ひまわり博士のウンチク

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「アジア記者クラブ定例会」柳澤協二氏

2014年07月29日 | 国際・政治
Yanagisawa

 去る7月24日、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏をゲストに迎え,安倍政権が強引に押し進めようとしている集団的自衛権について、政府内、また政権与党である自民党内では、正直どう考えられているのかについて伺った。

 安倍晋三首相の論理は非現実的であり矛盾に満ちている。

「日本人を乗せたアメリカの艦船を、今の日本は守ることができない。これでいいのか」
国会答弁などでよく聞かれるこの例はまったく欺瞞である。
危険な場合に非戦闘員を艦船で移動させることはないし、そもそも日本人を非難させることは米軍の任務にないのだ。
 豊下楢彦・古関彰一共著の『集団的自衛権と安全保障』(岩波新書)によれば、
「こうした事例は、現実にはまったく起こり得ない。なぜなら、在韓米軍が毎年訓練を行っている「非戦闘員非難救出作戦」で非難させるべき対象となっているのは、在韓米国市民14万人、「友好国」の市民8万人の計22万人(2012年段階)であり、この「友好国」とは英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというアングロサクソン系諸国なのである。さらに非難作戦は具体的には,航空機によって実施される」
ということである。

「機雷を除去しなければ,タンカーの運航ができず,経済が破綻する」
 これについて柳澤氏は「機雷のあるなしに関わらず、タンカーが戦場に行くことはないと語る。そして、これまでに何度も石油が止まったことがあるが、経済が破綻したことなどなかったと、これも安倍総理が国民をだます欺瞞であると言う。
 
 安倍総理が、この集団的自衛権にしろ秘密保護法にしろ、なぜこれほど強引にすすめるのか、その理由は本人の信念のみだそうだ。
「やりたいから、それだけです」
 いみじくも、前掲書には、安倍首相の「最大の眼目は、青年が誇りを持って「血を流す」ことができるような国家体制をつくりあげていくところにある」と結論付けられている。
 
 柳澤氏は、「ここには大手マスコミがいないから」と前置きして、(実際にはNHKのプロデューサーがいたのだが)こんなことをいった。
 「娘が心療医学をやっておりまして、彼女がプロファイリングしたところ、安倍総理は自己愛型精神障害だというのです。とにかく自分が可愛い。だから自分を持ち上げてくれる周囲の限られた人の話しか聞かないのですよ。ところで、娘は返す刀で『お父さんにもそういうところがある』と言っておりました」
 
 柳澤協二氏の応援の詳細は、『アジア記者クラブ通信』の9月号に掲載される。
 
■お薦めしたい2冊
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半田滋『日本は戦争をするのか』──集団的自衛権と自衛隊
 自衛隊員の中には、というよりは、たぶんほとんどは、「日本は憲法9条があって戦争をすることはないから自分が戦死などするはずはない」と思って入隊したと思う。自衛隊の主な仕事は震災復興だと考えている隊員が少なくない。そこにきて、前回のイラク後方支援以来雲行きが怪しくなった。
 自衛隊は毎年、一個中隊(36名)ほどが自殺しているそうだ(柳澤氏)。もし集団的自衛権によって海外派兵が頻繁に行われれば、その人数は倍増するという。
「集団的自衛権に反対する有力な味方は自衛隊に違いありません』(柳澤氏)
 集団的自衛権とは自衛隊にとって果たしてなんなのか、どう受け止められているのか、どう変わっていくのか、防衛を取材し続けてきた著者渾身の一冊。
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豊下楢彦・古関彰一『集団的自衛権と安全保障』
 日本で自衛隊と呼ばれていても、国際法上は軍隊として戦争をすることになる。日本が集団的自衛権を行使するということは、敵国に対して宣戦布告するのと同じである。ところが、「戦争」になった場合、法的に深刻な問題が生じる。なぜなら、日本には憲法はもちろん、いかなる法令においても、それこそ「宣戦布告」を行う開戦規定も交戦規定も欠落している。さらに重要なのは、日本には軍法会議が存在しない。
 安倍首相の“架空のシナリオ”と国民を欺くトリックを暴く一冊。
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アジア記者クラブ通信 263

