一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

再発防止のために必要なもの(構造計算書偽造問題 その6)

2005-11-26 | あきなひ

耐震強度偽装、「見逃し」自治体も困惑
(2005年11月25日 (金) 12:39 朝日新聞)

耐震性が不足している設計のホテルが、神奈川県平塚市の建築確認をすり抜けていた疑いが強まった。建築確認したのは自治体なのに、安全が確認できないとして営業を休止しているホテルは、愛知県刈谷市や長野県松本市にもある。

民間の検査機関が建築確認できるようになった99年以前に自治体が行った審査の信用性にも疑いが生じている。

前にコメントしたように(こちらの記事の最後のほう)、今回の事件は建築確認を民間に委託したから起きた、という議論は問題の所在をミスリードするように思います。

今回の偽造が単純なもので、民間の検査機関や役所がそれすら見抜けなかった杜撰な検査をしていた、というのなら、再発防止はそこの検査機能を強化すればいいわけですから比較的容易です。

しかし事の本質は、今回の偽装が建築確認のしくみが想定していない悪質な偽装だった、というところにあるのではないでしょうか。


すべての検査、確認のしくみは関係者に一定レベルの信頼がおける、という前提で成り立っています。そのために公的な資格があるわけです。

逆に関係者が全く信用が置けない、となると、隅から隅まで徹底して調べなければならなくなりますが、そうすると世の中すべてのしくみに膨大な経済的・時間的コストがかかってしまいます。
極端な話、大臣認定ソフトウエア自体の改ざんとかまで考えると、構造計算を建築確認をする企業や役所が一からやり直さないといけなくなってしまいます。


ところがここ数年、雪印乳業の賞味期限切れ牛乳の再利用、三井物産のディーゼル触媒のデータ改ざん、三菱自動車の欠陥隠しなど、「さすがにここまではやらないだろう」と思われるような出てきて、従来の常識は崩れつつあるように思います。

上の企業は大企業でしたので、役員の辞任、社会的な制裁や株式市場での評価というペナルティがそれなりに効を奏して、他の大企業もコンプライアンス態勢の充実に取り組むようになってきた訳です。


しかし、今回の姉歯建築士のような「背に腹は替えられない」という個人事業主や、ヒューザーのような自分の会社の急成長しか視野にないオーナー企業に対しては社会的制裁では限界があるということが明らかになってしまったと思います。

となると、今後は世の中の諸制度を上手く機能させるためには、刑事的な罰則の強化(木村建設のように破産に逃げ込んだときのための経営者個人への両罰規定の強化も必要かもしれません)や懲罰的賠償のような民事的な制裁の強化をしていかないといけないのかもしれません。


それが社会全体にとっていい方向ではないとは思えないところが悩ましい部分でもありますが・・・

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コンプライアンスと現場の取... | トップ | 中国の汚染事故と川下・風下... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

あきなひ」カテゴリの最新記事