一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『地球と一緒に頭も冷やせ!』

2008-11-10 | 乱読日記
『正しく知る地球温暖化』と一緒に買った本。

こちらの方が網羅的に現在の地球温暖化議論や京都議定書の問題点を論じています。

上の本が科学者の著者が京都議定書のもとになり温暖化問題の旗振り役を務めているIPCCの議論の前提に異議をさしはさむものであるのに対し、本書の著者ビョルン・ロンボルグは統計学者で、広範なデータをもとに、地球温暖化のリスクとCO2排出削減を主とする対策の問題点について論じています。

著者はコペンハーゲンコンセンサスという会議を主催し、世界の大問題に対する解決策の優先付けを試みるなど、主に費用対効果から温暖化対策を分析します。

そもそも温暖化のリスクといわれているものは温暖化が原因でなかったり(洪水の被害の増加はもっぱら危険流域に居住者や財産が増えたことによる)、逆にメリットの方が大きかったり(世界的には高温での死者より低温での死者のほうが多い)するうえに、温暖化対策として唯一の切り札のように言われているCO2削減は、費用対効果の点からいえば今のまま何もしないでいるよりもデメリットの方が大きい、ということを膨大なデータから論証します(何しろ主に出典を記載した注が1116個もあります)。

著者のロンボルグ自身、母国デンマークでデンマークアカデミーの科学的不誠実委員会(そういうのがあるんですね)に訴えられ、委員会で「主観的には誠実だが客観的には不誠実」という妙な表決を下されました(もっともこの表決はロンボルグの異議を受けた所管官庁によって取り消され、審査のやり直しを命じられた結果、結局訴えが取り消されて終了しています。この話は『正しく知る地球温暖化』でっもちょっと触れられていました。)。
本書はそういう「魔女狩り」をもたらしているメディア(誇張や犯人探しをする習性がある。つい30年前は地球寒冷化・氷河期の再来がブームだった)・政治家(壮大な話+長期的な約束+当面の予算が要らないという点でCO2削減は恰好のテーマ)・経済学者(冷静な費用便益の比較のない目立ちたがりのトンデモ論文が跋扈している)・科学者(議論が政治化してしまう)の関係者たちの立場も断罪しています。


翻訳は山形浩生氏でいつもの文体です。
これは好き嫌いが分かれるかもしれませんが、議論が広範囲で引用も多い本書では頭に入りやすいのであっているように思います。


2段組300ページ弱とけっこうボリュームはありますが、温暖化問題の論点を幅広くカバーしているので関心のある方は一読をお勧めします。




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