ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

『美味しんぼ』No.111

2015年04月04日 | アニメ・コミック・ゲーム

 
 昨年12月に発行されていたのに気づかず、つい先頃遅ればせながら購入した。
 この巻とその前の110巻は「福島の真実」全・後編で、ご存知の通り賛否両論の嵐を巻き起こした。
 批難する側の多くは「あれは真実ではない」「内容が偏っている」「福島の復興を妨げる」などというもので、支持する側は「政府や東電が隠している真実を暴いたものだ」「福島の現状が正しく伝えられている」と言う。
 要は、原発事故をできるだけ小さく見せたい政府・東電の意見に寄りそうか、住民、特に子どもたちの健康被害についての正確な情報を望んでいるかの違いである。
 
 結論から先に言えば、『美味しんぼ』で描かれたことはすべて真実であると言い切れる。取材対象により、その表現方法はさまざまだとは思うが、取材した内容をそのまま掲載したという意味で真実である。
 ただし、その表現方法について、原発被害に遭ったすべての人の感情に十分慮っているかと言えば、言葉足らずな個所が含まれていることは否めない。『ビッグコミック・スピリッツ』連載時には、その配慮が不足していたので批判を受けたのだ。
 単行本にする際、台詞を加筆訂正したり注釈を多く加えるなどの処理がなされ(そのために発行が大幅に送れたのだろう)、一定レベル以上の納得がいく内容になっている。
 
 たとえば、批判の対象になった一つ、福島で取材を続ける「山岡」が鼻血をだすシーンがある。多方面から、「福島にそんな人はいない」「放射能とは無関係な鼻血を被曝のせいにしている」と否定的な意見が多数寄せられたと聞く。
 ここで重要なことは、「鼻血と被曝の関連性が証明できていない」ことが、安全を保障するものではない、ということだ。政府などによる安全基準の考え方はこれに限らない。先日もインフルエンザ治療薬の「タミフル」について、「異常行動とタミフルの因果関係が証明できないから規制はできない」という発表があった。つまり、危険が証明されなければ安全ということになってしまうのだ。低線量被曝については現状ではほとんどわかっていない。わかっていないから安全ということではないはずだ。
 子どもを持つ親はそれでは納得できない。「放射線量が国の安全基準を下回りましたから、安心して帰っていらっしゃい」と言われても、これまでウソ八百で国民をだまし通してきた東電や政府の言うことを「ハイそうですか」と鵜呑みにして、真実の状況がよくわからない被災地にのこのこと帰ってくる人はバカか開き直りだ。
 双葉町の井戸川前町長が「私は前町長として双葉町の町民に福島県の外に出ろと言ってるんです」と語る場面があるが、これは至極真っ当な意見だと思う。しかし正しい意見を述べた前町長は更迭されてしまった。「自分の考えを言うと町長を辞めさせられるこの日本という国は……」と嘆く山岡の言葉は、まさに東京大空襲の焼夷弾で燃え盛る住宅を「逃げるな消せ」と命令して犠牲者を拡大させた戦時中の大日本帝国の考え方と酷似していることをあらわしている。
 
 復興とは、ただ無闇にその場所に人を戻すことではない。安全宣言をすればいいというものでもない。これまで通り人々が、心から安心して暮らせるようになることだ。そのためには、これから何十年何百年という長い歳月が必要なはずである。
 原発事故とはそういうものであることを、すべての国民が認識する必要がある。
 政府や東電は、莫大な保証金が派生することを怖れ、性急な「危険区域解除」を行っている。これは、福島県民を思ってのことではない。一日でも早く「なかったこと」にして原発を再稼働させたいからに他ならない。『美味しんぼ』はそうした金と権力の横暴を暴いたからこそ、「命より金が大事」な人々から攻撃を受けたのであろう。
 
