日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





【シリーズ:反日騒動2005(10)】
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 中国における「不買・販売拒否」事件の続報です。いまや対象がアサヒビールだけではないので、「日貨排斥」といっていいでしょう。ただしまだ散発的であり、運動というほどの広がりはないので「日貨排斥事件」としておきます。今までの流れは以下を御参照下さい。

 新華社が糞青になっちゃいました。(2005/03/29)

 いまさら手遅れでは?(2005/03/30)

 日本製品の販売拒否、ビール以外にも拡大。(2005/03/31)

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 現時点までの報道を総合しての感想は、どうも足並みが揃っていないな、というところです。

 暴走気味の糞青(自称愛国者の反日教信者)と珍獣(プロ化した糞青)、さらにマスコミまでがヒートアップしている状況に、胡錦涛はたぶん手綱を引き締めてクールダウンを狙っていると私はみています。熱冷ましとして出したのが、
『中国青年報』に掲載された文章でしょう(※1)。

 ただ手綱を締め過ぎても糞青や珍獣、あるいは党内の対日強硬派などの反感を買ってしまうので、その落とし所に苦慮している、という印象です。私はこのバランスとりの難しさについて、

「外角低め、ストライクゾーンギリギリのところでボール1個分の出し入れ」

 という微妙なコントロールが要求される、と常々書いておりますが、現状に照らせばもうその段階は過ぎたと言わざるを得ません。様々な報道からいまの胡錦涛のイメージを結んでみると、制球の定まらない投手のようでもあり、投球の組み立てを忘れてしまった捕手のようでもあります。

 ともあれ、胡錦涛政権は遅きに失したとはいえ、とにかくクールダウンを図るべく動き出したようです。ただ一方で、マスコミがそれに大人しく従っていないような気振りがあります。あくまでも現時点(31日夜)までの報道から得た印象で、明日には状況が一変してみんな「いい子」になっているかも知れませんが、これは気になる動きです。

 胡錦涛が『中国青年報』を自らの広報紙として掌中に収めているように、どのメディアにも政治的保護者がいます。むろんそれが複数の人物だったりひとつの派閥だったりする場合もありますし、あるいは異なる政治勢力による陣取り合戦の場と化しているところもあるでしょう。……いずれにせよ、胡錦涛の威令が十分に届かないメディアがあるとすれば、一応「日貨排斥事件」が政争の具にされている気配をも探ってみなければなりません。

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 まあ実例をみていきましょう。胡錦涛政権側の動きとしては、きょう(31日)開かれた外交部報道官による定例会見で、アサビール排斥事件に話題が及んでいます。

 ●日貨排斥事件に外交部「経済貿易問題を政治化することは望まない」
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2769866.htm

 外交部の劉建超・報道官は記者の質問に対し、「日中間の経済交流は過去数十年の間に急速な発展を遂げた」としつつ、標題通りの回答をしています。つまり、アサヒビールはじめとした日貨排斥事件を望ましくない、とする姿勢であり、これが中国政府の公式見解ということになります。ただし同報道官は同時に、

「日本の各界が歴史問題に正確な態度で向き合うよう望む」

 と語り、事件の原因はあくまでも日本側にあるとしています。日本の国連安保理常任理事国入りに反対するネット署名運動についても同じで、

「中国に日本人民に反感を持つ空気があるとは思わない。(中略)中国民衆の不満は日本人民に向けられたものではなく、日本側の誤った態度に対するものだ」

 ……とのことです。意味がよくわからないのですが(笑)、たぶん中共が常々口にする「台湾同胞」が台湾人全てを指している訳ではないのと同じようなものでしょう。表面的な字面は別として、これは「台独派」同様、「誤った態度」を持する日本人が増えつつあり、中国にとって好ましい勢力が退潮しつつあることへの焦りが出ているようにも思えます。

 とりあえず、原因はどうあれ政府見解は
「日貨排斥は好ましくない」というものです。胡錦涛政権が日貨排斥の動きにクギを刺した、ともいえるでしょう。

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 ところが、例えば「新華網」はこれに素直に従っているようにはみえません。一応上の外交部報道官会見の記事の標題もトップページの主要ニュース一覧に並んではいるのですが、

 ●瀋陽のスーパー、歴史教科書改竄に抗議し日本製品を全て撤去
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/31/content_2766108.htm

