ひまわり博士のウンチク

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TBSドラマ「ナポレオンの村」

2015年07月20日 | テレビ番組

 
 実話をもとにしたドラマだそうである。主人公・浅井栄治(唐沢寿明)のモデルは、羽咋市の高野誠鮮。石川県羽咋市神子原町(神子原地区)での奇跡的な村おこしで、スーパー公務員と呼ばれるようになった。
 ご存知のように、おおかたの公務員は事なかれ主義者の代名詞のような存在だ(あえて全てとは言わない、批判を顧みずに活動している公務員を何人も知っている)。可もなく不可もなく勤め上げ、年金で老後を過ごして一生を終えるのが理想のようだ。つまり、波風が立つことを極端に恐れる。だから、市や村を私物化して自分の思うままにしようとする身勝手な市長に対しても、軋轢を避けて言われるがままに、住民のためにならないとわかっていながら従ってしまう。
 ドラマだから当然誇張されているだろうけれど、主人公の浅井栄治は、そんなこ公務員たちの中にいて、「限界集落」の再生に向かってリスクを恐れずさまざまな企画にチャレンジする。
 
 年に一度の村祭の予算がたった1万円。「どうせ人は集まらない」「誰も協力なんかしない」「祭をやりたがる住民なんて一人もいない」。そんな否定的な考えに凝り固まった役所の中にいて、住民一人一人と関わり、彼等の本音を導き出していく。
 
 「人の役に立つのが役人です」
 保身しか頭にない役人たちに聞かせたい。
 「廃村を決めるのは市長じゃありません。住民ですから」
 限界集落を早急に廃村にして、地域再開発を目論み、私腹を肥やそうとする市長(沢村一樹)に言い返す言葉だ。民意に耳を貸さない安部首相に聞かせたい。住民がいてこその村、国民がいてこその国家。民意が最優先されるべきなのだ。
 
 地元特産の和紙を使った「スカイランタン」イベントは、市長やその手先とも言える課長(ムロツヨシ)の妨害にもめげず大成功をおさめる。村の繁栄を望まない市長たちとの闘いがこれからどんなドラマになっていくのか楽しみだ。
 ただし、ドラマのクライマックスにもなった「スカイランタン」は、基本的には消防法で禁止されている。その撮影にはスタッフの大変な苦労があったらしい。
 最後になるが、ヒロインの麻生久美子がなかなかいい。役所の退廃的かつ否定的な雰囲気に染まっているが、浅井の熱意に動かされ、やがては協力者になっていくだろう雰囲気が伝わってくる。
 
 ドラマのTBSの、面目躍如たるドラマになっていくことを期待したい。
 

劇場版「HERO」と完全休養

2015年07月19日 | 映画
 ここ何か月も土日休んでいないので、付き合ってくれていたアシのYもとうとう音をあげた。印刷所に入稿したり出版社に校正を出したりして、ちょうど一段落したこの機会に、この連休は思い切って完全休養しようということになった。
 ところがそれでも、土日のどちらかで打ち合わせをしたい、と言ってくる著者がいたので、丁重に断った。
 暇なのではない。するべきことは山積していて、新しい企画の話もある。スケジュールが上手くこなせれば何の問題もないのだが、予定がずれるとすっぽり空く日とぎゅうぎゅうに詰まった日が交互にやってくる。連休明けからはまた、そんな状態になることが見えている。
 いかにせん、相手のいることだから、なかなかこちらの思い通りにならないのが悩ましい。
 
 仕事はしないけれど、時間ができたら……と思っていたことをやる。録画したままになっている映画やドラマをディスクに整理したり、観るべきものは観る。
 映画館で観るつもりで見逃してしまった映画は、いずれDVDで観るより仕方がないが、映画館に出かけるというのはささやかな日帰り旅行のようなイベントだ。思い立ってカミさんに「映画にでも行こうか」と声をかけた。どうせ子どもたちはそれぞれ勝手にやっている。


 
 せっかくの休みなので、面倒なことは考えずに済む娯楽映画を観たいと思った。ネットの映画案内を見たら、18日から「HERO」がかかっているではないか。こういう非現実的なメルヘンが気分転換にはもってこいだ。検察庁とか検事とか堅い題材を扱っているのに、あり得ないことが次々に起こる。
 さっそく、ピカデリーの夫婦割りチケットを入手した。簡単に入手できたので、すいているかと思ったら、映画館は満席だった。
 余談だが、こんがらがった頭をほぐすときのリセット用に最も適しているのがホラー映画かポルノ映画だということを最近発見した。とにかく映画の世界に没頭できる。さすがに自宅兼事務所でポルは観られないから、もっぱらホラー映画だ。「呪怨」とか「着信あり」とか、あるいは「ソウ」とか。
 ま、余計な話だが。
 