2014年07月15日 | ニュース
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 本号では、5月定例会(2014年5月24日)の記録を10ページに拡大して掲載している。先日「東京新聞」で報じられたように、地方紙のほとんどは集団的自衛権の閣議決定に批判的な立場である。ところが、中央の大手新聞の論調が、朝日・毎日対読売・産経と二分化されており、そのためにあたかも世論そのものも二分化されていると誤解されがちだ。
 地方を旅行すればわかることだが、地元で読まれているのはもっぱら地方紙である。とくに沖縄におけるタイムス・琉新の
2紙は有力で、中央の大新聞を購読している人はきわめて少ない。大手新聞と歩調を合わせない2紙は保守派の団体からヘイトスピーチのような攻撃を受けているのだ。
 琉新の島洋子さんとタイムスの宮城栄作さんは東京に赴任して、沖縄と本土の温度差に直面しつつ、われわれが守らなければならないものは何かを論じる。
 
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◆「『小さな蛇』を産むパレスチナ人の母親を殺せ」
 女性国会議員の呼びかけに沸き立つイスラエル社会


 本号はとくにユニークな記事が充実しているが、注目したいのは、イスラエルの女性国会議員によるパレスチナ人虐殺の呼びかけである。
 先日、イスラエルによる大規模なガザ空爆があり、老人や女性、子どもを含む多くの犠牲者が出た。日本のイスラエル大使館前には、これまでにない多くの人々が抗議に押し寄せた。
 イスラエルの国会議員アイエレト・シャケドはフェイスブックを通じて虐殺宣言ともいえる記事を公開した。
「パレスチナ人全員が敵だと判断するのにあれほど尻込みするのはなぜなのか? あらゆる戦争は2つの民族の間の戦いなのだ。すべての戦いで、戦争を仕掛けて来た民族、その全員が敵なのだ。……老人、女性、町々、村々、その資産とインフラを含む全住民が敵なのである」
 彼女はまるで、戦争を先に仕掛けたのはパレスチナ人だと決めてかかっている。「歴史はどこで切るかで見え方が違う」とは重信メイの言葉だが、イスラエル建国の歴史をひもとけば、そこにはシオニズムを旗印にパレスチナ人の聖地を侵略して強引に土地を略奪した歴史がある。シオンの丘があるイェルサレムはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地である。だから、イスラエルとパレスチナの紛争をあたかも「宗教戦争」であるかのようにとらえる人が多いが、実情は侵略者と被侵略者の戦いであることを忘れてはならない。
 日本では、イスラエルロビーを支援するアメリカに肩を持ち、パレスチナを悪とする論調が目立つが、ロケット砲1発がイスラエルに着弾しただけで数千発の空爆で報復されるこの戦争をどう見るか。本当にイスラエルが正義でパレスチナが悪なのか、報道はそのところを正確に伝える義務があると思う。

◆7月定例会は元内閣官房副長官の柳澤協二氏
「集団的自衛権と安保政策を徹底検証する」

 7月24日(木)18時45分~21時
 明治大学グローバルフロント3階(4031教室)
 
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重信房子 讃

2014年07月06日 | 映画
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 テアトル新宿で、7月5日土曜日から公開のシェーン・オサリバン監督作品『革命の子どもたち』を観た。
 この映画は1968年、世界的に巻き起こった学生による革命運動のうねりの中で、女性革命家として名を馳せた重信房子とウルリケ・マインホフのエピソードをそれぞれの娘たちが自身の体験をまじえながら語る。
 
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 重信房子は1971年、パレスチナで日本赤軍を結成する。このとき彼女はすでに学生運動によって逮捕歴があり、パスポートが取得できない。そのために、逮捕歴のない同志奥平剛士と偽装結婚をすることで奥平房子となって出国する。パレスチナではパレスチナ人民解放戦線(PFLP)と連携し、ハイジャックや外国公館を襲撃するなど、民間人も巻き込んだ多数の事件を繰り返した。
 国際指名手配されながらも活動を続けていたが、日本に不法入国して大阪市内のマンションに潜伏していたところを逮捕される。懲役20年が確定し、現在八王子医療刑務所に服役してガンの治療中。現在68歳。
 
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 重信房子とパレスチナ人活動家とのあいだに生まれた重信メイは、現在41歳でベイルート在住。素性が知れると自身も暗殺のターゲットになることから、16歳まで父親がだれかを知らされず、28年間無国籍ですごした。
 「私は28歳まで存在しないことになっていました」
 ベイルート・アメリカン大学卒業後、大学院に進学、2001年に日本国籍を取得した。同志社大学で博士号を取得した後、塾の講師やニュースキャスターとしてテレビにも出演する。著書は多数あり女優として映画にも出演している。
 「日本ではパレスチナがイスラエルを攻撃して、その報復でイスラエルからパレスチナが爆撃されるように報道される。しかし事実にはその前がある。戦闘はたいていイスラエルがパレスチナを攻撃するところから始まるのだ。歴史は、どこで区切るか、どこから見て行くかでまったく違ってくる」
 