 一つ付け加えておきたい。『美味しんぼ』は福島県の全域が危険と言っているわけではない。地域によっては震災前と変わらない安全な場所もあり、逆に安全とされていても、条件によっては注意を要するところもある。また、安全な作物を届けるために努力をしている生産者も少なくないことも紹介している。
 つまり、福島県産だからとひとくくりに危険扱いすることの誤りも伝えている。裏を返せば、他の都道府県の生産物でも被曝している可能性はあるのだ。雲や霧や風にとって、県境も国境も意味ないのだから。
 
 話は違うが、しばらく読んでいなかったら、山岡と栗田さんは結婚していて子どもまでいる。山岡と海原雄山の父子は和解している。油断していたらずいぶん状況が変わっていた。

「安全」な瓦礫の真実

2012年04月18日 | アニメ・コミック・ゲーム
Garekis1
 
「『安全な瓦礫』とは『安全にさせられた瓦礫』を指す」
 「ガレキ受け入れが東北復興の為になるって思っていませんか?」と題するコミックがネット配信されている。
 東日本大震災の被災地に残されたが暦が処理されず、復興のさまたげになっているということから、全国の自治体に処理の協力要請があって、東京都を含む多くの自治体が引き受けた。
 しかし中には、最終処理場がないことや残留放射能を危惧して受け入れを断った自治体もある。受け入れに際しては「人道的見地云々……」がまことしやかに語られ、断った自治体はまるで「非人道的」といわんばかりだ。
 このコミックは、受け入れ処理を決めた沖縄県の不合理について書かれたものだ。
 「東北の瓦礫を沖縄に?」とだれでも不思議に思う。当然だ。なぜ、そんな遠くまでもっていく必要があるのか。じつはこの瓦礫の量、淡路阪神大震災のときと大して変わらないという。そして、このときの瓦礫はすべて兵庫県内で処理されている。
 沖縄県が瓦礫を引き受けたウラには、やはりトリックがあった。東北復興財源1.6兆円! これが目的だったのだ。この1.6兆円を狙って全国の自治体がハイエナのように群がっている。
 
 瓦礫の汚染は放射能だけではない。東北にあった多数の工場が今回の震災で被害に遭い、アスベスト、六価クロム、ヒ素、PCBなどが大量に含まれている可能性がある。しかしそれは計測されないまま「安全」ということにされている。
 政府が進めるガレキ処理の秘密が、たいへんわかりやすく説明されている。
 じつはこのコミック、先日送られてきた『けーし風』の74号で紹介されていたものである。
 
 石原東京都知事がワシントンで、「尖閣諸島」を東京都で買うなどというばかな発言をしたが、この号の『けーし風』は、奇しくも八重山への自衛隊派遣反対と尖閣諸島」についてだった。このことについては、あらためて紹介したい。
 
 コミックは以下のサイトからダウンロードできる。
http://deigoinsatu.toypark.in/gareki/garekis.pdf

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チョロQ「ガンダム」「鉄人28号」

2009年11月28日 | アニメ・コミック・ゲーム
 ガンダム世代というのがあるそうだ。
 70年代の終わりにテレビ放映されたアニメ「機動戦士ガンダム」のファンが、大人になってもさまざまなガンダムグッズを収集したり、映像を集めたりしているそうだ。
 何となく見ていたテレビ番組で、ガンダム芸人なるものが登場して、ガンダムのフィギュアを囲んでトークを展開していた。
 ばかばかしいが、面白い。
 
 そういえば、わが家にもあったはずだ、と思い出した。
 「押し入れにあるはずだよ」というカミさんの言に従って、それらしきところを探すと、すぐに見つかった。
 軽い段ボール箱があって、何で空の段ボールが押し入れにあるんだ! と降ろすと、何か入っている。
 大きな段ボールの底に、白いポリ袋が一つ。
 
