「犯罪者の家族を守る」 という、
これまで 光が当てられなかったテーマを 描いた秀作です。
脚本・ 監督は 「踊る大捜査線」 の君塚良一で、
殺人犯の家族を マスコミや世間の攻撃から守る 刑事・勝浦を 佐藤浩市、
犯人の妹・沙織を 志田未来が熱演しています。
東野圭吾原作の 「手紙」 でも、
犯罪者の家族が受ける 被害や苦悩を描いていましたが、
本作品のほうが 事件直後の生々しい 緊迫感や迫真力があります。
そして 現代ならではの、
ネットの書き込みによる 実害の恐怖も描かれています。
未成年の長男が 容疑者として逮捕されるやいなや、
マスコミや野次馬の群れが 騒々しく自宅を取り囲み、 刑事が押しかけます。
また 裁判所の人間がやって来て、 夫婦に離婚を迫ります。
実名報道がされると 苗字から犯人の家族だと 分かってしまうので、
それを防ぐため 夫が妻の籍に入って 苗字を変えるというのです。
両親は訳も分からないまま、 差し出された書類に署名し、
あっという間に 離婚・再婚が成立します。
長男だけが籍から外れ、 その場で 沙織の就学義務免除の 手続きも取られ、
中学生の彼女には 事態を呑み込むこともできません。
マスコミの無遠慮な詰問や 執拗な追跡が、 幼い沙織に襲いかかります。
3人は別々に 保護されることになり、
勝浦は 沙織の警護を任され、 逃避行が始まるのです。
そして勝浦自身も 家族の危機的な問題を抱え、
過去に 心の深手を負っています。
勝浦はかつて 助けられる被害者を殺してしまった、
それなのに今度は、 反対の立場の 犯人の家族を保護している。
マスコミは それを無情に追及し、
加害者の家族など 守る必要はないと 責めたてます。
勝浦は 自分の過去とも 闘わなければなりませんでした。
加害者, 被害者, それぞれの家族, 刑事、
それぞれの立場の苦悩や、 癒されない傷が交錯します。
どの立場の人間にも、どうしようもない痛みがあるのです。
それを理解できない 人間たちが、 偽物の “正義感” を振りかざし、
不心得な好奇心で 傷ついた人の心を 無惨に踏みにじります。
あくどい新聞記者, 不謹慎で残酷な大衆, 信じていた人間の 裏切りなどが、
彼らをさらに 窮地に追い込んでいくのです。
(次の記事に続く)