米国で日系企業などを顧客にしている弁護士の著者が、自らの経験から交渉のノウハウをまとめた本です。
僕自身の経験では本書の帯のキャッチコピーのように「交渉下手な日本人」というステレオタイプへの反発心や「俺は違うんだ」というプライドがかえって交渉のマイナスになっていることが多いと思うので最初は期待していなかったのですが、本書の内容は文化論でなく、あくまでも「交渉」のためにどのような行為がプラスでどのような行為がマイナスなのか、という点に絞られて、エピソードをもりこみつつわかりやすく書かれていて、「そうそう」「なるほど」と思いながら一気に読みました。
筆者は、無駄なプライドや意地が交渉においては百害あって一利なしということは繰り返し強調しているので帯のコピーは出版社がつけたんでしょう。
自分が相手より賢いことを証明するために交渉をしているわけではない。より多くの果実を得るために交渉しているのだ。頭に血が上ったら、相手の主張を認めるのが悔しくなったら、いったん原点に戻ろう。
自分が相手より優れたネゴシエーター(交渉人)であることを立証するために交渉するのではない。あくまで交渉の果実を最大化するために交渉するのだ。
交渉に同席すると、人は自然に、自分の存在をアピールしようとする。自分ならではの意見、コメントをしたくなるものだ。(交渉チームは、必ず少数精鋭を目指す)
交渉相手の態度が悪かったとしても、その態度を正す必要はまったくない。相手に態度を改めさせるのは交渉ではない。
これは常日頃僕も思っていて、自分が賢いとか詳しいことを主張するため議論を「頭のいいオジサンコンテスト東京地区予選」などと揶揄していたのですで、このへんのくだりにはとても共感できます。
同じく「そうそう」の部分としては
事前に決めた「落としどころ」から絶対にぶれない
「交渉期限」を設けると、土壇場で不利になる
交渉では相手に「勝った」気分になってもらうことが大事だ
交渉相手が何を望んでいるかを、しっかり見極めることも大事だ
など。
また「なるほど」としては
最初のオファーは必ず相手にさせよ
「ノー」と言うな、「イエス、イフ」と言え
「イエス」の場合でも、やはり「イエス、イフ」と言え
最初の譲歩は、あなたにとっての「最大の譲歩」であるべきで、その後は徐々に、譲歩の幅を小さくしなければならない。
本当にボトムラインに達していない限り、あなたの側から「ボトムラインに達した」と言うべきでないのだ。
などなど。
さっと読めますが、自分の交渉スタイルを改めて見直すのに役立つと思います。