが、にやり、と笑っている様子が目に浮かんでしまいました。
 
 
 
Re:さすが (御家人)
2005-04-06 23:45:14
wowowさん、コメント有難うございます。



日本で事態を眺めていると、今回の「反日」は四分割かなあという印象なのです。でも現地ではまた違った感想が得られるでしょう。



「民衆」でニヤリとはしませんよ。そんな人聞きの悪い(笑)。でも珍獣や糞青が「反日」をやっていたら民衆が集まってしまって、結果的に自称愛国者が反政府運動の起爆剤になっちゃったとしたら、皮肉なものですね。



それにしても上海は動きがありませんね。昔からそういう土地柄ではありましたが、広東省の方が活発に動いているのは何だか不思議な気がします。

 
 
 
おかしいなぁ (wowow)
2005-04-07 18:24:53
にやりとしていると思ったんですが(笑)。



>結果的に自称愛国者が反政府運動の起爆剤になっちゃったとしたら

というのを待っているのかと勘違いしていました。



上海は本当に静かですね。今日領事館の前を通ったのですが、閑古鳥が鳴いていました。私の数多い偏見のなかに、反日に盛り上がるのは田舎者が多い、というものがあります。
 
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