「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(1)

2006年11月04日 14時53分25秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/41887700.html からの続き)

【登場人物】

倉橋 美由 (21才・介護福祉士)

不動 全次郎 (48才・介護会社社長)

シンシア (30才・フィリピン人・不動の妻・ケアマネージャー)

野々山 道子(77才・痴呆老人)

野々山 啓輔(46才・道子の息子)

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【プロット】

 在宅介護支援事業 「SCS (スペシャル・ケア・サービス)」 の

 入社試験 面接会場。

 リクルートスタイルに 身を固めた美由が、緊張気味に座っている。

 面接官は ケアマネージャーの シンシア。

 シンシアは 胸が開いたブラウスに タイトなスカート。

 やけに色っぽい。

「介護福祉士学校、卒業見込みですね」

 と言うシンシアに、美由は

「お年寄りが喜ぶ顔を 見るのが嬉しい。

 ハンディのある人の 役に立ちたい。」

 と はつらつと夢を語る。

「うちを選んだ理由は?」

 と問うシンシア。

 美由は

「就職情報誌に載っていた 御社の

 『要介護者はお客様。お客様は神様』 というコピーに 惹かれました」

 と答える。
 
 

 SCSに採用された 美由。

 不安と期待を抱いて 出勤初日を迎える。

 SCSの朝礼。

 20名余りの社員が 整然と並んでいる前に、社長の不動が 姿を現す。

 驚く美由。

 不動は大柄で 顔に傷があり、サングラスを掛けている。

 そして なんと車椅子に座っている。

 不動は 実に器用に、力強く車椅子を扱う。

 不動の 訓話が始まる。

「介護サービスは、施しの福祉でも 慈善事業でもない。

 利用者が お金を払って買う ビジネスだ。

 お客様のニーズに応える 商品を売る、それが 企業が生き残る道だ。

 介護ビジネスは 4兆円市場。

 宝を掘り起こせ!」

 檄(げき)を飛ばす不動。

 社員たちは 不動に続いて 全員で唱和する。

「利用者はお客様。 お客様は、神様です!」

 唖然とする美由。

「介護は商売。 サービスは これ商品!」

 全員 合掌する。

 壁には スタッフの “営業成績” のグラフまで貼ってある。

『介護が商品?』

 納得できない美由。

『こんな会社に 就職してよかったんだろうか……?』

 美由の胸に 不安がよぎる。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/41940371.html