ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

『杉並区立「和田中」の学校改革』を検証する

2008年10月31日 | 本と雑誌
Wadachu_2
岩波ブックレット 杉並区立「和田中」の学校改革

 非常に失望した。岩波ともあろう出版社が、なんという出版物を出したことか。
 この本は藤原和博を擁護し賞賛することに終始し、いかに和田中改革がすばらしいか、それがどれだけ効果的な成果を上げたかと、読む側が赤面するほど誉めつらっている。

 あきれることに、裕福な家庭の学力が高い子どもたちが、杉並区外の私立国立中学に流出している、だから和田中は「困難な状況」にあったというのだ。
 正に詭弁である。経済力と学力は比例するものではない。したがって、和田中の「困難な状況」とはそれが原因ではない。
 杉並区内には、他にも多くの公立小中学校が生徒数の減少によって「困難な状況」におかれているが、それは子どもたちを囲む環境の変化に対応できない行政と国の責任である。

 冒頭で、和田中は「二つの顔」を持っていると説明している。
 メディアに注目される「顔」と、普通の公立中学校としての「顔」であるという。和田中の教育改革が新自由主義的であると見られ批判されるのは、前者のみを注目した議論であり、「ことの半面しか見ていない」と切り捨てている。

 たしかに、藤原校長を中心とした、和田中という枠の中でだけなら、一見すばらしい改革に見える。しかし、もっと広い視点からは、この改革にはそれを利用する強大な力があり、子どもたちをある意図された場所に連れて行こうとする、三っつめの「顔」が見えてくる。

 藤原が行ったことは、基本的に方法論であり、真理ではない。方法論とはすなわち道具なのだから、結果はそれを使うものの手の内にある。優れた道具は恐ろしい凶器にもなりうるのだ。

 この本ではまったくと言っていいほど触れられていないが、このような改革を操る「力」が、教育基本法を改定し、君が代・日の丸を強制していることを忘れてはならない。
 極めて反動的な資質を持つ杉並区長の山田宏が、石原都知事とともにこの改革を推進しようとする理由はそこにある。

 かつてナチスドイツは幼い子供たちを教育して親衛隊をつくった。大日本帝国は「教育勅語」をもって天皇に忠実な国民をつくった。どの時代にも権力者のターゲットになるのは子どもたちなのだ。

 この本の著者は、あまりにも近視眼的であり、そうした歴史的、政治的観点から分析することができていない、あるいは意図的に行っていない。
 新自由主義や格差については調査対象でなかったのだろうが、それは決して切り離すことのできない問題であり、避けて論議したのでは、藤原擁護の学力偏重主義ととらえられてもしかたがない。

 かつてマスコミが和田中改革をもてはやす要因となったと同じような表現がこの本にはある。
 急激な改革が行われた時には、きっと何かが別な場所で起きている。その改革が何を目的に行われようとしているのか、目先の事実だけでなく、それにかかわる人間に目を向け真意を見極めることが必要である。

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三田村鳶魚のこと

2008年10月29日 | 本と雑誌
Hyobanki

 三田村鳶魚(みたむら えんぎょ 1870年4月17日 - 1952年5月14日)は江戸文化・風俗の研究家です。
 ある浮世絵コレクションの本を出すために、作品が創造された時代背景を調べることが必要になり、調査方法を探っていたら、三田村鳶魚に行きつきました。
 そういえば、いつぞや古書店で見つけた『時代小説評判記』の復刻版があったのを思い出して書庫を「掘り進み」そして掘りあてました。
 この本は『大衆文芸評判記』と対をなしているようですが、ぼくが蔵書しているのは時代小説のほうだけ。
 島崎藤村の「夜明け前」、吉川英治の「宮本武蔵」など9編について、作品そのものの善し悪しよりも、考証についてアラ探しをしてイチャモンをつけたり、さらなるウンチクを付け加えたりしています。
 吉川英治の「宮本武蔵」などはもうぼろくそです。

 九四頁に「平和に馴(な)れてきた處女(おとめ)の胸」といふことがある。戦國から徳川氏の初(はじめ)へかけたところで、どうしてこんな事が云へるか、積りにも知れそうなものだ。

 さらには、

 「寺の借着(かりぎ)に、細帯をしめ手拭をさげてゐる」(一〇三頁)と云ってゐる。寺の借着といふのはどんな借着をしたのか、細帯といふのはどんな帯か、此等もごく新しい氣持から來ることで、慶長時分の武士がこんな風體をしてゐることは無い筈だと思ふ。

 いやはやなんとも、言いがかりとも思える論評ですが、江戸の文化・風俗のオーソリティーとしては、我慢ならなかったのでしょう。

Edogaku

 江戸文化の事を始めると、不思議な力が働いて、古書店でこんな本にも出合いました。
 『鳶魚江戸学 座談集』は三田村鳶魚の話題を中心に、池波正太郎やら松本清張やら尾崎秀樹やら43人の江戸にかかわる研究者が、言いたい放題語り合っているのをまとめたもので、参加者そのものがとても楽しんでいます。
 鳶魚に責任があることではありませんが、司会の朝倉治彦と中一弥が『江戸名所図絵』のことについて語るこんな場面が収録されています。

 朝倉 『江戸名所図絵』、あれ全部名所でしょうか。何でもかんでも少し集め過ぎているような感じもするんですけれども。
  飛鳥山や向島も出ていますが、神社、仏閣が中心ですね。ですから、有名な神社、仏閣が江戸の名所だったんでしょうか。『江戸名所図絵』を持って東京を回ったら、お宮なんかばっかりで、つまらなかったといっていた人がありました。


