「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

苦悩の中の愛

2009年01月25日 21時23分55秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57332523.html からの続き)

 当時、 僕は毎日 苦衷の日記を、

 何頁にもわたって びっしりと書き連ねていました。

 分厚い日記帳を 2冊書きつぶしました。

 一方 クリストフは、 故国のドイツから 新天地パリへと移りました。

 今度こそ 自分の芸術を理解してもらえると、

 クリストフは 希望を抱いていました。

 しかし彼は、 ここでも再び その期待を裏切られるのです。

 彼に対する非難は、 沈黙へと変わりました。

「 クリストフは またもや、 敵意を含んだ 他国の大都市の中で 孤立した。

 今までになく ひどい孤立だった。

 しかし彼は もはや気にしなかった。

 これが 自分の運命である、 生涯この通りだろう、 と

 彼は信じ始めていた。

 彼は知らなかった、

 偉大な魂は 決して孤独でないことを、

 時の運によって 友をもたないことがあるとしても、

 ついにはいつも 友を作り出すものであることを、

 それは 自分のうちに満ちてる愛を 周囲に放射することを、

 また、 自分は永遠に孤立だと 信じてる現在においても、

 彼は 世の最も幸福な人々より さらに多くの愛を 他から受けていたことを。 」

 当時の僕は、 それを必死になって 自分に言い聞かせていました。

 僕を最も救ってくれた 言葉のひとつです。

〔 「ジャン=クリストフ」 ロマン=ロラン (岩波文庫) 豊島与志雄 訳 〕

(次の記事に続く)