「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「無意識の彷徨」 (20)

2007年05月09日 21時14分36秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47399540.html からの続き)
 

○フラッシュバック

 〔前の裕司の声が被さる。〕
  両手を突き出して必死に飛び出す裕司。

○心理課

  裕司、猛然と立ち上がり、両手を突き出
  してなつみに飛びついてくる。
なつみ「あ……!?」
友辺「何をする!!」
  友辺、反射的に裕司の胸ぐらを掴み、背
  負い投げをかける。
  裕司の体がふわりと宙に浮く。

○フラッシュバック

  9才の裕司の体が宙に舞う。

○心理課

  床に投げられる裕司。

○フラッシュバック

  裕司、草むらの中に落ちる。

○心理課

  仰向けになり、驚愕した裕司の顔。
  天井が回るように見える。

○フラッシュバック

  空中にいる裕司。
  周囲の景色がぐるりと回る。
  警報機と電車の音が鳴り響く。

○心理課

  愕然とした裕司の顔。
9才の裕司の声「……お母さぁん……!!」
  警報機と電車の音が重なる。

○回想

 〔以下はロングも用い、裕司と則子の位置
  関係を描く。〕

  点滅する警報機。
  線路上にいる裕司と則子。
  足を抜こうとするが動けない。
  電車が近づいてくる。
裕司「お母さん! 危ないよ……!!」
  裕司は必死にブーツを引っ張り則子を助
  けようとする。
  ヒールはがっちりと線路に挟まって抜け
  ない。
  轟音とともに迫ってくる電車。
  泣き叫ぶ裕司。
則子「裕司! 逃げて……!!」
裕司「(泣きながら)いやだ!! お母さん…
 …!!」
則子「逃げなさい……!!」
  裕司を引き離そうとする則子。
  必死でヒールを線路からはずそうともが
  く裕司。
  目の前に突進してくる電車。警笛。
裕司「お母さぁん……!!」
  裕司、無我夢中で則子を突き飛ばそうと
  両手を突き出して押す。
則子「裕司……!!」
  小柄な則子が、無我夢中で裕司を体ごと
  放り投げる。
  宙を舞う裕司。
  裕司の視界で則子と周りの景色がゆっく
  り一回転する。
  草むらに落ちる裕司。
  額に傷を負うが、必死で顔を上げる。
  瞬間、電車と則子が接触する。
  木っ端微塵に打ち砕かれる則子。
  裕司に真っ赤な血飛沫が吹きかかる。
  激しく軋む急ブレーキの音と共に走りす
  ぎる電車。
  凍りついた裕司の表情(能面のように見
  える)。
  フェイドアウト---。

(続く)