一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

みんなで大家さん

2013-06-01 | あきなひ

ネット上で話題になってましたが、けっこう影響が大きいかもしれません。

大阪府「不動産特定共同事業者に対する行政処分について」…都市綜研インベストファンド株式会社
http://www.pref.osaka.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=13478

5.処分の理由
平成24年5月より実施している立入検査の中で、被処分者の平成23年度貸借対照表において、下記1から4の会計処理により約32億円の資産過大計上となっていることが判明した。
(過大計上約32億円を控除した被処分者の資産の状況:平成23年度末)
(3)  純資産 
▲約31億円((1)-(2))

実はこの会社は既に昨年行政指導を受けています。

不動産特定共同事業者に対する行政処分について(2012年8月28日)
--大阪府が不動産特定共同事業法に基づき行う処分は初めてです。-- http://www.pref.osaka.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=11162

この段階では債務超過の(その前に資本基準を満たさない)可能性についてチェックできなかったわけです。


昨年の8月にはファンドの販売会社である都市綜研インベストバンク株式会社という別会社も同時に行政処分を受けています。

東京都「不動産特定共同事業者に対する行政処分について」(平成24年8月22日)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/08/20m8m500.htm

しかも、この時点で両社は処分に対しこういうリリースをしています。

監督官庁からの行政処分についての詳細のご報告及び再発防止に向けた体制強化のお知らせ(平成24年8月30日)
http://www.minnadeooyasan.com/_/news/upload/13463129038511_hpkaiji2012.8.30.pdf

(1)会計処理にについて
 当社は会計方針や会計基準については原則として法人税法関係諸法令(法人税法、法人税法施行令、法人税法施行規則及び法人税法令解釈通達、以下「法人税法等」という。)の規定に基づき会計処理を行って参りました。これは不動産特定共同事業法(以下「不特法」という。)の許可を取得し、事業を開始した当初より、不特法が目的とする事業参加者(出資者)の保護と不特法事業の健全な発達に寄与するために、健全な会社経営を行うためには、税務上の要因による比重がキャッシュ・フローに大きく影響を及ぼす事が理由です。
 また不特法は会計処理に対して何ら法規制は無く、当社は非上場企業ですので、金融商品取引法以上にコンプ ライアンスに重点をおいた法人税法に則り会計処理をしております。当然そのベースには企業会計原則を元に会計処理をしておりますが、より法人税法において健全性・保守主義の原則に則り処理しております。

(3)その他記載ミス等について 対象物件「みんなで大家さん6号」においては交付書面の一部に・テナント名称の記載漏れ・最近5年間の賃料と費用が無い旨の記載不備が認められましたが、これら一連の記載漏れの原因を当該書面の作成担当者に確認したところ、当該記載漏れは故意にやったことでも、悪意で行ったことでもなく、単純なミスとのことでしたので、不正行為は認められませんでした。

などと、投資ファンドの運営が家族経営の町工場か商店の経営と同じといわんばかりのアヴァンギャルドな主張をしています。

これを見てなお投資するような客層を対象にしているという点でも、(「行政処分は初めてです」などと浮かれていないで)継続的に監視する必要はあったと思うのですが、
更に、「バンク」社の方は

【一部事業分割の予定のお知らせ】(平成24年11月5日)
http://www.minnadeooyasan.co.jp/cms/uploadfolder/1.3520844331232E+15_news_kaisyabunkatu241105.pdf

 ・・・先日発表致しました企業方針に則り、不動産の売買・分譲・開発等の事業を行っている当社の事業部門を会計監査の対象となる不動産特定共同事業部門と分離する予定と成りましたのでご連絡いたします。 具体的には不動産特定共同事業を行う部門を存続し、新名称を「みんなで大家さん販売株式会社」と致します。また、それに伴いまして不動産の売買・分譲・開発等の事業を継承する新会社を設立し、「都市綜研インベストバンク株式会社」の名称を継承致します。

と これは平成25年4月1日の不動産特定共同事業法施行規則の一部改正 (参照) により、不動産特定共同事業の許可申請において監査を受けた財務諸表の提出が義務付けられたことへの対応だと思われますが、 要するにまともな会計処理をしていなかったし、必要がある部分しかするつもりはない(贔屓目に見ても能力がない)、ということを言っているわけです。

当局には変更届が出されているはずなので、一度行政処分を出している会社がこのような動きをしているのであれば、そこでも要注意のフラグを立てるチャンスはあったわけです。


不動産特定共同事業法(不特法)は、国土交通省と金融庁の共管になっていますが、金銭出資型でかつ終了時の残余財産・出資の返還が金銭により行われ るもの以外は国土交通省の所管になっています。(法49条)

ただ、今回のようなことが起きると、「大阪府住宅まちづくり部 建築振興課 宅建業指導グループ」とか 「東京都都市整備局住宅政策推進部不動産業課」では荷が重いのではないか、という議論が出るかもしれません。

さらに、元をたどれば、不特法はバブル期に自らが運用する不動産に投資を持ち掛けて出資者との間でトラブルになったことから、それを規制しようとした法律なので、こういうのが続出すると、監督の強化以上により規制が厳しくなる可能性があります。
しかし現物不動産である以上分別管理が難しいので、投資家保護を突き詰めていくと、今度改正される法律で導入されるSPC型か信託に入れる必要が出てきます。

信託受益権になるとそもそも有価証券ですし、SPC型もSPCへの出資権を有価証券としてしまえば金商法でひとくくりにできるじゃないか、ということになり、不特法の存在意義自体が問われかねません。
不動産業者にもできる証券化手法が必要、と言っても、「不動産業者にやらせるからこんなことになるんだ」という批判への答えを用意する必要があります。

不動産証券化市場に確保した不特法という「出島」を維持するために、国交省はどういう策を取るのでしょうか。



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