 この『江戸名所図絵』は角川文庫版が復刻されたときに、たまたま思いついて購入し所蔵していたので内容を確かめてみたら、たしかに「神社、仏閣」だらけです。
 思わず笑ってしまいました。
 ちなみに朝倉氏は、『江戸名所図絵』の校注を担当しています。

 しかし、内田百閒といい、北大路魯山人といい、そして三田村鳶魚といい、明治の人は他にはばからない辛口のユーモア豊かな人が多いようです。

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読書週間には古典を読もう

2008年10月27日 | 日記・エッセイ・コラム
 10月27日から11月9日までの2週間は読書週間です。
 読書週間が始まったのは1947年で、最初は11月17日から23日までの1週間でした。しかし、1週間ではたいした読書はできないだろうということで、2回目から現在の2週間になりました。

Koten

 子どもたちの間でコンピューターゲームが読書を駆逐して久しいものがあります。そういう子どもたちは大人になっても、さまざまなメディアの氾濫から活字を読まなくなって来ています。
 というよりは、活字が読めなくなっています。

 テレビなど電波のメディアと違って、本を読むという作業はエネルギーを必要とします。読書の習慣どころか新聞すら読まない人が、「読書週間だ、さあ本を読もう!」と意気込んでも、そうそう読み切れるものものではありません。

 うちのカミさんの場合、若い頃はよく読書をしていて、速度もそれなり早かったのですが、子育てに時間を取られているうちに次第に読書離れが起き、今では数ページ読むと眠くなってしまうといいます。
 あれも読みたい、これも読みたいと、ぼくの書棚から本を持っていきながら、結局枕元に読みかけの本がうずたかく積まれて、現在どの本を読んでいるのか、本人でも分からなくなっています。
 過去に読書好きであってさえこの始末ですから、まして、子どもの頃から活字を読む習慣がなければ、最初から読書するという発想には向かいません。
 「本を読まなくても生きていける」
 そう言ってはばからない人のなんと多いことか。

 で、この記事のテーマである古典についてですが、最近は読書好きの人ですら敬遠しがちで、本を読まない人にはそれこそ真っ先に嫌われているようす。
 まあ、夏目漱石やトルストイは、東野圭吾や宮部みゆきと比べたら確かに読み難い。新字新仮名に直されたものでも、段落が長いので紙面全体に文字が詰まって見えて、ページを開いたとたんに「ゲッ」。
 しかし、かつては読書といえば古典を読むことが中心でした。小さな活字でぎっしり組まれた2段組みが普通だと思っていました。
 それでもトルストイやドストエフスキーの大作は、学生時代のたっぷり時間があるときを利用しなければなかなか読めるものではありませんでした。
 読書が盛んな時代でも、社会人になってから長編小説や難解な哲学書を読むにはまとまった読書時間はなかなか取れません。ほとんどが挫折を体験することになってしまいました。

 現代の若手ビジネスマンの多くは、コンピューターゲームなら何時間でもやっているのに、会社から薦められた、薄っぺらい新書判のビジネス書ですらなかなか読破できないそうです。

 「夏目漱石? 名前は知ってるけど、読んだことない」
 「イプセン? ゴーリキー? 知らない。誰それ」
 「ゲーテって、フランスの人だったっけ。あ、イギリスだ、イギリス」
 ……おいおい。

 岩波文庫の巻末には「古今東西にわたって(中略)、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値のある書を極めて簡易なる形式において逐次刊行」するという岩波茂雄氏による発刊の抱負が記されています。角川文庫にも、創立者の角川源義氏による概ね同じ内容の文章があります。
 本来、文庫とはそういうもの。
 しかし、現在にいたるまでそれを守っているのは岩波文庫だけで、後に続々と発刊された文庫本は、その多くが単なる廉価版に過ぎず、「万人の必読すべき真に古典的価値のある書」とはあまりにもかけ離れています。
 作家の故倉橋由美子氏は、自分の作品が新潮文庫に納められると知ったとき、大変名誉なことだと感じたのもつかの間、その文庫のラインナップから廉価版に過ぎないことを知り失望したと何かに書いていました。
 それはもちろん、ただひたすら利益に走る出版社にも責任がありますが、読者の古典離れが非常に大きい。

 古典とは長年読まれ続けられたという実績に裏付けられた名作のことをいいます。古典の価値は、それを読むことでその後読む書物のための基準ができ、良い本とそうでない本を見分ける力が付くというものです。

 近頃は学校でも古典を読む機会があまりないと聞きます。読書週間という旗振り以前に、普段の生活から、周囲の環境から、そして親ぐるみ街ぐるみで、読書に親しむことを進めていく必要があるのではないでしょうか。

◇この秋に読んでおきたいおすすめの古典5冊◇
 あまりリストに乗らない作品を岩波文庫から5作品6冊プラス1冊。
 どちらかというと、若い人向きかもしれませんが。

 『五重塔』幸田露伴
 (創造へのこだわり。権力に抗して)

 『断腸亭日乗』(上下)永井荷風
 (有名な「正午浅草、正午浅草」)

 『トルストイ民話集 イワンのばか』トルストイ
 (「人にはどれほどの土地がいるか」)

 『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス
 (侵略の悲劇と植民地の実態)

 『賃労働と資本』カール・マルクス
 (資本主義の仕組みと罪。格差の要因)

 もう1冊、現在品切れ中なので番外にした本。
 『芸術とはなにか』トルストイ
 (芸術のほんとうの役割とは……)
 この本はぼくが若い頃とても感銘を受けた本で、実は一番のおすすめ。古書でなら比較的入手しやすい本です。