 重信メイは母親譲りの美形で、その上聡明である。重信房子の娘という経歴がなければ人気キャスターになっていたに違いない。ただし、日本語はあまり上手ではない。
 
 ドイツの女性革命家ウルリケ・マインホフの娘であるベティーナ・ロールはいう。
 「テルアビブ事件でイスラエル政府は、国連の検証を拒んだ。報道ではパレスチナ側のテロリストによる銃の乱射で多数の民間人が犠牲になったというが、事実は銃の乱射がだれによってなされたものなのか不明だ。イスラエルは、国連に知られたくない何かを隠している」
 
 淡々としたなかで、40年以上前の熱さが伝わってくる映画だ。今の学生に聞くと、「今は就職難だから、学生運動なんかやって不利になったら困るから」という。しかし、当時も就職は大変だったし、学生運動をやっている学生よりも自衛隊出身者のほうが就職に有利だったりもした。しかし、学生運動をやっている学生たちは、世の中の変化を自分自身に直接関わることととらえていた。なぜなら、世界の中に自分も含まれるからだ。今の学生は自分のことしか考えない。頭の上にミサイルが落ちて来てから大騒ぎしても遅いのだが。
 
 ほかに、元若松プロの足立正生さんや、9条改憲阻止の会の塩見孝也さんも出演している。


「集団的自衛権」閣議決定

2014年07月01日 | ニュース
「自分には関係ない」と思っている人たちへ

 今日、7月1日「集団的自衛権」の行使が公明党の合意を得て閣議決定された。
 新聞各紙はその関連記事で大半が埋まっているが、他のマスコミはどうかといえば、民放のワイドショーなどでは遠野なぎこの離婚のほうに多くの時間が費やされている有様だ。いったいなんなんだ!
 昨日の夕方、フジテレビが独自にとったアンケートでは、国民の60パーセント以上が集団的自衛権容認だという。どんなアンケートのとり方をしたのか!
 
 周囲の人間に集団的自衛権の話を振っても乗ってくるのは一部で、多くの市民は興味もなければ理解すらできないというのが実態である。これは明らかに、報道の責任といわなければならない。
「集団的自衛権て、友だちが危ない目にあわされたときに手を差し伸べるってことでしょう、これって、人として当然のことじゃないの?」
 それは立前であって、実際はそのような人道的な見地から行われるものではないことが、まったく知られていない。仮に百歩譲ってそうであったとして、その「友だち」がだれなのかを考えたとき、日本が「手を差し伸べて」役に立つのかどうか。また、その「友だち」を助けたために、無用な被害を被るのはいったい誰なのか。
 さらに、集団的自衛権を行使する主体は自衛隊であって、自衛隊員そのものへの影響はどうなのか。そして自衛隊のあり方が変わることで、国民生活はどう変わるのかを考えなければならない。

 ●明らかな憲法違反
集団的自衛権とは同盟国が他国からの攻撃を受けたときに、ともに武器を使って戦うということである。ちなみに、専守防衛とは、自分の国が攻撃されたときのみ、反撃できるというもので、憲法で定められた「国際紛争を解決する手段」としての戦争は永遠に放棄する、「そのための兵力は」保持しないという規定を、ぎりぎりの「解釈」によって容認しているものである。
 したがって、自分の国が攻撃されてもいないのに武力を行使するということは、明らかな憲法違反である。
 つまり、本来なら憲法そのものを変更しなければならないのだが、それには国民の反対意見が強く実現するためのハードルが高い。だから、「友だちを守るのも防衛」などと都合良く「解釈」したのである。
 ちなみに、アジア太平洋戦争が終わってから以降、日本は1人の戦死者も出していない。ベトナム戦争も湾岸戦争も、いっさいアメリカの誘いに乗ることはなかった。つまり、70年近くも日本が戦争をしていないということは、憲法で戦争を禁じているからに他ならない。
 
 ●助ける「友だち」とは「アメリカ合衆国」
 アメリカは6820億ドル(2012年)で世界の軍事費の60パーセントを占めるダントツの軍事大国である。憲法で兵力を持たないことになっているはずの日本は第5位で、4位の英国とほぼ同額の600億ドル(同)だが、アメリカの10分の1にも満たない。しかもアメリカは、地球上に存在する核兵器の大半を所持しているともいわれている。
 つまり、「ドラえもん」でいえばジャイアンがよその学校の不良にからまれたからと、のび太が助太刀するようなもの、いやそれ以上の差がある。かえって足手まといだ。
 だから、兵力的に日本は、アメリカにとっては何の役にも立たない。
 
