一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『MAKERS』

2013-05-14 | 乱読日記

オープンなネットワークと製造技術のデジタル化でモノづくりの仕組みが変わっていくというのは、実家が零細町工場だった身としては感慨深いものがある。

サプライチェーンといえば聞こえがいいが、昭和の町工場はそれぞれの技術や製造設備で作った部品や半製品を順々に後工程の会社に納品し、最後に最終製品を製造する企業におさめるという、言ってみれば食物連鎖のようなピラミッドを形成していた(今でも大半はそうだと思う)。
実家は最終納品者からの仕事が比較的多かったのだが、その分頂点の企業も大きくなく、ロットも小さい仕事になる。
さらにそこから業容拡大しようとすると、機械設備や要員(営業・製造)への投資が必要でさらには手狭になると工場の拡張が必要になる。それは経営規模の小さな(大概は家族経営の)町工場にとっては大きな賭けになってしまう。
当然のことながら賭けに連続して勝つことは難しいため、零細企業から中小企業へのハードルは高いことになる(ひょっとすると中小企業から大企業に成長するハードルより高いかもしれない)。

本書の提示する世界-中規模ロットやカスタム品のマーケットの可能性-はそんな日本の町工場にとっても魅力的なものだと思う。
商品スペックと簡単なコミュニケーションがメールを介してできればそこに参入することはできるし、その程度の英語力についていえば、日本の英語教育も馬鹿にしたものではないと思う(自分の経験上)。
また、日本でも「ビット」と「アトム」を横断するコミュニティができる素地はあると思うし、それがいちばんだと思う(既にあるのかもしれないが)。

ただ、本書で紹介されるような「こういうことができたら面白い・便利だ」と思ったらとりあえずやってみる人々がいて、それらがネットワークになって何かを生み出していく、というダイナミックな広がりができるには、日本のビジネスマンは忙しすぎるのかもしれない。
「ボランティアで協力すると言っても残業が・・・」という声が聞こえてきそうだ。
「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が流行りだが、仕事と家庭生活・余暇のonとoffだけでなく「趣味と仕事の間」というのを許容、それ以上に推奨することが必要かもしれない。
労務管理や人事評価の手抜きのための方便でもある「副業禁止」や「職務専念義務」は、そろそろお蔵入りにしたほうがいいかもしれない。

そして、グローバルな「MAKERS」のネットワークを前提にすると、通関手続きとかEPA・FTAにおける原産地証明のルールとかも変える必要が出てくるのかもしれない。


いろいろな方向に考えが広がる刺激に富む本でもあるし、読んでいて自分も元気になるのがとてもいい。




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