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鮭パーティ2008

2008年10月26日 | 日記・エッセイ・コラム
 年に一度、いや自宅版と合わせると2度ですが、このシーズンだけの生鮭を食する日。
 今年は会場を借りず、自宅で行いました。したがって、メンバーは常連さんたちに限りました。
 ところが、こういう時に限って、アシのYは神経痛で来られなくなり、他にも予定していた何人かが風邪や仕事で参加できず、キャンセルが出ました。
 昨年までのように十数人もいれば2~3人キャンセルが出てもどうということはないのですが……。
 少人数だと一人当たりが高く付いて調整が難しい。
 まあそれでも、例年以上に和気あいあい、楽しいひと時でした。

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 大きな鮭をさばくには台所が狭いこともあり、1本を三枚におろして送ってもらいました。
 半身でこれだけの大きさがあります。
 大出刃が普通の出刃包丁の大きさに見えます。
 頭から尻尾までの大きさを想定すると、約80センチ。
 これを、目的に応じた大きさにさばいていきます。
 このくらいの大きさの魚をバラスには大出刃が必需品です。

1ikura

 今回は、作り方(レシピ)を“分かり難く”公開します。
 お腹に納まっていたいくらをばらして酒と醤油につけておきます。
 不思議なことに、酒をそそいだとたん、イクラはしぼみます。それが、しばらくおくとパ~ンっと輝くように美しくなります。

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 海鮮サラダの盛りつけは、1級建築士のY子さん。
 「どうせぐちゃぐちゃにされるんだから」というまわりの雑音を聞き流し、徹底的に凝ります。
 しかし、お見事!

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 素材が新鮮なので、ほっといてもおいしく仕上がりますが、上げ方にはちょっとコツがいります。
 塩こしょうをしたら、小麦粉を満遍なくまぶし、溶き卵の中を中をくぐらせたら、生パン粉をまぶします。
 この時にけっして強く押し付けたりしないこと。
 油の温度は160~170度。たっぷりの油で深さをつくります。
 静かに投入して、じっとそのまま。きつね色になるまで触れないこと。
 もちろん、ひっくり返したりしてはいけません。
 外側はカリカリ、中はふんわりした極上のサーモンフライが出来上がり。

4arajiru

 自慢のアラ汁。
 アラは3~4センチ角ぐらいに切り、塩をまぶして1時間。
 熱湯に1分ほど通し、氷水の中に移します。
 氷水の中でぬめりをとり、水分を切ります。
 鍋に移し、人数分の出し汁をそそぎます。
 この出汁は秘伝なので、ブログでは公開できません。
 火をつけて沸騰したら、薄切り短冊の大根、人参、薄切り椎茸を入れます。
 味を確かめながら、酒、薄口醤油、みりんで味付けをします。
 最後にショウガの絞り汁を適量加えて出来上がり。
 器にそそいでから、彩りにさやえんどう、三つ葉を浮かべ、お好みでミョウガ、ゆず、などを加えます。

 今回はこの他に付け焼きもつくってみましたが、これは酒の肴というよりは、ご飯のおかずに適しているようでした。
 もちろん、超豪華ないくら丼も定番です。

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 K君が、珍しい唐辛子を差し入れてくれました。
 大きくて、一見とてもからそうな色をしています。
 名前を忘れてしまいましたが、焼いて食べると程よい辛みが気持良く、ビールのつまみにぴったりです。

 自宅だと時間のリミットがありませんから、気付けば10時過ぎ。
 みなさん楽しんでいただけたようです。

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イラク関連の新刊2冊

2008年10月25日 | 本と雑誌
 合同出版からイラクに関する本が2冊発行されたと聞いて、読んでおかなければと思いつつそのままにしていたら、今日、他の資料と一緒に送られて来ました。

『イラク崩壊』
米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか
吉岡一 著
(合同出版)

Hokai

 著者の吉岡一(よしおか はじめ)氏は2004年から2007年まで中東アフリカ総局特派員を務めた朝日新聞の記者。アメリカの占領によって、崩壊していくイラクのようすをつぶさに見て来ました。
 著者があえて危険を侵して書き上げた渾身のレポートは圧巻。

 ただ、確かなことがひとつだけある。武装勢力と呼ばれる組織に身を投じ、米軍と戦って死んでいく何千ものイラクの若者は、ほんの最近まで、「アルカイダ」とも「9.11同時多発テロ」とも、なんの関係もなかった、という動かしがたい事実だ。
 イラクで今、テロリストと呼ばれるどんな人間も、米軍が来るまで、テロリストと呼ばれる理由もなければ、状況もなかった。
 アメリカがイラク戦争を始めなければ、15万1000人ものイラク人は、死ななくてよかったはずなのだ。


               ◆

『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』
ジョシュア・キー(元アメリカ陸軍上等兵)著
ローレンス・ヒル 構成
井手真也(NHKディレクター)訳
(合同出版)

Dasso

 著者のジョシュア・キーは元アメリカ陸軍上等兵。2002年4月、アメリカ陸軍に入隊し、イラク戦争開戦から3週間後の2003年4月、イラク中部の最前線に配属されました。
 現地で、アメリカ軍によるイラク市民への数々の非人道的行為、戦争犯罪を目の当たりにし、一時帰国中の2003年12月に軍から脱走。追っ手から逃れながら家族とともに1年以上にわたりアメリカ各地に潜伏した後、2005年、国境を越えてカナダに逃亡。
 現在、反戦NPOの支援のもと、カナダ政府に対し難民認定による保護を求めながらカナダで暮らしています。

 アメリカはイラクで何のために何をしたのか、若い米兵たちは何を目的にどんな思いでイラクに行ったのか。
 かつて、日本の軍隊がそうであったように、戦争はいとも簡単に人間の尊厳を破壊して、「ヒト」を「オニ」に変えてしまいます。
 この本は、自分と家族の暮しを守るためだけに軍隊に入り、気付けばイラクで人を殺す仕事をしていた、一人の「普通」の若者の告白です。

