「ごく普通の人にもある程度は正しい病気の知識を身につけてほしい」と書かれた本。
細胞の損傷・適応・死、血流の異常のメカニズム、そして後半は今や「病の皇帝」であるがんの発生・増殖の仕組みや抑制・予防について書かれている。
高校の生物・化学知識を引っぱり出しながら概ねは理解できた感じ(いつも通り、もっとちゃんと勉強しておけばよかったという後悔は先に立たず)。
著者の実際の講義もそうらしいが、脱線やたとえ話が多く、それらが面白い(ここが合わないと読んでてつらいかも)。
いくつか面白かった話をメモ
・がんの死亡者数が増えたのは高齢化が原因。死亡率を年齢で補正すると女性は1960年代からずっと、男性も1995年以降は減少している。「日本人の死因の第一位はがん」という保険会社のうりこみを真に受けてはいけない
・タスマニアデビルは伝染性のがんで一時絶滅の危機に瀕したが、わずか20年、4~6世代で抵抗性を獲得しつつある。
・分子標的薬はピンポイントの薬なので、がんも変異すると効かなくなってしまう。薬が細分化するほどコストは高くなるが、日本の健康保険制度はそういう医薬品を前提に設計されていない。「命をお金に換算せざるを得ない時代」がやってきた。
ちなみにアメリカ、イギリスではQOLを維持する年間のコストとして500~600万円が限界と言われている。
★4.5