「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

制度 行方は -- 償いの意味 (12)

2009年06月28日 20時34分51秒 | 死刑制度と癒し
 
 昨年10月、 国連欧州本部で、

 日本政府代表団は 国連の規約人権委員会と 向き合っていました。

「 わが国の世論の多数は、 極めて悪質、 凶悪な犯罪については

 死刑も止むを得ないと 考えています 」

 外務省大使が説明すると、 人権委員は答えました。

「 死刑廃止国でさえ、 世論は死刑賛成でした。

 世論を根拠に 死刑の問題に 対処すべきではないのです 」

 人権委は日本に、 「 死刑廃止を前向きに考慮し、

 国民に対して 廃止が望ましいことを 伝えるべきだ 」 と勧告しました。

 死刑を廃止・停止する国は 年々増えています。


「 人殺し! 」

 そんな叫び声が、 最高裁の法廷で 裁判官に浴びせられた 時代がありました。

 80~90年代、 死刑廃止を求める市民団体が、

 死刑判決の度に 声を上げたのです。

 しかし オウム事件が起きて、 被害者支援の世論が 高まってきました。

 法廷の被害者遺族の前では 声を上げづらくなり、

 死刑廃止運動には 厳しい時代になりました。


 ヨーロッパの人は 人権尊重のような普遍的理念を

 精神の根底に 持っているのに対し、

 日本人は その時々の社会の規範、 現在なら 

 凶悪犯罪に 厳罰を求める姿勢を 重んじるといいます。

 さらに日本人には、 究極の償いを求める 精神文化があるそうです。

 諸沢英道教授は 被害者学の立場から指摘します。

「 刑罰は、 世論と被害者感情の 両方を考慮して 社会が決めるもの。

 被害者を孤立させない 支援体制が整わない限り、

 極刑を求める 遺族の思いは変わらない」

 まず 死刑の現状を知り、 民主主義が根付いている日本で、

 死刑がなければ 治安が維持できないかを 考える必要があります。

 裁判員制度がスタートしました。

 これまで国民は、 主権者である自分が

 死刑制度を維持してきたことに 無自覚でしたが、 裁判員になれば、

 人の命を絶つ 刑罰の重さを 突きつけられることになるでしょう。

〔 読売新聞より 〕