 ぼくはアメリカ軍から脱走したことについて、絶対に謝罪しようとは思わない。ぼくは不正義から脱走したのであり、それは進むべき正しい道だった。謝罪すべきことがあるとすれば、ただひとつ、それはイラクの人びとに対する謝罪しかない……。

 話は違いますが、合同出版は他の出版社に比べると定価が安い。たとえば上記の『イラク崩壊』は400ページを越える大部でありながら1800円。小説と違ってこの手の本は初版刷り部数が限られていますから、どうしても割高になるはず。ほぼ同じボリュームのみすず書房から出ている『東京裁判』は5200円もしますし、作品社の『新自由主義』でも2600円。
 『イラク 米軍脱走兵……』のほうは256ページで1600円。大月書店の『「百人斬り競争」と南京事件は288ページですが2600円。
 先日、合同出版の社長に「合同さんは本の値段が安いですね」と投げかけてみました。
 「そう、うちは給料が安いから、ははは」
 あながち冗談ではありません。社会科学書のような地味な出版物を発行する出版社は、年々平均年齢が高くなって、平均50歳以上という出版社も少なくないとか。そうなればどうしても給料が高い。
 若い編集者はIT関連の出版物や流行の小説を出すような出版社に流れてしまいがちなようです。そうした中で、けっして合同出版の平均年齢がとくに低いとは思えませんが、まあ一見30代後半から40代前半でしょうか。他社に比べれば低い。

 かつて、父親の経営するT出版社の本があまりにも安価だったので、どうしてこんなに安くするのか聞いたことがあります。
 「労働者は高い本など買えん!」
 こう一喝されました。
 だから、ちっとも儲かりませんでしたが、今でも経営者が代わって存続しています。

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「通販生活」秋冬号

2008年10月23日 | 本と雑誌
Tsuhan1

 「通販生活」は商品カタログ雑誌ではあるけれど、フツーの総合雑誌としても十分成り立ちそうな内容を持っています。
 最近の雑誌は読ませるのか商品を買わせるのか、どちらが本来の目的かわからないのがゾロゾロ出回ってるので、それらがどれとは言わないけれど、内容的には「通販生活」の断然勝利。

 なんたって、表紙を飾るのがあの、伊藤和也さん。
 「(伊藤さんは)私たちの誇る真の外交官です。」

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 パラパラとめくっていったら、なんと姜尚中さんがハーレーダビッドソンにまたがってる。
 愛車かと思ったら、「イージー・ライダー」が夢らしい。
 〈50歳を過ぎて、悪く言うと開き直りかもしれないけれど、ワイルドに生きたい。だから60歳までに大型二輪の免許を取って、子どもの頃から憧れていたハーレーダビッドソンにのりたい〉ンだそうです。
 何だ免許持ってないのか。カッコだけじゃん。

 ぼくも実は、40代の頃に大型バイクの免許を取ろうと思ったことがあります。
 で、教習所に見学に行ったら、生徒は若い生意気そうなあんちゃんばっかりなもので、何となく気後れしてそのままになってしまいました。
 誰か一緒に取る人がいれば教習所に行くことができて、今頃ナナハンライダーになっていたかもしれません。
 近頃、省エネのためにバイクが見直されているという話も聞きます。

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 『禁煙バトルロワイヤル』がおもしろい! と。うん、これはおもしろそうで絶対読もうと思っています。
 太田光クンはヘビースモーカー。奥仲哲弥氏は禁煙推進の医師。その二人が壮絶な論争を展開するというのだから、おもしろくないわけがない。

 実は何を隠そう(隠す必要もないけれど)かつての僕は「超」がつくヘビースモーカーでした。今では基本的に、吸わないということに、なっています。
 最盛期には、1日平均60本。自分でもこれはそうとうヤバイと思っていました。
 「どうして、やめることができたのか」とよく聞かれます。
 簡単ですよ。やめるって決めたからです。それだけ。

Tsuhan4

 「暮しの道具大賞」というのがあって、読者から応募したアイデアを審査し、優秀作を紹介しています。
 この号では大賞は「該当作なし」でしたが、優秀作の中で、ぼくはこれが気に入りました。
 「大人の手メモ/手シール」
 年齢とともに、記憶があやしくなるのは、年配の人なら誰でも体験することですが、ぼくのような物書きを商売にしていると、街を歩いていたり、電車の中などでふと浮かんだアイデアはけっこうな財産なんです。しかし、後でメモしておこうなんて余裕があったのは昔のこと。最近は電車を降りてホームにたった瞬間に忘れます。
 これはものすごく損をした気分になります。
 でもって、必要に迫られれば直接手に書いたりしてしまうわけですが、しかしこれは後で落とすのが大変です。
 そんな時のためにこのシールをあらかじめ手に貼っておけばいい。思いついた時すぐにチャチャッと書けます。

 この雑誌、本号で契約が切れると知らせが来ました。もちろん継続しました。960円払って2年分です。

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人には何冊の本が必要か「定義集」

2008年10月21日 | 日記・エッセイ・コラム
Teigishu

 朝日新聞に掲載されている大江健三郎氏の「定義集」で興味深い内容にであったので久しぶりに書いてみます。
 「現在の自分再読で発見」というタイトルに、「人には何冊の本が必要か」というサブタイトルがついています。
 新制中学の生徒だった時に、先生に借りた岩波文庫の『トルストイ日記抄』を不良少年たちにとがめられた経験から始まる話が「人には何冊の本が必要か」。
 本を貸してくれた先生は、「人はどれだけの土地が必要か」というトルストイの寓話と取り違えたのかもしれない、といいます。

