実話をもとにしたドラマだそうである。主人公・浅井栄治(唐沢寿明)のモデルは、羽咋市の高野誠鮮。石川県羽咋市神子原町(神子原地区)での奇跡的な村おこしで、スーパー公務員と呼ばれるようになった。
ご存知のように、おおかたの公務員は事なかれ主義者の代名詞のような存在だ(あえて全てとは言わない、批判を顧みずに活動している公務員を何人も知っている)。可もなく不可もなく勤め上げ、年金で老後を過ごして一生を終えるのが理想のようだ。つまり、波風が立つことを極端に恐れる。だから、市や村を私物化して自分の思うままにしようとする身勝手な市長に対しても、軋轢を避けて言われるがままに、住民のためにならないとわかっていながら従ってしまう。
ドラマだから当然誇張されているだろうけれど、主人公の浅井栄治は、そんなこ公務員たちの中にいて、「限界集落」の再生に向かってリスクを恐れずさまざまな企画にチャレンジする。
年に一度の村祭の予算がたった1万円。「どうせ人は集まらない」「誰も協力なんかしない」「祭をやりたがる住民なんて一人もいない」。そんな否定的な考えに凝り固まった役所の中にいて、住民一人一人と関わり、彼等の本音を導き出していく。
「人の役に立つのが役人です」
保身しか頭にない役人たちに聞かせたい。
「廃村を決めるのは市長じゃありません。住民ですから」
限界集落を早急に廃村にして、地域再開発を目論み、私腹を肥やそうとする市長(沢村一樹)に言い返す言葉だ。民意に耳を貸さない安部首相に聞かせたい。住民がいてこその村、国民がいてこその国家。民意が最優先されるべきなのだ。
地元特産の和紙を使った「スカイランタン」イベントは、市長やその手先とも言える課長(ムロツヨシ)の妨害にもめげず大成功をおさめる。村の繁栄を望まない市長たちとの闘いがこれからどんなドラマになっていくのか楽しみだ。
ただし、ドラマのクライマックスにもなった「スカイランタン」は、基本的には消防法で禁止されている。その撮影にはスタッフの大変な苦労があったらしい。
最後になるが、ヒロインの麻生久美子がなかなかいい。役所の退廃的かつ否定的な雰囲気に染まっているが、浅井の熱意に動かされ、やがては協力者になっていくだろう雰囲気が伝わってくる。
ドラマのTBSの、面目躍如たるドラマになっていくことを期待したい。