 と、前回紹介した東北新聞網と同じ内容の記事を新たに掲載しています。これは「公式見解」より早い時間に掲載されたものではありますが、胡錦涛がクールダウンを企図している(『中国青年報』の記事)とすれば、それに刃向かう姿勢ともいえます。ただこの記事はアサヒビールに対する取材記事との合わせ技になっており、「噂は事実無根」とする同社大連支社総経理のコメントや、

「私たちは日本政府の過去の歴史に対する認識は、村山内閣が戦後50周年に発表した談話のように、日本が中国人民に多大な損失と痛みをもたらしたことについて深く反省し心からお詫びする、というものであると考えています。アサヒビールもこの精神にのっとり……」

 云々、とする同社中国総代表の声明を載せています。これがフォローのつもりなのかも知れません。

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 でも、これだけじゃないんですねえ。新華社系の時事週刊誌「国際先駆導報」の記事も転載されています。

 ●右翼日本企業が中国に潜入している?アサヒビールは中国という金鉱を自ら放棄
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/31/content_2767892.htm

 この記事は排斥事件の発端となった「右翼教科書を支援する日本企業」(※2)の続編です。文中にはアサヒビールをはじめ三菱重工、日野自動車、いすゞ自動車などの名前が登場し、

「こういった企業の中国における広告活動は地味だ」

 という広告業界関係者のコメントを紹介。また「これらの企業が地味に振る舞っているのは純粋な企業方針によもので右翼を支援していることとは関係ないかも知れない」としながらも、これらの企業が「右翼教科書」に資金援助をしている、としてその行為を非難する日本問題専門家の話も掲載しています。要するにこういう企業は中国で目立たずにカネを稼ぎ、それが回り回って「右翼教科書」への資金の一部になっているのだ、ということを言いたいようです。

 他にも電波飛びまくりで言いたい放題の記事なのですが、長くなりますので遺憾ながら割愛。ちなみにこの記事からは上記「右翼教科書を支援する日本企業」をはじめ、日貨排斥事件に関する記事へのリンクが貼られています。要するに
「もっとやれ」と煽っているようなものです。

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 さらにさらに。

 ●全世界の華人による署名は2200万人を突破、米国の華僑団体は日貨排斥を呼び掛ける
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2768343.htm

 『法制日報』から「新華網」への転載記事ですが、
タイトルから煽っていますね。そしてもう1本。

 ●反日気運の高まり反映、韓国での日本車販売が3月に激減
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-03/31/content_2768509.htm

 これは
「韓国に続け!」と言わんばかりです。「新華網」は言うまでもなく国営通信社・新華社のウェブサイトですが、「日貨排斥は好ましくない」という政府見解などどこ吹く風です。刺した筈のクギが刺さっていないじゃないですか(笑)。

 いわゆる歴史問題を遡上に乗せて論じるのと日貨排斥を煽るのは、意味も次元も全く異なります。胡錦涛政権としては前者ならOKだが後者の段階までヒートアップするのはNG、ということなんでしょうけど、それがまるで反映されていないようにみえるのです。単純な足並みの乱れなのか政争の影があるのか。前々回、この問題について『中国青年報』と「新華網」の間に温度差があると指摘しましたが、ともかく現時点でみる限り、胡錦涛は「新華網」をしっかり掌握できていない、という印象です。

 ――――

 最後に毛色の変わった記事として、広東省系の「南方網」に出た文章を紹介しましょう。これは「新華網」とは逆で、胡錦涛に足並みを揃えた内容のもの。元ネタはあの『南方都市報』(2005/03/30)です。

 ●「日本の常任理事国入り」反対という激情には理性的な状況把握が必要だ
 http://www.southcn.com/news/international/zhuanti/permanant/topnews/200503300310.htm

 この記事は面白いです。まず海外の華人をも巻き込んで展開されている署名活動の壮なることを讃える一方、いわゆる歴史問題に対する日本の姿勢に非を鳴らします。中国国民の激烈な反応については「総じていえば、蓄積されてきた憤怒と怨嗟がこの機会に噴出したもの」とし、韓国のケースのように中国政府の對日外交の後押しになっている、とひとまず評価。しかしその一方で、日本の常任理事国入りに関する最終的な結果については、

