「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

経歴隠し 孤独な日々--更生への道(3)

2010年07月01日 19時41分00秒 | 罪,裁き,償い
 
 男 (61才) は、 知人の女性に暴力をふるう 夫を刺殺し、

 懲役12年の刑を受け、 2年の刑期を残して 今年仮釈放されました。

 本当は、 数珠を肌身離さず持ち、 仕事の合間に 被害者の冥福を祈りたい。

 でも、 自分の過去を知らない 同僚の目が気になるのです。

 毎日 事件のことを振り返り、 般若心経を唱えます。

 ナイフで刺したときの感触、 被害者の苦しむ顔が 甦ります。

 妻子や親とは 縁が切れ、 更生保護施設で 求職活動を始めました。

 しかし 前歴を告げると、 立て続けに断られます。

 途中から経歴を偽り、 100社も回って やっと運送会社の 採用が決まりました。

 年下の同僚でも 相手を立て、 会話が弾むように 気を遣います。

 寡黙なために  「過去に何か あったんじゃないか」 と、

 噂されるのを避けるためです。

 もしも、ネットで 自分の事件のことが 知られたら、 そうなっても

 「戦力」 として認められるよう、 信用を高めるしかないと 覚悟を決めています。
 

 別の元受刑者 (60代) は、 借金苦から 無理心中を図って 妻と次男を殺し、

 3年前に仮釈放されました。

 「こんなに苦しみながら 生きていくより、 死んだ方がましだ」

 そんな男性に 生きる力を 取り戻させたのは、 小学校の同級生の女性でした。

 「辛い思いを抱えて 生きていくのが償いでしょう」

 女性はこう言います。

 「刑を終えて 社会に戻った人が やり直すには、

 前歴を知りながら 支える人が 必要だと思う」

 元受刑者は 最近、 自殺を考えなくなったことに 気付きました。

 「こんな自分でも 受け入れてくれる人が いると分かりましたから」
 


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