「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

遠のく仮釈放 -- 償いの意味 (6)

2009年06月21日 14時58分33秒 | 死刑制度と癒し
 
「 一日でも早く 仮釈放になりたい。

 だけど 亡くなった人のことを 思えば、 むやみにそうは言えない 」

 刑務所に入って 25年以上の無期懲役囚、

 坊主頭には 白いものが交じっています。

 未成年の男性の 命を奪い、 無期懲役が確定しました。

 入所したとき、 頑張れば 15~16年で出られると、 職員に言われました。

 ところが、 無期懲役囚の仮釈放は 年々遠ざかりつつあります。

 仮釈放までの平均受刑期間は、 98年が 20年10ヶ月でしたが、

 07年は 31年10ヶ月と 大幅に延びました。

 有期刑の上限が 懲役20年から 30年に引き上げられ、

 犯罪被害者が 仮釈放の慎重な運用を 望んでいる背景があります。

 70歳の ある無期懲役囚は、 服役が40年になり、

 脱け殻のようになってしまいました。

 別の無期懲役囚は、 終点が全く見えず、 精神的負担が大きいと訴えます。

 一方、 無期懲役囚の間で、 刑務所で 一生を送るしかないなら、

 居心地よく過ごそうという 意識が広がってきているようです。

 このような状態では 真の反省を求めるのは 難しいと、

 教誨師の牧師は嘆きます。


 高橋義政・ 無期懲役囚 (29) は、 服役中に勉強し、

 いつか 税理士の資格を取りたいと、 担当弁護士に伝えました。

 二人を殺害して 死刑を覚悟し、 生きる気力も失いました。

 一審・二審は、 父親の虐待など 劣悪な成育環境の 影響に言及し、

 無期懲役を選択しました。

「 初めて 自分の言葉を 真剣に聞いてもらった 」

 裁判所に感謝の気持ちを述べるようになりました。

 刑務作業で得たお金を 遺族に支払っていく 決意もしました。

「 勉強したことを 社会で生かす希望を 捨てないでほしい 」 と、

 弁護士は願っています。

〔 読売新聞より 〕