一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『超・格差社会アメリカの真実』

2007-02-01 | 乱読日記

一昨日のエントリで紹介した開発経済・グローバリズム関係の本と一緒に買ったものです。

著者の小林由美氏は1975年に東大経済学部を卒業し(OBに優秀な人が多いと言われる小宮隆太郎ゼミ(※))長銀に初の女性エコノミストとして入社後、スタンフォードでMBA取得、以後米国で26年間証券アナリストを経てコンサルタントをされている方です。
(※ 以前小宮ゼミ出身を自慢にしている人から散々聞かされたものでちょっと言及してみました・・・)

著者は現在のアメリカは「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」の4つに分類できるといいます。
特権階級は純資産1億ドル以上の5400世帯、プロフェッショナル階級は純資産2000万ドル以上でかつ年間所得20万ドル以上の500万世帯をいい、この2階層=総世帯の5%に全米の富の60%が集中しています。

しかしこの格差のレベルは、1920年代(大恐慌直前の「狂乱」の時代)にも現出しており、その後第二次世界大戦を経て経済成長の中で中産階級が増えた(1960年代のアメリカのTVドラマの世界ですね)ものの、80年代以降富の集中が加速して現在に至っています。

著者はその格差の現実と、その由来を建国にまで遡って分析し、さらに富裕層が再生産・承継されるメカニズムや庶民がその格差を是認している背景などについて詳しく分析しています。

著者自身はシリコンバレーをベースに活動しているためか、文章の端々に東海岸の金融資本への嫌悪感が出ている感じはしますが(原因と結果が逆かもしれませんけど)、幅広い資料と知識をベースにした分析は(アメリカに住んだことのない私にとっては)説得力があります。
また、ときおり横道にそれるところもアクセントがきいていて楽しめます。
(たとえば多くの人材を輩出したスタンフォード大学にある共和党系のシンクタンク「フーバー研究所」の影響力に言及するなかで、コンドリーサ・ライスやジョージ・シュルツがフェローであったが、実は日本人で同研究所のフェローに就任できたのは、かの「ミラーマン」植草一秀氏唯一人であることなど)


そして筆者は最後に日本で問題になっている「格差」とアメリカの「格差」問題の違いをつぎのように分析します。

ひとことでいえば、日本の格差は「職業選択と労働報酬」の問題であり、アメリカの格差は「資産」の問題だからだ。

アメリカのように資産の格差が広がってしまうと資産が自動的に所得を生むので等比級数的に所得の格差が広がる(ロバート・キヨサキの「金持ち父さん」の戦略ですね)のに対し、日本における給与格差の問題は給与の格差自体にあるのではなく高いスキルを身につける機会とそれを発揮できる機会が平等にあるかという問題であり、まだ対策を立てやすいのではないか、ということです。

もっとも 森永卓郎氏が「年収150万円と3000万円で“税率”が同じ国」というコラム(http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/58/ 日経BP社のサイトに登録(無料)する必要があります。)で社会保険料込みの税負担額を計算すると税の逆進性が見られ、収入格差が資産(貯蓄の格差)につながりやすい制度になっていると警鐘を鳴らしています。
※ 実は本書でも72~77ページでアメリカの制度について同じ分析をしていて、本書が2006年9月25日初版、森永氏のコラムが2006年11月20日なので、本書が元ネタなのかもしれませんね。


ただ筆者は自力でキャリアを切り開いてきた女性として、日本の格差(ニート・フリーター)問題について、批判するだけではだめで、日本社会の一人ひとりの真剣な努力が必要であるとも強く言っています。

ここの部分は感銘を受けたのでぜひ引用したいと思いましたが、長くなるので今日はここまでとして、明日に続きを書こうと思います。






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