 ●海外侵略ふたたび
 なのになぜ、アメリカは日本を戦争に引き込みたいのか、またなぜ、安倍政権を中心とする日本の政財界は、集団的自衛権を推進しようとするのか。
 安倍政権は、その強大なアメリカの軍事力を背景に、中国や韓国などの周辺諸国に対し、優位に立ちたいと考えている。尖閣諸島や竹島問題は、あくまでもシンボルにすぎず、狙っているのは中国や韓国を経済的植民地にすることである。日本は、長い不況で財界は国内市場だけでは発展できない現状にある。地球上の人口の大多数を要するアジア諸国を手中に収めることで、広大な市場を獲得し、日本の大企業を発展させようという目論見だ。ただしその場合、中小企業は人件費の安いアジア諸国に仕事を奪われ、発展どころか倒産に追いやられることになる。そうなると、ほとんどが中小企業によって守られてきた日本の技術は失われることになる。
 1930年代の日本は、やはり深刻な不況に陥り、中国東北部(満州)や朝鮮半島を侵略し、やがて無謀な太平洋戦争に向かっていった。まったく同じとはいえないが、状況は80年前と酷似していることを認識しなければならない。
 
 ●日本が攻撃される理由になる
 集団的自衛権を行使するということは、日本がなんと言おうと、外国から見れば軍事行動以外の何ものでもない。アメリカ国と戦争しているB国の手助けを日本がすれば、B国は攻撃されたととらえ、日本の自衛隊基地や基地が集中する沖縄が攻撃されることは十分考えられる。
 ミサイルによって日本の首都東京が攻撃される場合も皆無ではないのだ。
 
 ●徴兵制度は「飛躍した論理」か
 イラク戦争当時、自衛隊の幹部養成学校である防衛大学で、自衛隊に就職しない卒業生が増えたという。防衛大学を卒業して自衛隊に入れば、一般大学の卒業生とは明らかに異なるエリートコースが約束されているにも関わらずだ。また、一般の隊員の中でも、退職する自衛隊員の数が前年を大幅に上回ったという。
 待遇がよく、再就職にも有利といわれる自衛隊に入隊する裏付けには、日本が憲法9条で戦争をしないために、自らのいのちがおびやかされることはないからだと、退職自衛官からきいたことがある。
 それを裏付けるように、「東京新聞」の取材で若い自衛隊員の意見として「災害救助」や紛争国への「支援物資の運搬」などが入隊理由の主流を占め、実際の戦闘行為を目的に入隊する人間はあまりいなかったそうだ。
 だとすると、集団的自衛権が行使されれば戦地に派遣され、自らの命が危険にさらされる可能性が高くなることから、退職自衛官はいっそう増えるだろう。まして、親は「自衛隊を辞めてほしい」と考えるに違いない。
 そのため、よほどの待遇改善が見られなければ、隊員募集も思うようにいかなくなり、政府としては何らかの手段を講じざるを得ない。

〈徴兵制度は権力者には都合が悪い〉
 戦前の日本のように徴兵制度を実施することが手っ取り早いかもしれないが、それには国民の激しい抵抗とともに、もっと都合の悪いことがある。
 公平な徴兵制度では、政治家や政財界の大物の子息であっても入隊しなければならない。常々言っていることだが、戦争とは、「イカないやつがヤリたがる」ものだからだ。ぼっちゃん方も高見の見物でいられなくなる。そのために韓国などでは、芸能人や政財界の子息には特例が設けられていたり、なにがしかの金を払うことで徴兵が免除になる。
 つまり、金持ちケンカせず(?)のとおり、金さえあれば戦争に行かなくても済むようになっている。

〈格差社会〉
 アメリカに徴兵制はない。だれもが軍隊に入らなければならない徴兵制度は国の権力者にとって都合が悪いからだ。そこでアメリカは極端な格差社会をつくることで、貧しい家の子どもを見つけ出しては、「家族のために海兵隊に入ろう。短期間で金が稼げてオキナワにいけば女はやりたい放題だ」と軍隊に勧誘する。だから、沖縄では海兵隊による犯罪が多い。
 日本の場合もたぶん、最初に考えられるのはこれに近い方法だろう。いっそう就職難を増長し、自衛隊以外に就職できなくするという方法だ。これはすなわち、形を変えた徴兵制度に他ならない。
 
