「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

高齢者の救急 (1) -- 見込みがなくても心肺蘇生

2012年06月20日 20時32分19秒 | 介護帳
 
 仰向けになった高齢者にまたがり、

 両手で胸を強く押しつける  「胸骨圧迫」 という心肺蘇生術。

 衰えた体には 負担になる処置です。

 食べ物が喉に詰まって 呼吸が止まる 緊急の事故などで、

 119番を呼ぶのは当然です。

 しかし高齢者の場合、 心肺停止は  「長年の病気の終着点」 と思われ、

 「お別れの時期」 を 受け入れる時かもしれません。

 ある高齢者施設で、 心肺停止で救急搬送された 664人を調べたところ、

 脳の機能が回復して 意識を取り戻したの0.9%でした。

 しかも回復した例は、 発症してすぐに処置できた 場合に限られていました。

 別の病院では、 施設から救急搬送された 31人の高齢者のうち、

 生きて退院したのは6人。

 全員に 重い障害が残りました。

 事故の場合を除き、 心肺停止した時は 蘇生をしないことを、

 入居者・ 家族と話し合って 決めている施設も増えてはいます。

 しかし  「救急車を呼ぶのが 内部のルール」 などの理由で、

 冷たくなり始めた高齢者を 搬送するケースもあるといいます。

 ある医師は こう話します。

 「高齢者に胸骨圧迫は しなくてもいいのではないかと、 正直思うことがある。

 施設入所時に全員から 蘇生の希望を聞くのを ルール化すべきだ」。

 見込みのないことが分かっているのに 行なわれる蘇生術は、

 患者と医療者の双方にとって 良いことではありません。

 敬意を持った 見送り方ができるよう、 個々の施設で話し合うときです。

〔読売新聞より〕