 「HERO」はドラマのときから観てはいたけれど、始めの頃はキムタクの臭い芝居にあまり好感が持てなかった。それがスペシャルや最初の劇場版の頃になると、まあ慣れもあるだろうけれど抵抗感が薄れた。「HERO」は主演の木村拓哉もさることながら、ヒロインの松たか子がドラマ全体のレベルをあげていることは否めない。彼女の演技力は規格外だ。一瞬の「間」、表情の「リアクション」、相手役への「仕掛け」、すべてが一級品である。
 今回の劇場版では特にその演技力が光った。そのせいで、もう一人のヒロイン北川景子の影が薄くなったのはやむを得ない、というところか。北川景子も女優としては一定以上の力を持っているけれど、松たか子と並べてしまうとすべてが小粒に見える。松に遠慮したのか、北川ファンとしてはもう少し出しゃばってもよかったのにと思った。
 
 今回は舞台が治外法権の大使館で、そこに潜入するというあり得ないことをしでかす。大使館前で起きたただの交通事故が外交問題にまで発展する「壮大な」テーマだ。
 ネウストリア公国と称するヨーロッパの小国が、アメリカ大使館に匹敵するほど大きな大使館を持っていることや、大広間で開かれる豪華なパーティ。その国の国民が巨大なソーセージを1日に7本食べるという習慣。ずいぶん昔に伊丹十三が持ってきたが、日本ではまったく流行らなかった「ペタンク」というスポーツで盛り上がること。あり得ないことの連続で突っ込みどころは満載なのだけれど、メルヘンと割り切れば多いに楽しめる。周りを支える舞台出身の達者な俳優人が主人公とふたりのヒロインを上手に支えている。
 
 ソーセージを食べにネウストリア公国に出かける、最後のワンシーンだけのためにフランスロケをやるという無駄遣いも「HERO」らしい。
 年に1、2回はこんな映画に出会いたい。リフレッシュのための娯楽映画としては最高だった。
 
 重ねて、松たか子はすごい。「小さなお家」のときもすごかったけど、あの演技力は人間業とは思えない。それだけでも観る価値がある。

「アベ政治を許さない」

2015年07月09日 | 日記
澤地久枝さんの呼びかけ。

アベ政治を許さない!!

7月18日(土)午後1時きっかり
同じポスターを全国一斉にかかげよう



(小さい画像クリックで拡大)

https://sites.google.com/site/hisaesawachi/

みんなで掲げりゃ怖くない!

念願の、白川静編『字通』落手

2015年07月05日 | 本と雑誌

 
 一般の人が漢和辞典を使う機会はあまりないかもしれない。『広辞苑』などの国語辞典に比べたら圧倒的に少ないだろう。
 しかし、出版に携わるものにとって漢和辞典は、必需品中の必需品なのである。
 先日、打ち合わせを兼ねて外出したおり、国際ブックフェアに立ち寄って2割引で購入した。

 ご存知のように、日本語の文字は漢字、平仮名、カタカナの三種類で成り立っており、文章はそれらを巧妙に使い分けることで成り立っている。
 
 平仮名とカタカナは音を表す表音文字であり、漢字は意味を表す表意文字に分類される。同じ音でも漢字で表すか仮名で表すかによって、ずいぶん印象が異なるので、最近では文章を優しく柔らかく表現したい女性を中心に、かなを多く使う人が増えているようだ。
 
 しかし、なにもかも仮名で書かれていては、かえって意味が通じにくくなる。たとえば児童書などでは対象年齢によって使える漢字が限られているので、編集にあっては多いに苦労する。
 
 そこで文章を読みやすくするために、漢字と仮名を上手に使い分けることになるのだが、漢字には「同訓異字」といって読み方は同じでも使われる漢字によって意味が異なる。
 最近のクイズ番組などであるような、「ほしょう=保障・保証・補償」だの「こうえん=公演・講演・公園」などは何ら迷うことはないけれど「おそれ=恐れ・怖れ・畏れ・虞れ」だとか「つくる=作る・造る・創る」などはわずかなニュアンスの違いで迷うことが多々ある。場合によっては文字の成り立ちから調べなければならない。もっとも、一冊の本の中で調べたくなる漢字はそう頻繁に出てくるものではないのだが。
 
 『字通』はそうした場合、文字の成り立ちや異字体を調べるのに大変便利なのだが、発行された当時の親本は2万3千円もする高価なもので、しかも巨大。早く普及版がでないものかと心待ちにしていたら、ようやく出版された。残念なことに前出の「同訓異字」の項目は普及版には含まれておらず、別冊になっているのだが、かえってそのほうが使いやすい。
 
 漢和辞典は20代の頃から講談社版の『大字典』を愛用していた。本当は大修館の『大漢和辞典』が欲しかったのだけれど、それこそ置き場に困る。数年前、『字通』と同じ著者の『字統』を購入した。解説は充実していてていねいなのだが、項目数にいささか不満を感じた。白川静氏にはもう一冊『字訓』というのがあって、これは手元にないが、『字通』はその両方の特徴を合わせ、かつ項目数も1万字近くまで増やしてある。ちなみに『大字典』の項目数は1万5千字近いので、項目数では遠く及ばない。しかし内容は圧倒的である。
 篆字や象形文字まで紹介されていて、文字の成り立ちが一目でわかる字典はこれをおいてほかにない。