 青年期以後、人には何冊の本(を持っていること)が必要か、という問題は、収納スペースのかたちで私に取り付きました。家族ができると、住宅事情の切実さも加わってある期間ごと大幅な整理をする必要が生じました。十日ほどかけて選別し始末した本がすぐにも必要となり、買い戻す。そうしたことが繰返し起こったものです。

 最近の若い作家たちはいざ知らず、ぼく世代以上の物書きといわれる人たちは、大体において蔵書家でもあります。ぼくの父親もそうで、ぼくの現在の蔵書の三分の一程度はそれを引き継いだものです。
 『マルクス・エンゲルス全集』などは、父の生前に完結せず、「お前が完結させろ」といわれている気がして、それからさらに何年もかかった全集を、別巻まで含めて揃えました。
 こうした、処分するわけにはいかない蔵書以外、とくに仕事で参考資料として購入したものは用が済めば処分するべきなのでしょうが、それがなかなかできません。実際、大江さんではありませんが、なぜか処分した本に限ってすぐに必要になったりするものです。
 同じ本を二度三度と繰返し買い直したこともある反面、処分したと思って買い直したものが、蔵書していたという、なんともおっちょこちょいなこともやらかしています。

 「定義集」は朝日新聞の書評に掲載された、フリーマン・ダイソンの『叛逆としての科学』の話題に移ります。
 大江さんは二十年前に同じ著者の『核兵器と人間』から再録されていた論文の一つに懐かしさを感じ、蔵書の山の中から今は絶版になったその著書を“掘り起こ”します。

 深夜、書庫に入り込んだ私は、その奥に平積みしてある山に見当をつけて掘り進めました。やっとのことで探し出し、自分がかつて読み・再読して引いた赤鉛筆の傍線と、新著の達意の訳にあらためて傍線したところをくらべてみました。ダイソンに対してというより、いま現在の自分について発見があります。

 本を“掘り進む”という体験は、並の読者には理解しにくいかもしれません。書棚から溢れ出しその周囲に積まれた本の山の中から一冊を見つけ出すという作業は、遺跡の採掘に似ています。

 で、良い本は何年もたってから読み直すと、自身のこれまでの体験・経験が加わって、新しい感動を呼び起こすことが少なくありません。詳細はここでは書ききれませんが、ぼくにとっては岩波新書の向坂逸郎著『資本論入門』などがそうでした。
 フリーマン・ダイソンはノーベル賞を受賞してもおかしくない物理学の巨人ですが、核の廃絶と平和構想について卓越した文章を書いています。
 大江さんが書評で知ってすぐに取り寄せて読みはじめたという『叛逆としての科学』のような大著を、じっくりと読む余裕は今のところぼくにはないのでとりあえずスルーするつもりでいますが、大江さんが感銘を受けたという論文「平和主義者たち」は機会をつくって読んでみたいと思います。

 「定義集」は10月21日付の朝日新聞朝刊、『叛逆としての科学』の書評は、9月7日の読書欄に掲載されたもので、以下のサイトで読むことができます。
http://book.asahi.com/review/TKY200809090097.html

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秋の出会い

2008年10月20日 | 日記・エッセイ・コラム
 「やあ、1年ぶりですね」
 「やあ、去年はベランダの手すりで」

Kamakiri1

 「今年は天気が不順でねえ、出にくかったです」
 「ホントに暑かったり寒かったり……」
 「……ラジバンダリ」

Kamakiri2

 「すっかりご懇意にさせていただいて……御礼にこんなカッコでも」
 「いや、急にそんなことされても、どうしたらいいのか……」
 「そうですか? 可愛くありませんか?」
 「ま、まあ」

Kamakiri3

 道ばたで、1年ぶりの再会でした。

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大江・岩波沖縄裁判 控訴審判決

2008年10月19日 | おしらせ
 来る10月31日午後2時、大阪高裁202大法廷において、大江・岩波沖縄裁判の控訴審判決が言い渡されます。

 それに関連した集会が予定されていますのでご紹介します。

 〈10月30日(木)=東京〉
 ■オーラル・ヒストリーの力
  ~住民証言から見える沖縄
 ??大江・沖縄戦裁判勝訴に向けて、前夜集会??

 講師:中村政則さん(一橋大学名誉教授)
 開始時間:午後6時半
 会場:文京区民センター 3A会議室

 〈10月31日(金)=大阪〉
 ■控訴審判決報告集会
 講演:平良宗潤さん(沖縄歴史教育者協議会委員長)
 開始時間:午後6時
 会場:エルおおさか 708

 〈11月12日(水)=東京〉
 ■大阪高裁判決報告集会
 開始時間:午後6時半
 会場:文京区民センター

 ◆予約不要
  詳細は以下のチラシを参照。
  *画像クリックで拡大できます。

【前夜集会】
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【報告集会=大阪】
Ohe_iwanami1

【報告集会=東京】
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連絡先:「沖縄戦首都圏の会」ホームページ

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9条フェスタ2008

2008年10月18日 | 日記・エッセイ・コラム
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 今日、10月18日、大井町の「きゅりあん」で「9条フェスタ2008」が行われました。
 10時15分から映画「蟹工船」が上映されるということで、10時の開会と同時に会場へ。

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 映画の蟹工船は1953年の映画で、監督は俳優の山村聡。
 ニュープリントということでしたが、なにぶん古い映画なので音質が悪く、台詞がよく聞き取れません。
 それでも、蟹工船の過酷な状況は十二分に描かれていました。
 しかし、ストーリーはかなりはしょっているので、原作を読んでいないとわかりにくい映画です。
 また、エンディングにも、もう一つ工夫が欲しい感じがしました。