「激情だけでなく、理性的な判断で予測を施し、また今回の活動の効果と価値について評価を行う必要がある」

 としています。要するに、
「日本が常任理事国入りする可能性は高いからお前ら心の準備をしておけ」というものです(笑)。同時に、こういう勢い任せの運動は政府の後押しをしているようで、実は外交活動の足を引っ張ることになってはいないか?と自省を求めてもいます。

 「心の準備」と「自省」については後段により具体的に出てきます。文中には「日本が常任理事国になる可能性は極めて高い」というくだりもありますし、「感情に任せた抗議では、日本にその非を気付かせ、悔い改めさせることはできない」と、切々と説く部分もあります。

 ネット署名に付されたメッセージの多くは、中国が日本の常任理事国入りに対して拒否権を発動するよう求めているそうです。しかしそうした要求が強まるほど中国外交の足かせとなり、自由度を奪うのだとこの文章は説き、中国が最後にどういう決定を下そうと、それは国益を追求する立場からなされた判断なのだから、アサヒビール排斥事件や昨年のアジアカップの騒ぎのような激情で政府の判断をどうこうしてはならない、と論じるのです。

 ……ええ、日本が常任理事国になってもまずは落ち着いて、くれぐれも
中国政府に怒りの鉾先を向けるなよ、というのが主題のように思います。

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 全く関係ないのですが、戦争を舞台にしたハリウッド映画、例えば「パールハーバー」でも「プライベートライアン」でもいいのですが、観ていると米軍には神父さんだか牧師さんだか、とにかくそういう人が部隊と一緒に行動していて、被弾して断末魔でピクピクしている戦死直前の兵隊さんの元に屈み込んで、何やら読経のようなことをして引導を渡してあげていますよね。私はこの『南方都市報』の記事を読んで唐突に、何の脈絡もなくその場面を思い出してしまいました。

 さて、明日の天気はどうなることか(笑)。動きがあれば続報を出します。


 ――――


 【※1】民族主義の興奮に民主の理性を覆い隠させてはならない
     http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-03/29/content_1058075.htm

 【※2】アサヒビールやいすゞ自動車など10社、日本の歪曲された歴史教科書を賛助
     http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/28/content_2752743.htm



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深読みだが (大丈夫?)
2005-04-01 08:27:09
毎日新聞上村記者のコラム

悲しくて美しい=上村幸治

http://www.mainichi-msn.co.jp/column/hassinbako/archive/news/2005/03/20050331ddm002070036000c.html



記者の肩書きと併せて読むと趣き深いです。

本当幸せそうです、中国と韓国。
 
 
 
15億の珍獣 (かゆ)
2005-04-01 13:55:35
以前から糞青のネット活動を戦前の日貨排斥運動に重ねて見ていましたが、中共お墨付きで実際の行動に移ってきたかーという感じです。



歴史は繰り返す、民族性は容易に変化しない、まさにその通りですね。いちいち相手にしても体が持たず、コダックでもサムスンでも好きに買わせればいいと思います。大勢に影響はないでしょう。だって日本人は人間ではないとか言っている糞青のアバターを見てください、マクロスとかエヴァとかサクラ大戦とか・・・。口先だけの反日な上、抵制日貨を進める意思と能力を持ち合わせていないとしか考えられません。それに私の記憶ではマトモな品質で手に入るものは殆どが日中合資企業であり、結論として日貨排斥運動は無駄と投げる無気力感があったように思います。それでパイオニアとか横文字企業はOKだがアサヒや鹿島のような日本語の企業は右翼だから駄目だとか支離滅裂になったり・・・。



それにしても改めて感じるのは漢民族と言うものの異常性ですね。情報統制の大陸糞青ならともかく海外華僑も含めて穏健派すら「日本政府が歴史を認めないから仕方がない」と反安保理活動やサイバー攻撃に参加し、自省に向かうことが全くないですから真性のナルシストで手の施しようがありません。数だけは多いですが馬鹿なのが唯一の救いです。この問題はこの先数世代は続きそうに思います。日本人が土人の絶叫を正面から繊細に受け取り、そのうち切れたりするほうが恐ろしいです。

 
 