 つまり、最近の若者たちが「まさかそこまでしないだろう」と高をくくっている徴兵制度は、決して飛躍した論理でもなんでもなく、現実のものになる可能性が限りなく高い。
 
 ●情報が行き渡らないわけ
 日ごろから気になっていることだが、脱原発でも集団的自衛権でも、集会に集まる人々の年齢層が高い。50歳以上からリタイヤ組に当る年代がほとんどで、30代以下はまれにしか見られない。
 「東京新聞」の「こちら特報部」によると、脱原発デモを高円寺から全国に拡げた「素人の乱」の松本さんは次のように語る。
「『戦争反対』と叫ぶ人たちは、政党などとつながりのある団体が多い。政治に無関心な若者にとっては別世界の人種だ」
 脱原発デモは、
「当時は放射能への怖さという切迫した動機があった」
 からだそうだ。
 集団的自衛権は閣議決定されてもすぐに影響が出るわけではない。したがって積極的な関心事にはならないということだ。
 
〈ハブかれたくない、という若者心理〉
 「友だち同士の会話で政治の話は持ち出さない、サークル仲間ならサークル、バイト仲間ならバイトの話、あまり関係ない話をするのは…」
 最近の若者の傾向として、ちょっとかわった人間を仲間から排除する。いわゆる「ハブき」という行為がある。「ハブき」とは、仲間はずれにすることで一種のいじめである。ハブかれることを怖れるために、他とは異なる意見を述べたり違った行動をすることは避け、できるかぎり自分を出さないようにするのだ。
 今の大学生は、全共闘世代のように、居酒屋や喫茶店で侃々諤々と口角沫を飛ばして討論するなどということは皆無に近い。議論を交わせば、自分の知らない知識を持っていたり、異なる意見の人間から様々な意見交換ができるはずなのだが、「ハブき」を怖れるあまりその機会を失っているのだ。
 彼らは基本的に新聞を読まないし、関連書籍に目を通すこともない。情報はもっぱら、権力に都合良く編集されたテレビ番組や、在特会などに代表されるゆがんだネット情報である。
「アメリカに守ってもらわなければ、日本はたちまち北朝鮮の餌食になる」
「日本に来ている中国人や韓国・朝鮮人は子どもも含めてみんなスパイだ」
「集団的自衛権の行使は、日本を侵略しようとしている中国や朝鮮から、アメリカに守ってもらうために重要だ」
 こんなまちがった考え方を、あたかも真実であるかのようにネット上で語る人間が増えているのは、ディベートなどの討論で自らの知性を磨かなければならないはずの学生たちの多く(全部とはいわない)が、最大関心事を就職と異性に求めることに没頭し、意識的に政治から目を背けていることによる。
 
 ●おわりに
 集団的自衛権の行使は、自分と関係のない遠い世界のことではない。アメリカは日本と異なり、アジア太平洋戦争が終わってからもずっと戦争をし続けている。それは国の最大の収益である軍事産業を維持するために、世界のいずれかで兵器を消費しつづけなければならないからだ。アメリカの軍事産業はアメリカ国内はもちろんのこと、日本をはじめとした同盟国に高額な兵器を売りつけることで利益を上げている。
 たとえば、パレスチナとの長い闘いで疲弊したイスラエルに莫大な軍事援助費を送り、その金でアメリカの軍事産業から兵器を買わせている。その軍事費はアメリカ国民の税金であり、それは軍事産業を潤す利益としてアメリカに戻り、アメリカの政治家たちの政治資金として政治家たちも潤す。金持ちはますます儲かり、貧乏人はいっそう貧しさを増すという構図だ。
 湾岸戦争はアメリカの兵器の在庫整理だったといわれる。使わなければ新たに買うことはできないので、戦闘員のいない地域や攻撃の価値のない建造物に対してまで、雨あられと砲撃した。そうしておいて、軍事行動をしなかった同盟国の日本に、その費用を出せと言ってきた。日本はそれを支払い、そのあげく日本人は血を流さずに金で済ませたとまで言われた。本来、血を流す必要もなければアメリカの大企業に入る金を支払う義務もないはずなのだが。
 日本が集団的自衛権の行使を容認したということは、こうしたアメリカの不健康きわまりない構図を助長する手助けにもなるということだ。
 
 『ここがおかしい 集団的自衛権』
 もう少し詳しく知りたい人のために。
 Q&A方式になっているため、レイアウトがごちゃごちゃしていて一見読みにくい印象があるけれど、文章はわかりやすいのでおすすめ。

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