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 ロビーでは無農薬の野菜やパンなどが格安で売られていて、カミさんは里芋とショウガを買いました。
 それぞれ100円で合計200円。
 とってもトクした感じです。

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 展示会場の奥はレストランというか“食堂”。
 オーガニック素材の料理が中心ですが、なぜかおでんなんかも。
 座席はほぼ満席。食べ物のある所には人が集まります。

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 沖縄そばがありましたが、大ぶりのお椀くらいのサイズで500円は高い。
 それと、見た目あまりおいしそうではなかったので、やめました。
 チジミやキムチなどの韓国料理や沖縄料理の講習会も開かれています。

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 アイヌの布絵原画をプリントした工芸品コーナーがありました。
 ここでフリー編集者でライターのK.H.さんにばったり。
 「会うような気がしたの」
 最近ぼくと出会う人はなぜかみんなそう言います。
 ことしは「アイヌ神謡」が注目されていて、アイヌ文化が静かなブームを呼んでいます。

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 こんな大きな岩塩が1000円で売っていたので即購入。
 「約6億年前に存在した太古の海が化石化し岩塩へと形を変え、インダス川流域の地中深くで環境汚染とは無縁のまま眠って」いたそうです。
 写真で見ると、摘出した腫瘍みたいですが、現物はとても美しい。
 使わずにしばらく飾っておきます。

          ◆◇◆◇

 この日、持参したカメラのズームレンズが故障して、いきなりズームが効かなくなりました。
 ニコンD80用の18-200のタムロンレンズで、もっとも頻繁に使用しているもの。
 ケチらずにニッコールレンズにしておけば良かったのですが、価格が三分の二弱とあってつい買ってしまいました。
 店員の「みなさんお使いになってます」(「みなさん~」は日本人がもっとも弱い言葉だそうで)という“オススメ”に乗ってしまったのが失敗。
 
 帰宅後保証書を入れたファイルをあさったものの、ない。
 アシのYに保管しておくように預けたのですが、本来入っているべきところに見当たりません。
 電話でアシのYに効いても要領を得ず。

 購入したヨドバシカメラ吉祥寺店に電話すると修理担当に回されました。
 「昨年の11月19日に買ったことは間違いないので、まだ保障が効いていると思うのですが」
 「当店の保障ですか」
 「さあ」
 「ポイントカードはお持ちですか?」
 「もってます」
 「ご来店いただければ履歴が調べられますが」

 で、さっそく吉祥寺のヨドバシカメラへ。
 2階の奥にある修理受付に行くと、並んでる……と見えたのは応対中の客で、まもなく「こちらへどうぞ」と隅のカウンターから呼ばれました。
 訳を話して履歴を調べてもらうと、スゴイスゴイ、まるで「24」のCTUみたいに、たちまちダダダダダダッと履歴が出て来ます。
 「2007年の11月16日ですね」
 カシャカシャッピッ! 犯人確保! これでロサンゼルスは救われた。

 「間違いありませんのでお請けできます。ただ、メーカーに発注しますので、保障書の提出を求められる場合もあります。その時に保証書がありませんと有料になる場合もありますのでご承知おきください」

 週明けに、アシのYに保証書のありかを吐かせなければなりません。

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通りすがりの「警察博物館」

2008年10月16日 | まち歩き
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 地下鉄銀座線の京橋駅で降りて、銀座一丁目にあるギャラリーに向かう途中、「警察博物館」なるものを見つけ、打ち合わせが早く終わったので、帰りがけに寄ってみました。

Keisatsu_2

 玄関前には白バイが展示されていて、自由に乗ることができます。
 でも動きません。

 ずいぶん昔のこと、ぼくがまだ小学生だったか中学生だったかの頃、学校で当時桜田門の旧警視庁内にあった博物館に見学に行ったことがありました。
 そこには犯罪に使われた、仕込み銃、仕込み杖などの凶器の数々や、入れ墨をした人間からはがした皮などが展示されていて、あまりの生々しさに衝撃を受けた覚えがあります。

 しかし、こちらにはあまり刺激的なものは展示してありません。

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 一階のフロアにも、白バイやサイドカーなどが展示されていて、乗ることができます。
 これらも動きません。

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 昭和34年ごろまで使用されていたヘリコプター。
 かつて、ヘリコプターといえば、こんなスケスケタイプでした。
 こんなので飛んだら怖いだろうなあ。
 「これ、整備すれば飛べますか?」
 係員の女性に聞いてみました。
 「もう無理みたいですよ。そうとう傷んでますから」

Keisatsu_1

 四階までありますが、写真を撮れるのは一階だけ。
 あまり参観者もいないし係員もいませんでしたが、監視カメラがにらんでいたので写真は撮りませんでした。

 ぼくが子どもの頃見た旧警視庁の博物館よりもあっさりした印象でした。
 それでも多少の凶器のたぐいや、捜査用具などが展示されていました。
 覚せい剤の実物や、ルイ・ヴィトンやロレックスの偽物なども展示してあります。 
 車の運転をシミュレーションできるコーナーは、違反者講習を思い出します。

 わざわざ出かけて行くほどの博物館ではありませんが、いつでも入れて無料なので、時間つぶしにはいいですね。
 桜田門の警視庁内にも「警察参考室」という展示施設があって、係の女性の話ではこちらのほうが生々しい展示が多いとのことでしたが、見学には前日までに予約しなければなりません。