 これだ! 1.2.3.!
 有意義でかつ無駄なスペース。これこそわが家だ。
 
Gundam1
 
 何年か前に、UFOキャッチャーで釣り上げた、ガンダムチョロQ2セットのうちの一つだ。
 もう一セットは、友達家族にプレゼントした。
 
Gundam2
 
 バスター、ストライク、デュエルの3種類。
 これ、市販されていないのではないかと思う。
 UFOキャッチャー専用商品というのがあって、それはけっこうな貴重品なのだそうだ。
 エヴァンゲリオンのフィギュアもいくつかゲットしたことがあって、それはフリーマーケットで500円で売ってしまった。
 あとで聞いたら、まんだらけで数千円で出ていたという。
 
28go1
 
 この「鉄人28号」もチョロQだ。
 これは、荻窪のおもちゃ屋の店頭に出ていたもので、通りすがりに目について衝動買いした。
 オリジナルバージョンとモノクロバージョンの2種類出ていて、モノクロは地味すぎるとオリジナルを買ったが、いま思えば両方買っておけば良かった。
 そんな高いものではなかったのに……。
 
 鉄人28号が雑誌に連載されたのは、1956年。ガンダムよりはるかに古い。
 雑誌連載時の最初に登場したのは27号で、28号の登場までしばし間があった気がする。
 最初、てっきり28号だと思っていたのが実は試作品だと知りがっかりした覚えがある。なぜなら、27号のほうがカッコ良く見えたからだ。
 
28go2
 
 このフィギュアには、正太郎と署長のフィギュアがついているが、べつになくてもいいと思う。
 
28go3
 
 下半身を後ろにまわすと、飛んでいる格好になって走る。
 
Choroq
 
 こんなものもある。
 右のチョロQは、杉並区内の露地を走る「すぎまるバス」で、何年か前の「知る区ロード」の景品でもらった。
 残念なことに、毎年夏にやっていた「知る区ロード」は、20回を最後に行われていない。
 
 しかし何で、こんなものがあるのか。
 特に趣味があるわけではない。
 なんとなく、書棚の隙間や窓の縁に置いてあるのだ。
 
 「何の意味もねえ!」bay小島よしお。
 
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ウルトラマンのサイン

2008年08月30日 | アニメ・コミック・ゲーム
Bioman

 そういえば(って、どういえばだ)、こんなものを持っていたことを思い出しました。
 子どもたちに大人気の戦隊ものの色紙です。
 昔、イベント企画の仕事をしていた時のなごりで残ってました。
 なにを後生大事に、と思われるでしょうが、今となれば希少価値ですね。
 「超電子バイオマン」なんて、知ってますか。超電子とバイオって、どんな関連性があるんだろ。
 しっかし、脚、短っ!ブルーもそうだけど、特に左端のピンク。

Shaidar

 いたいた、「宇宙刑事シャイダー」って。子どもたちは一生懸命見てたんだろうなあ。
 しかし、刑事が内気(シャイ)でどうすんだ。

Andro

 「アンドロ超戦士」っていうのは覚えがありません。
 これはどうも、ウルトラマンシリーズのどれからしくて、うらに次のような一覧があっりました。

Sine1

 ウルトラマン一族の中に二人のアンドロ戦士が入っています。
 それぞれのサインが紹介されています。子どもたちはこれらの色紙を買って、ウルトラマンにサインしてもらってました。着ぐるみの中に入る人はさまざまなので、おんなじように書くために練習するんでしょうね。
 ちなみにぼくは、サインをもらったことはありません。
 もらっておけば良かったかな。

 ちなみに、この着ぐるみはウレタン製で、中はサウナ状態になります。夏場などは15分着ているのが限度。
 これを着て、大立ち回りを繰り広げなければなりません。
 汗が背中のファスナーからしみ出して滴り落ちます。

