( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47225206.html からの続き)
○街景
警察署・遠景。
○警察署・応接室
裕司の伯父,伯母の和信と俊子が来てい
る。
応対しているなつみと友辺。
俊子「(心を痛めて)………裕司は、母親の
踏み切り事故があった2時間くらいあと、
踏切から2~3キロ離れた道にしゃがみ込
んでいたところを保護されたんです……
母親の血を浴びた姿で……」
友辺「やっぱり踏み切りの事故は事実だった
んですか……」
なつみ「今まで裕司くんに事故のことは話さ
れなかったんですか?」
和信「……母親のあんな悲惨な死に方……本
人が覚えてないのを、無理に言って聞かせ
ることはないと思って、ずっと口にしない
できたんです……それをわざわざ掘り返す
ようなことをしてくれて……!(怒りを噛
み殺す)」
なつみ「(恐縮するが)……いきなりこんな
重大なことが出てきてしまうなんて、私も
予期できませんでした。申し訳ありません
……でも、これは必要な過程だと思うんで
す」
和信「知らずにすむことは知らないほうがい
いんだ!」
なつみ「でも、裕司くんの心の影の部分に光
を当てていかなければ、これからもまた繰
り返し記憶をなくすことになるかもしれま
せん」
俊子「……どうして、何度も記憶喪失になる
んですか……?(不安げに)」
なつみ「成長してからも裕司くんは、恐怖や
危機が身に振りかかると自動的に意識をな
くして記憶に停めないという、防衛システ
ムができ上がってしまったのではないかと
思います。心理学では『抑圧』『解離』と
いうメカニズムで説明してるんですが…
…」
俊子「でも、昔の母親のことも覚えてないな
んて……」
なつみ「裕司くんは、お母さんとの愛情がな
かったんじゃないかと思っているようです
が、何か心当たりは……?」
和信「そんなものはありません! ちゃんと
普通に暮らしてる親子でした(怒りをあら
わにする)」
なつみ「ただ、子供にとっては、端から見て
普通だという客観的な事実ではなくて、愛
を感じてないという主観が事実になってし
まうんです」
友辺「……そのために、事故のとき母親を見
捨てるようなことを……?」
なつみ「(遺憾な思いで)考えられないこと
ではないかもしれません。その結果、裕司
くんは恐ろしさと同時に、自分がお母さん
を見殺しにしたという罪の意識から逃れる
ため、記憶を消し去ったということも…
…」
和信「あなたは裕司と母親の関係を台無しに
したいんですか!?」
なつみ「(一生懸命に説得しようとする)そ
うではなくて、裕司くんが何故そう思うよ
うになってしまったのかという理由が大事
なんです」
俊子「(目頭を押さえ)……それが、あの子
の病気の原因なんですか……」
なつみ「裕司くんは病気ではありません。何
か深い傷を負っているんです。お母さんと
の間に何があったのか、それを探らなけれ
ば彼の心は癒されないと思います」
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47271441.html