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荻窪散策(14) 大田黒公園

2008年10月14日 | まち歩き
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 大田黒元雄氏の邸宅跡を杉並区が日本庭園として整備し、1981年10月1日に開園しました。
 大田黒元雄という人は、どうも実態がよくわかりません。
 公園に備えられたプロフィールには、音楽評論家であり、NHKラジオのクイズ番組「話の泉」のレギュラーであったことなどが紹介されていますが、これほどの大邸宅に住むほどの財を成した人にはどうにも思えないのです。
 館内に掲示された詳細な略歴を見ると、父親が東芝や九州電力の育成に貢献した大立て者だったようで、言ってみれば「お坊ちゃま」。
 金持ちの道楽で、ヨーロッパの音楽にいそしんでいたようです。

 庭園としてはなかなかよくできていて、散策したり水屋(現在改修中)で読書したり、区民の安らぎの場所としてはいいところです。

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 正門から木戸までの石畳は両側が銀杏の並木になっています。
秋には実が大量に落ち、近所のおばさんたちがポリ袋をもって拾いに来ます。
 臭いがすごいので、ぼくは触りたくありません。一度拾いに来て、手についた生ゴミのような臭いがいつまでも消えず、閉口しました。

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 殿様が野遊びに立ち寄りそうな作りの休憩所。居心地は今ひとつ。お茶は無料です。

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 書斎を当時のまま残した記念館。書斎が並の家の大きさの一戸建て!

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 記念館(書斎)の内部。正面の暖炉は飾りではなく、実際に使われていました。左の隅に机があり、応接セットやティーテーブルが置かれています。どれも特級の特注品。ぼくにはわかりませんが、大変な名品のようです。

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 スタンウェル社製のピアノ。相当な名品だったようですが、現在は使用できないらしく、修理のための募金を募っていました。

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 照明も当時の白熱電球のままで、館内は薄暗く、重厚な雰囲気です。

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 池の向こうには水屋があり、休憩や読書にいい場所でしたが、老朽化が進み現在は改修のため閉鎖されています。

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 奥入瀬とはいきませんが、自分の家の庭にこんな渓流をつくっています。

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 大田黒元雄はここに1933年転居して来たといわれます。庭にある樹齢何年かわからない何本もの大木は、もともとこの地にあったものなのか、それとも移植したものかわかりません。

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 ロッキード事件の頃、田中角栄邸の池に一尾何百万もする錦鯉が大量に泳いでいたことが話題になりました。金持ちというものは池に鯉を放すのがステイタスだと思っているのでしょうか。
 しかしこの鯉は大田黒氏のものではなく、杉並区で放したのかもしれません。
 手を叩くと寄って来ました。

 それにしても、これだけの物件を遺族が相続したら、税金がすごかったでしょうねきっと。
 杉並区に寄付したのも、もしかしたらそんないきさつがあったのかも。

 ◇◇◇

 休憩所の横に茶室があり、茶会などに利用できます。(有料)
 開園時間は午前9時から午後5時まで(入園は4時30分まで)
 入場無料、ただし「子供だけの入場はできません」だそうです。

 杉並区荻窪3-33-12
 (JR・地下鉄荻窪駅南口から徒歩約10分)
 管理事務所電話 03-3398-5814

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「9条フェスタ」のお知らせ+あんた、それでも教育委員か!

2008年10月13日 | おしらせ



日時:10月18日(土)10:15 ~ 18:15 (開場10:00)
場所:きゅりあん(品川区立総合区民会館)
参加費:1日フリーチケット
    前売券 大人 500円   小・中学生 100円
    当日券 大人 700円   小・中学生 100円

内容:
・映画「蟹工船」上映 10:20~12:20
 解説:楜沢 健(早稲田大学講師)
・日本軍「慰安婦」問題の立法を通じた解決のためのシンポジウム
・シンポジウム「米軍基地と住民自治」
    など、内容盛りだくさん。

◆申し込み方法など詳細は、上の画像をクリックしてホームページをご覧下さい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

信じられない! 

 これが教育委員の発言だとは


 「平和への志向は避けたい」宮坂公夫委員
 「従軍慰安婦なんていなかった」大蔵雄之助委員

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Kyoikuiin2

 *画像クリックで拡大できます。

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堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』

2008年10月12日 | 本と雑誌
Mika_tsutsumi

 奥付を見ると、初版発行日はぼくの誕生日と同じでした。
 だからなんだ、と言われそうですが、9カ月も購入したままほっておいた、ということになります。
 目次を見て、特別新しい情報があるとは思えなかったので、優先順位を下げてしまったのが原因です。
 先日、友人たちと居酒屋で飲んでいた時にこの本の話が出て、(こういう本を読むような連中が集まったというわけでもないので、意外でしたが)これはけっこうおもしろいのかもしれないと、急遽読んでみました。

 たしかに、内容的には目を見張るような新しい情報はありませんでしたが、非常に良く構成されているのと、とても理解しやすい。
 どちらかというと、この手の本は、いささか脳みその力を込めないと読み切れないものが多いのですが(眠くなるし)、これはサクサク読めます。
 高校生レベルであれば十分読みこなせる平易さです。

格差に支えられる国
 この本に書かれている「アメリカ」はまぎれもなく日本の「未来」です。
 そのことははっきりと言っておきたい。

 まずこの本では「貧困の作り方」が述べられています。
 社会保障、医療などなど、自由競争で市場を活性化させるという名目で「民営化」し、それは生活費の高騰を招き、人びとの生活を圧迫しました。
 さまざまな政策で格差を作り、そこから逃れようとする人びとを国家レベルで追い討ちをかけます。
 自民・公明政府がやっていることとそっくりです。

 レーガン政権以降の新自由主義・市場原理主義によって格差が拡大し、1960年代70年代、日本国民が憧れ、アメリカンドリームの象徴だった「中流家庭」が下層に転落し、そこから這い上がれないでいます。