 「あ、ウルトラマンがおしっこしてる!」

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ライアー・ゲーム

2007年06月08日 | アニメ・コミック・ゲーム
Liargame_1

 大人気のようです。原作はコミックですが、たまたまテレビドラマで見たのが最初です。
 第一印象は、カネの奪い合いなんてイヤな話だなあと感じて、いい加減に見ていました。
 しかし、何回か見ているうちに、これは内容がただ事ではないと思い始めました。そこで、原作を読んでみようとアマゾンにアクセスしましたが、2巻と4巻が品切れ。版元の集英社にアクセスすると、全巻品切れ状態で、書店在庫に期待しろと。
 紀伊国屋も品切れ。ビーケーワンに1~3巻があったのでとりあえずそれを購入。吉祥寺に出かけているかみさんに電話して、4巻があったら買ってきてほしいと頼んでようやく既刊分をすべて入手できました。
 まだ刊行中なので、早急に増刷されるでしょうけれど、それまで待ちたくありませんでした。

 LIAR GAME、その名の通り嘘つきゲームです。それは終わりのないカネの奪い合いです。
 最初、資金としてディーラーから1億円が貸し付けられます。すなわちこれが、資本金。
 参加者全員に平等に貸し付けられた資金は、誰かがもうければ誰かが損をすることになります。

 ゲームが終わったとき、貸し付けられた1億円より多くを手にしていれば、その差額は自分の利益になり、少なければどんなことをしてでも返済しなければなりません。

 参加者のすべてが自分のことばかりを考え、相手をだましにかかります。暴力行為以外ならどんな手を使ってもオーケー。
 しかもこのゲーム、第一ラウンドが終われば次のゲームが待っていて、途中でドロップアウトするためにはディーラーに5000万円を払わなければなりません。
 ゲームが始まってからの棄権は1億円の罰金が科せられます。さらに、貸し付けられた1億円も返済しなければなりませんから、儲けなければやめることすら出来ません
 そうして参加者は、次々にリスクの高いゲームへと、泥沼のようにはまっていきます。

 主役のカンザキナオは馬鹿がつく正直な女の子ですが、とあることからこのゲームに引きずり込まれてしまいます。
 自分の力では、こんなゲームを勝ち抜くことなど不可能です。そこで、相談した弁護士によって、秋山という天才詐欺師の存在を知り、彼の力を借りることになりました。

 ストーリーは省略しますが、このゲームはまさに資本主義社会のひな形。人々の心は荒み、ただひたすら自分だけのためにカネを集めたがります。
 他人のカネをだまし取り、仲間を蹴落とし、他の誰よりも多くを手にするために、血まなこになります。

 僕は以前『ひまわりの種は誰が食べた?』という本の中で

 「すべての者が他の誰よりも多くを手にするなんてことは不可能である。簡単な算数だ」

 と書きましたが、誰かから誰かが奪い取れば、当然そこに貧富の差が生まれます。
 平等だった立場が、持てるものと失われたものに分かれるのです。

 カンザキナオはあるときその不合理に気づきます。
 秋山の協力で得た莫大な利益を、カネを失った参加者たちに返したのです。
 「こうすれば、みんなが助かるわ」
 助けられた人々は涙ながらにありがたがります。しかし、彼女の本当の心は、誰も理解しようとしません。

 資源の再配分は、多くの人々を幸せにします。しかし、他よりも多くを手にすることがシステムとして構築されている資本主義社会は、決してそれを許しません。
 少数の人間がそれを始めようとしても。必ずつぶされます。

 いみじくも数年前、プロ野球のチーム格差是正のために、当時の選手会会長古田敦也が「プロ野球を全体として一つの企業と考え、利益を配分してはどうか」という提案をしました。
 それに対して、読売ジャイアンツの当時のオーナー渡邊恒雄がこう言いました。
 「そういう考えは共産主義だ。日本は自由主義(資本主義)の国なんだから、そんなことはあってはならない」
 さらにこうも言いました。
 「たかが選手の分際で」

 ライアー・ゲームはまさに日本やアメリカの縮図です。ダグラス・ラミスの言ではありませんが、「人々を幸せにしないシステム」なのです。
 しかし、そのことに、気づいている人が、この日本にはあまりにも少ないような……。

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