 
どこへ行くの? (1読者)
2005-04-02 01:23:33
今晩は。



 日貨排斥。この際赤裸々な中国の指導部の姿を見てみたいというのが本当の気持ちです。このままどんどん吐き出し、心の底にある精神的病をみせてほしいと思ったりします。でも病が進行すると肥大化した自己顕示欲を満たすため、周囲に対し争いを仕掛ける感じがします。とりあえず主敵の友達をいじめる形ではじめるのではと思ったりします。



 激しい中国の動きの対極というのでしょうか、大丈夫さん紹介の毎日の記事を見て、溜息ともなんとも言えない気持ちがぽっかりでてきました(鬘以来ですね)。



 そこにある風景の意味を、自らの目を通しそっと人に伝えることの平衡感覚というのでしょうか、見ず知らずの人々に少しだけ考えてもらえるような事とは何か、そんな謙虚な気持ちを見た思いです。これは大きなメディアの一員故の責任と良識なのだと考えたりします。



 でもなんでしょうか、一抹の寂しさを感じる記事です。
 
 
 
Unknown (Skai2)
2005-04-02 23:18:45
まあ、中国政府は卓球少女、愛ちゃんまで持ち上げて、どうにか関係を改善しようと努力している訳でして

 
 
 
Re:深読みだが (御家人)
2005-04-03 00:07:50
大丈夫?さん、いつも情報有難うございます。



リンク先拝見しました。私は上村記者の文章に味わいを感じる者のひとりです。深読みの通りだと思います。ただ今回は……レイアウト次第じゃないでしょうか。このコラムが国際面に出て、中国や韓国の「反日」を伝える記事があれば、あるいは最近その種の記事がしばしば出ているのであれば一般の読者にも理解してもらえるでしょうが、そうでないと「中国総局」だけでは……新聞で使っていい暗喩の範囲を超えているように思います。



あと文末の「記者の大事な技量である」には臭味を感じます。もう少し他の言い方があってもいいような気がするんですけど。

 
 
 
Re:15億の珍獣 (御家人)
2005-04-03 00:08:57
かゆさん、コメント有難うございます。



>だって日本人は人間ではないとか言っている糞青のアバターを見てください、

>マクロスとかエヴァとかサクラ大戦とか・・・。



これは本当にその通りですね(笑)。「真性のナルシスト」とはまことに言い得て妙だと思います。海外華僑については運動の盛り上がり方がよくわからないのですが、どういう教育を受けたのであれ、「小日本」を良くは思っていないのではないでしょうか。だから署名はするという華僑は少なくないと思います。あと国によっては、この運動が現地における華僑というグループの存在誇示という側面もあるのかも知れません。



日貨排斥は、日貨排斥のままなら大事には至らないと思います。ただこういう政治的かつ民族・愛国という可燃度の高いテーマで大勢が集まると、知らぬ間に鉾先が変わっていたりするから怖いのです。



あと胡錦涛政権は「署名はいいけど日貨排斥はやめろ」というスタンスのようです。「やめろ」と言えずに「好ましくない」ぐらいかも知れません(笑)。とりあえず御墨付きではないと思います。



「支那人」に自省はあり得ませんね。仰る通り歴史は繰り返すのかも知れません。中国の実態が四捨五入せずとも経済植民地であることに、いずれ気付くことになるでしょう。

 
 
 
Re:どこへ行くの? (御家人)
2005-04-03 00:09:40
1読者さん、いつもコメント有難うございます。



いま署名運動をやっている連中は政治運動を経験していませんから、歯止めがきかず盲目的に突っ走る一方でしょうね。いまは調子に乗っていますが、騒ぎが大きくなれば利用されるか弾圧されるか、という末路になるかと思います。



報道から判断する限り、胡錦涛政権はこの運動なり日貨排斥の問題を日中関係の中で捉え、処理しようとしているようです。これが内政問題扱いになったときが見物だと思います。
 
 
 
Unknown (御家人)
2005-04-03 00:10:37
>まあ、中国政府は卓球少女、愛ちゃんまで持ち上げて、

>どうにか関係を改善しようと努力している訳でして



Skai2さん、鋭い御着眼です。あの外交部報道官会見、私もそのくだりで和みました(笑)。でもあれ、関係改善の努力の一環なんでしょうか?



中国側が関係改善に動く前のオロオロしている段階で、日本側が先手を打ってガツンとやってほしいところです。
 
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