 貧困層を襲ったのは、今問題になっているサブプライムローンだけではありません。さまざまな政策が、最貧困の人びとの暮しを圧迫していきます。
 さらには、ハリケーン「カテリーナ」の被害を利用してまで、富裕層に都合のいい社会をつくろうとするのです。
 被災地では電気も満足に回復しない状態の中で、国からの支援が打ち切られ、人びとの生活は最下層に突き落とされました。

 多くの公共機関が民営化され、特に国民皆保険制度のないアメリカは、高額の保険料を払って民間の保険会社に加入し、株式会社化した医療施設で受診しなければならず、保険会社も保険金をまともに払うことはまれで、一度病気になった瞬間に最下層に転落することがしばしばだとか。
 このことはマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『シッコ SiCKO』にも描かれているので、ご存知の人もたくさんいると思います。

 ホセの弟は一歳の時、医療保険がないため医者にかかれず疫病で死んだ。
 その時彼の母親は、それまで決して口にしなかったことを夫に向かって言ったという。
 「もしもこれがキューバだったら、あの子は助かったわね。
(65ページ)

貧困層に支えられるアメリカの「戦争」
 高校や大学は、極貧に喘ぐ若者の個人情報を、軍に「協力」の名目で提供しています。また、携帯電話会社も、個人情報を国防総省に提供し、リクルーターたちが経済状態の悪い若者から順にターゲットにしていきます。
 日本でもドコモが自衛隊に情報を流していたことが、国会の追求でわかっています。

 借金が膨らみ、このままでは退学しかないと考えていた若者たちは、短期間で大金が入手できる軍隊への誘いに飛びついていきます。
 命の危険があっても、今のままの生活よりはましだと思ってのことです。

 「軍と聞いた時は躊躇しました。陸軍にいる私の従兄弟がバグダッドにいるし、私はこの戦争を正しいとは思っていませんでしたから。するとリン(リクルーター)は、入隊すれば学資ローンの心配がなくなるだけじゃない、あなたは他の兵士たちとは違い、初めからすごいチャンスを手にすることになると言ったんです」(132ページ)

 リクルートされた新兵が真っ先に配属されるのはイラクです。当然死ぬことになるかもしれないということは知っていますが、現状を考えれば選択の余地はないということです。
 彼らは、愛国心とか国際貢献とかではなく、目的はただ生きたいが為に死地に向かいました。

これはアメリカだけのことではない
 個人情報の保護がしきりに叫ばれていますが、インターネットや携帯電話によって、実際、個人情報は丸裸です。
 そして、この世界的大恐慌によって、中間層の多くが下層に落ち、格差はますます拡大しています。
 今の日本に「軍隊」はありませんが、世界第三位の軍事力を持つ「自衛隊」があります。
 そして自衛隊員の自殺は、一般国民の6倍と言われています。
 憲法九条をもつ日本は戦争をしないはずだった。ところが銃弾の飛び交うイラクに派遣された。
 「こんなはずではなかった」
 多くの自衛隊員が感じていることです。

 そして今、かつては跡を継ぐことのできない農家の次男坊三男坊が自衛隊に入隊したように、ネットカフェや個室ビデオ店に寝泊まりする若者たちを、自衛隊がリクルートの対象にしているという話も出始めています。

 堤未果さんのこの本は、アメリカだけのことではなく、新自由主義の世界全体に当てはまることなのです。
 今の日本人の多くが、「自分には関係のないこと」「自分は大丈夫、そんなひどい事にならない」「政治の話はしないで、わからないし興味ないから」そう考えています。
 知らないでいることは、まさに「頭隠して尻隠さず」。今世界が、日本が、どこに向かおうとしているのかしっかりと目を見開いてみていかないと、「危険が頭の上を過ぎていく」ようなことはあり得ませんから。

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惜別 板谷彩雲居さん

2008年10月09日 | 日記・エッセイ・コラム
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 父の友人、板谷彩雲居さんが亡くなりました。老衰で101歳の大往生です。
 昨日、奥方からわが家に電話があったらしいのですが、那由が受けてそのまま忘れ、今朝聞いてあわてて告別式に出かけました。

 彩雲居は号。画家で俳人です。
 「冬園(とうえん)」という会と同じ名前の同人誌を発行していて、父も会員でした。
 俳句の会で旅行に行く時など、ぼくは父親についていったものです。

Saiunkyo3

 父の書いた文章が掲載された号でダブっていたものを何冊かいただいて来ました。

Saiunkyo2

 別室に屏風絵や色紙、著書などが展示され、それらの作品を囲んで参列した人びとと思い出を語り合いました。

 板谷彩雲居さんは、赤紙を受け取ったものの戦地に行く前に終戦を迎え、命拾いしています。そんないきさつから、本物の赤紙を見せてもらったことがありました。
 「あの時の赤紙はまだ持っておられますか?」といつぞやうかがったところ、紛失したとのことでした。

 戦後は日本共産党に入り、ぼくの父が日ソ関係の悪化とともに共産党と袂を分かったときも共産党を離れることはなく、日共・反日共の関係になりながら、父との友情は変わることはありませんでした。

 父の死後しばらくは年賀状だけのお付き合いになってしまいましたが、一昨年ふと思い立って『全国お郷ことば・憲法九条』を持ってうかがったのが最期になってしまいました。

 晩年は耳が遠く、奥方の通訳なしでは会話ができませんでしたが、それでもお会いした時には大変楽しそうでした。

 はがきの余白までびっしりと毛筆の達筆で書かれた年賀状が、もういただけないと思うと寂しいかぎりです。

 どうぞ安らかに。

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